一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.107「あなた、その川を渡らないで」

この映画で描かれた「美しい夫婦」というものに。かれらの姿が「真実の愛」と言われたらほんと、わからないんだけど、私は彼らの在り方をとても「美しい」とは思う。「美しい」ものを見せられた一作だった。
一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.107「あなた、その川を渡らないで」

仲良し夫婦は98歳と89歳!
「美しい」理想の夫婦の姿に涙する

男と女は違う生き物である。体が違うと、同じ人間でも違うと思う。
男と女が夫婦になるということは、互いが砥ぎ石となり、高めあうことであり、そのためには一番嫌いな人間と結婚するようになっている。しかし、たまに前世から強い愛情で結ばれた魂同士が今生でも結ばれるということがある。

本作は98歳の夫と89歳の仲むつまじい夫婦の15ヶ月を追ったドキュメンタリーである。
監督は「真実の愛とはなにか」について語りたかったということだが、私はこの夫婦の姿が「真実の愛」か? と問われたら「どうなんでしょう?」なんだけど、
「そうあってほしい理想の夫婦の姿」であることは確かだと思う。

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また、この夫婦はたぶん前世でも夫婦であったと思われる。前世だけではなく、幾世で何度も夫婦であったのではないだろうか?
こういう夫婦の姿には、誰しも涙させられるものである。
事実、私も滂沱の涙状態。泣きまくってしまった。

「理想」というのはほぼ存在しないもので、そういう意味でこの夫婦の存在は「奇跡」とも言える。しかし、夫婦の長い歴史の中では山あり谷ありだったのは劇中でも語られる。山あり谷ありだったから「理想の夫婦」となったのだろう。
それなしに、「理想の夫婦」になることはない。

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どこへ行くにも手をつないでふたりで
でも、6人の子を亡くした悲しみは癒えない

結婚76年目のおじいさんとおばあさん。小さな田舎の村でふたりきり、仲良く暮らす。毎日手をつないでお揃いの韓服を着て、市場に散歩に病院にバス旅行にと出かけていく。落ち葉掃除をしながら葉っぱを投げ合って遊んだり(そういえば「冬のソナタ」にもそんなシーンがあったなあ)、雪が降ると雪合戦したり、まるで子どもみたいなふたりに最初はちょっと引いてしまったが、次第にふたりの日々の生活に見入ってしまう。

子どもは12人産んだけど、成長したのは6人だけ。死んでしまった6人の子どもたちの話になるとおじいさんもおばあさんも涙を止められない。死んだ子どもたちにあの世に行った時に渡せるように市場で6人分の寝間着を買う。
しかし、おじいさんは咳が止まらなくなり、寝込むようになる……。

おじいさんが可愛がっていた飼い犬が突然死んだあたりから涙が流れ、遊びにきた息子と娘たちが喧嘩を始め、それを悲しそうに見るおじいさんの表情に泣き、寝込んだおじいさんに長男が「お父さん、今まで育ててくれて感謝してるよ、ありがとう……」と泣きながら言うシーンに泣いて、と中盤から後半は泣き続けだった。

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彼らの姿に自身の両親の姿を見る
年老いて健康で仲良し夫婦って稀少なのだ

思うに、私は彼らを見ながら自分の年老いた両親の姿を見ていたのだと思う。私の父もおじいさんと似た大きな福耳で、おじいさんが元気がなくなったあたりから、その福耳がしぼんだようになっていったのが印象深い。耳が枯れていくと生命の火も消えていくのか、と。父の耳を今度確認しよう。
おばあさんも大きな福耳だ。だからふたりは長生きできて、そう、幸せな一生だったのだろう。私の両親もなんだかんだ日々互いに文句を言いながら仲良しだ。
それって、ほんとに貴重なことなんだよね。と本作を観て改めて思った。

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また、こんな年老いた仲むつまじい夫婦って、日本にはあまりいないのではないかとも思った。韓国ならでは、というのもあるのでは? 美しい夫婦愛って、明治から昭和初期にはたくさんあったような気もするが、今はどうなんでしょう?

そう、稀少だから感動させられるのだ。この映画で描かれた「美しい夫婦」というものに。かれらの姿が「真実の愛」と言われたらほんと、わからないんだけど、私は彼らの在り方をとても「美しい」とは思う。
「美しい」ものを見せられた一作だった。

■監督・撮影 チン・モヨン
■出演 おじいさん チョ・ビョンマン おばあさん カン・ゲヨル
■86分

※7月30日(土)~全国ロードショー

◇上映劇場
シネ・リーブル梅田、シネマート心斎橋にて7月30日、シネ・リーブル神戸にて8月6日、京都シネマにて8月13日より公開

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