一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.104「64-ロクヨン-前編/後編」

この映画で描かれる登場人物たちの苦悩や悲しみを楽しみ、として観られたら、より本作は楽しめるような気がした。
一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.104「64-ロクヨン-前編/後編」

昭和最後の年に起こった少女誘拐事件
組織の複雑怪奇と感動を骨太に描く!

あ~っ面白かった!! 最近の日本映画のミステリー作としては出色の出来。
開巻から息詰まる展開で、その昔「砂の器」を観た時のような息苦しい緊張感をヒリヒリ感じさせた。

前編では佐藤浩市の熱弁に思わず涙ぐみ、後編では犯人逮捕にぐったりしつつも、深い安堵と虚しさ、希望も感じさせた。前、後編ともに多数の出演者を巧みに捌き、見せ場を作り、見事に感情を揺さぶり纏め上げた手腕は瀬々監督ならではだろう。

また、警察や新聞社など、組織ってなんてめんどくさいんだ! と思いつつ、その組織でやっていかなくてはならない人間の大変さも改めて実感させられた。特に男。男たちの組織での攻防、保身、反目、駆け引きはほとほと感心する。男性が早死にするのも分かる。しかし、そういう男社会の男たちの姿が愚かしくも見え、女の私としては、これが女組織だったらどうだろう? などとも考えるのだった。

(中)【64後編】メインカット

 

豪華キャストたちの演技合戦
佐藤浩市の熱演に涙!!

さて、お話の発端は昭和64年に関東近県で起こった少女誘拐殺人事件。ご存知の通り、昭和天皇の崩御で昭和64年は7日間で終わる。その事件は64(ロクヨン)と呼ばれ、未解決のまま14年がたち平成14年に舞台は移る。時効まであと1年。しかし、当時の刑事部の事件担当者は今は警務部広報室に異動。広報官として記者への対応を仕切っている。事件にはタッチできない状態で、しかもある事件の発表をめぐって記者クラブの突き上げを食らっている。そんな彼の耳に64の新たな情報が入ってくるのだが……。
後編は64を模した誘拐事件が発生し、いよいよ犯人逮捕となる。

(中)サブ03

 

ものすごい豪華キャスト。一人でも主演を張れそうな役者がごろごろ出ている。
話としては警務部と刑事部の確執と、広報室と記者クラブの攻防を描きつつ、64事件を解決していくというもの。たぶん警察の広報官が描かれた映画って初めて観たと思う。新鮮。しかし、そうよね。警察も事務方はいるのである。
かなり複雑な人間関係が提示されるので、頭をフル回転して観る。それが心地良い。がっちり噛み応えがある美味な煎餅みたいだ。

私が前編で涙ぐんだのは、主人公の広報官が必死に涙ながらに記者クラブに理解を求めるシーン。本気の言葉は胸を打つ。佐藤浩市、たぶん演技賞総なめと思う渾身の熱演だ。また、娘を誘拐された父親役の永瀬正敏は哀れを体現。記者クラブのボス役の瑛太はふてぶてしいが、仁義を忘れない。広報室係長の綾野剛も至極まともな役で(笑)なかなか良い。本作は皆演技のレベルが高い! ベテランたちの演技合戦も見ものだ。

(中)サブ04

 

警察組織のヒエラルキーの凄まじさ
苦しみを楽しむ術を身につけるために

さて最後に、本作でスピリチュアル的な考察を。
警察という組織の凄まじいヒエラルキーの怖さ、愚かさって、今の日本はもとより、世界の縮図のようだ。
人間は現世を楽しむために生まれてきたのに、こんな組織にいたのでは、身を削るばかりである。しかし、身をけずる、こともまた楽しみではあるのだが。

この映画で描かれる登場人物たちの苦悩や悲しみを楽しみ、として観られたら、より本作は楽しめるような気がした。
要は、そういう風穴の開け方を身につけましょうってことなんだけど。
辛い人生を生き抜くために。

後編_サブ13

 

■監督・脚本 瀬々敬久
■原作 横山秀夫
■脚本 久松真一
■出演 佐藤浩市 綾野剛 榮倉奈々 夏川結衣 緒形直人 窪田正孝 坂口健太郎 瑛太 永瀬正敏 三浦友和 椎名桔平 滝藤憲一 奥田瑛二
■前編121分 後編119分

※ 5月7日(土)~前編 全国ロードショー
※ 6月11日(土)~後編 全国ロードショー

©2016 映画「64」製作委員会

 

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