一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.123 「マリアンヌ」

本作を観て実感したのは、人の顔の好悪や美醜や魅力、また本質を表すのは、やはり目だと言うことだ。

M・コティヤールの瞳に釘付け!
久々に上質な悲恋ラブ・ストーリー

今まで沢山の映画を観てきたが、俳優の演技や容姿に見とれるということは何度もあった。
それは映画を観る醍醐味のひとつだろう。
そんな中でも、俳優の目の奥に深いものを見つけることがたまにある。

それは、なんだろう? 目の演技、というよりもその人の本質的なもの、魂の輝きのようなものだろうか? 目の奥の「真実」「揺らぎ」のような稀有なものを認めることがあるのだ。
それは貴重な出会いで、陶酔の時間でもある。
若い時は分からなかったのだけど、歳を重ねて今、その目に秘められた奥のものに気づける感性ができてきたのだと思う。

本作のタイトルロールのマリアンヌを演じるマリオン・コティヤール。
彼女の瞳には釘付けだった。
その奥にあった光は滋味あふれる深いもので、ちょっと呆然としたくらいだ。

アップが多かったとか、役柄がそうだった、とかもあるんだろうけど、私は不思議なほど彼女の瞳に惹きつけられた。
それは、たぶん本作が彼女の女優としての美しさも演技力も年齢もピークということなんだろう。
この映画のマリオン・コティヤールでしか、あの瞳の美しさ、深さは出ないのだとも思う。

私はブラッド・ピットが大好きなのだが、本作はマリオンを観ているだけでよかった。
幸せだった。
彼女が凄すぎて、ブラッドは霞んでいたくらいだ。
メンテナンスはしてるのだろうけど、ちよっと太ってキレがなくなっていたブラッド。
相変わらずの大げさ演技だったし……。

 

スパイ同士ながら結ばれたふたり
どっぷり悲しみに浸るのは快感!

というわけで、本作はマリオン・コティヤールの映画だと思うんだけど、彼女の役柄もまたミステリアスなのだ。
重大なミッションのために夫婦役をすることになったふたりのスパイ。
危険な任務を成功させたふたりは高揚した気分のまま結ばれる。
女はスパイを辞めて男と結婚し、娘も生まれ男の故郷イギリスで暮らすことに。
幸せな日々が続くが、ある日男は上司からマリアンヌに向けられた疑惑を告げられる……。
マリアンヌの正体はいかに?

これ、ラブ・ストーリーなんです。
しかも、とても悲しいラストで、泣かされました。
胸が締め付けられて、どっぷり悲しみに浸れた……快感! 悲恋ものってやっぱ、イイよね。
久々の上質悲恋ラブ・ストーリー。

さて、もうひとつの見所がマリオン・コティヤールが着こなす数々の衣装。
今年のアカデミー賞の衣装デザイン賞にもノミネートされてたけど、クラシカルな絹のロングドレスや白いブラウスにチェックのスカートなど、マリオンの長身、長い足、グラマーな胸をより魅力的に魅せて素晴らしく素敵‼︎

真っ赤な口紅もそれらの衣装を引き立てて美しい、の一言だ。
実はあまり好きな女優ではなかったのだけど、本作で俄然彼女に興味を持った。
憂いのある眉からブルーの澄んだ大きな瞳。
ほんとう圧巻の美と輝きだった。

 

目は体の中で唯一魂が覗けるところ
目は心の状態を教えてくれる

しかし。
本作を観て実感したのは、人の顔の好悪や美醜や魅力、また本質を表すのは、やはり目だと言うことだ。
目は人間の体の中で、唯一魂が覗けるところと言うけれど、まさにそうだ。
私は毎朝、目を覗き込んでマントラを唱えている。
潜在意識に刻み付けていることがあるのだが、私の目は私の心の状態を教えてくれる。

映画を観ていて、たまに本作のマリオン・コティヤールの瞳との出会いのように至福のめぐり逢わせがある。
もしかしたら、彼女とは前世で出会っていたのかも? きっとそうだろう(笑)。
そんなふうに思えるようになった私自身の成長も嬉しい、忘れがたい作品となった。

 

※2月10日(金) TOHOシネマズ 梅田 他全国ロードショー

 

© 2016 Paramount Pictures, All Rights Reserved.

■監督/ロバート・ゼメキス 『フォレスト・ガンプ / 一期一会』

■脚本/スティーヴン・ナイト 『マダム・マロリーと魔法のスパイス』

■出演/ブラッド・ピット、マリオン・コティヤール、ジャレッド・ハリス、

サイモン・マクバーニー、リジー・キャプラン

配給:東和ピクチャーズ

 

 

《一宮千桃さんの記事一覧はコチラ》
https://www.el-aura.com/writer/ichimiyasentou/?c=26311