一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.102 「バナナの逆襲 第1話 ゲルテン監督、訴えられる」 「バナナの逆襲 第2話 敏腕? 弁護士ドミンゲス、現る」

いろんなことを考えさせてくれる秀作ドキュメンタリーである。 ドールのバナナは食べない。有機バナナを高いけど、食べることにしましょうかね。

バナナをめぐる秀作ドキュメンタリー
巨大企業の圧力に抗する人々の闘い!

2002年に「食べるな、危険!」という本を読んで、バナナの農薬漬けの実態を知った。それ以前にも、バナナは農薬が凄いから軸の部分は食べない方がいい、と80年代に姉が言っていた記憶がある。2002年当時は驚愕してバナナを食べなかったが、年月の流れとともにバナナを避けることも薄れていた。しかし、バナナは今でもシュガーポットが出たものしか買わない。要するに、ちゃんと腐るバナナしか買わないようにしている。でもバナナは熱帯の果実なので、体を冷やす。だからあまり食べないようにはしている。

まあ、そんなバナナについてのアレコレを知ってる人、考えている日本人はものすごく少ないと思う。毎日バナナを一本食べるという人を何人も知ってるし。
で、本作はバナナについてのドキュメンタリーということで、健康オタクの私としては楽しみに観に行った。

いや~、実に面白かった!  それでドールのバナナや食品は食べないようにしよう! と密かに誓ったんである。

 

大企業に訴えられて勝ち目なし?
監督を助けたのは、スウェーデン市民!

さて、本作は2話同時公開なのだが、スウェーデンのフレドリック・ゲルテン監督がバナナ農園での農薬被害をめぐる裁判のドキュメンタリー映画(「第2話」)を作る。そしてその映画をロサンゼルス映画祭のコンペに出そうとしたところ、映画に登場するドール社から上映中止の要求があり、監督は訴えられてしまう。

その巨大企業ドールの凄まじい映画への攻撃を監督は記録する。それが第1話。

まず第1話から。
ドール社の監督に対する嫌がらせや、脅迫、名誉毀損の訴え、そしてメディアの統制と情報操作はある意味素晴らしい。スウェーデンのほぼ無名監督を徹底的に亡き者にしようとする姿勢はよくぞここまで、というレベルで、少しでも我が社に傷をつけたら許さないぞ! 抹殺してやるぞ! と大金を投入して企業イメージを守ろうとする。いや、勝ち目はないんである。しかし、これがアメリカじゃなくてスウェーデンというところに救いがあった。

アメリカじゃ、企業から情報をもらうとジャーナリストは調べもせずにそのまま記事を載せたりする(ほとんどのジャーナリストが企業の言いなり)。そこが私は一番面白かった。要するに、アメリカに真のジャーナリストはいないってこと。皆大企業の傀儡なのだ。
監督が絶体絶命から活路を見出す後半は快哉である。スウェーデン市民の心意気に嬉しくなってしまった。まだ、スウェーデンは国自体が毒されてないと少しホッとする。

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バナナ農園で農薬まみれで働く労働者
息詰まる裁判の行方に見入る

この1話を観たら一体どんなドキュメンタリーをゲルテン監督は撮ったんだろう? と必ず2話を観たくなる。

で、2話。中米ニカラグアのドール社のバナナ農園で働く労働者が、使用禁止農薬を長年使ってきて不妊症になる。企業側は使用禁止農薬と知りながら使用を止めなかった。12人の労働者は訴訟を起こし裁判となる。

ここで描かれる劣悪な農園の様子に驚く。農民たちは皆裸足で雨のように降り注ぐ農薬の中、裸やシャツ一枚で作業をしているのだ。禁止農薬は彼らの精子を抹殺した。裁判では巨大企業の犯罪が暴露される。息詰まる裁判の行方に見入ってしまう。ドール社のやり口には辟易する。

しかし、これが巨大企業なのだ。弱肉強食の世界の縮図。

こういう無知で貧しい労働者が痛い目に遭わされる映画はなんともいえない気持ちにさせられる。
一部の一握りの人々に支配されている世界。大多数の底辺の人々……。
世の中のしくみを改めて考える。

なかなか変わらないのが世の中だ。今も変わらずバナナ農園で農薬まみれで働く労働者はわんさかいるのである。

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泣き寝入りしないこと
声をあげることが大切なのだ

この2作で思ったこと。

それは、たとえ負け戦になろうとも、声を上げる、屈しないことは大切だということだ。きっと助けや希望はある。ない時も神様だけは見ていてくれると信じること。それでなんとか明日も生きていくことができるのでは……。
スピリチュアルな部分がこれからとても大事だと思う。でないと生きるのが辛いことが世の中には多すぎる。

面白い! そしていろんなことを考えさせてくれる秀作ドキュメンタリーである。
ドールのバナナは食べない。有機バナナを高いけど、食べることにしましょうかね。

 

「第1話」
■監督・出演 フレドリック・ゲルテン
■87分

「第2話」
■監督 フレドリック・ゲルテン
■出演 ホアン・ドミンゲス デュエイン・ミラー
■87分

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ゲルテン監督

 

※東京 上映中
※4月30日(土)~大阪・第七藝術劇場にてロードショー

 

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