一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.106 「シング・ストリート 未来へのうた」

日々の鬱屈に沈みそうになったら観返したい、生きる指針のような作品だった。80年代ブリティッシュ・ロックに嵌っていた身としては、懐かしさに身もだえした。 自分の中の青臭さは一生大事にするもの、だね。
一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.106 「シング・ストリート 未来へのうた」

自分の中の青臭さを大切にしたい
音楽に乗せて語られる胸打つ人生訓

私たちは年をとると、外見は老いる。だんだんと若さや瑞々しさは体からは失われていく。人は外見で判断する。年寄りは大人なんだと思いがちである。
しかし。人は外見は老いるが、中身は子どものころから大して変わってないのである。本質的な部分はたぶん、一生変わらないのだとも思う。

青春は年老いてから正確に理解できるものだと、年がいってから分かった。
青春映画というものは、今だからこそ、身につまされる、のではないか?
青春映画を観て涙にむせぶのは、自分の中のピュアがまだキラキラと光を放っているのだと思う。

サブ1

 

1985年のアイルランドはダブリン。大不況で失業者が溢れる。カトリックの厳格な国では人々は閉塞感から抜け出したい思いで一杯だ。14歳の主人公、コナーの家庭も父親が失業し、父親は母親とは毎日喧嘩状態。そんなコナーの唯一の楽しみはテレビのミュージック・ビデオの放映。時はデュラン・デュラン、ザ・クラッシュ、ア・ハー、ストラングラーズ、ザ・ジャムなど80年代ブリティッシュ・ロックの花盛り。コナーは日々の憂鬱を音楽で慰めていた。

そんなある日、父親失業のため、コナーは公立の荒んだ高校「シング・ストリート」へと転校させられることに。初日からイジメの洗礼を受け、前途多難の彼の前に年上の美女ラフィーナが現れる。コナーは彼女に「ボクのバンドのミュージック・ビデオに出ない?」と誘うのだが、バンドはこれから作るんである!

サブ2

 

たとえ無理なことでもやってみなきゃ
少年少女の孤独や絶望に共感する

恵まれない少女、ラフィーナの寂しさや愚かさや孤独やツッパリが良く分かる。若いって素直になれないのだ。そんなラフィーナに恋するコナーの純情。少年の傷ついた横顔や不器用な涙、絶望も良く分かる。辛い気持ちが我がことのように分かって、涙が頬を伝い続ける。そして、諦めたり、打ちひしがれていた彼らが顔を上げて何ものをも怖れず前へ進み出す姿に嗚咽するのだ。
それは今も私は日々続けている。何かに打ちのめされたり、へこんだりしても、生きていくって前へ進むしかないのだから。だから、共感する。
たとえ無理、なことでもやってみなくちゃ。それでダメなら、と私は諦めが悪く、自分で納得しないと引き下がらないこところがある。それは年をとった今も変わらない。

SING STREET

 

怖れることが一番良くない
行動すればかならず突破口はある

この映画は青春映画で若者を描いているが、描かれているのは「生きていくってこういうことだよ」ということである。
だから、きっと全ての人が涙を流し、胸掴まれる、可能性が高い。
ここで描かれる主人公たちの姿は「理想」でもある。
たとえ、目の前に怪物なみの障害があろうと、怖れずとにかく行動して前に進む。
そしたら、きっと突破口はあるのだ、と信じる。
そうありたい。常に。
怖れることが一番の良くないことなのだから。

サブサブ

 

日々の鬱屈に沈みそうになったら観返したい、生きる指針のような作品だった。80年代ブリティッシュ・ロックに嵌っていた身としては、懐かしさに身もだえした。

自分の中の青臭さは一生大事にするもの、だね。

 

■監督・脚本 ジョン・カーニー
■出演 フェルディア・ウォルシュ-ピーロ ルーシー・ボイントン ジャック・レイナー エイダン・ギレン マリア・ドスル・ケネディ
■106分
■7月9日(土)より、シネ・リーブル梅田、MOVIX京都、シネ・リーブル神戸 ほか全国順次ロードショー
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