Genki Sudo×Spiritual Peopleワンネスを探す旅 Web番外編
ゲスト:茂木健一郎さん フォスト:須藤元気

2008年に対談された須藤元気さんと茂木健一郎さん。あまりに素晴らしい内容なので、もう一度ご紹介します。脳とは? クオリアとは? そこに追及されるスピリチュアルとは?
Genki Sudo×Spiritual Peopleワンネスを探す旅 Web番外編<br>ゲスト:茂木健一郎さん  フォスト:須藤元気

TRINIRYで人気連載だった須藤元気さんの「ワンネスを探す旅」。今回のお相手は脳科学者・茂木健一郎さん。本誌では紹介しきれなかった内容を番外編と題して特別にWebでお届けします。

Photo:Masafumi Sawazaki(VANESSA)

須藤元気が聞く!茂木健一郎とっての魂、
そしてスピリチュアルとは?

須藤(以下須):なぜ茂木先生は脳の研究をはじめたんですか?

茂木(以下茂):人間がものを考えたり、感じることが不思議だと思ってね。僕はアインシュタインみたいな人になりたかったんです。相対象理論とかにハマっていて。物を考えているときに「どうして俺はものを考えているのだろう」と。不思議に思ってね、脳の研究は博士号をとった後だからかなり遅いスタートですよ。その頃、忍ばす池のまわりを歩いてこんなことを考えました。“宇宙の究極の哲学ができてA4用紙1枚に書いてあったとする。それが普通の高校生が書いた日記とどこか違うの”。どっちも文字が並んでいるだけなのに、片方は宇宙の哲学で、片方は高校生の日記。何が差異なのか?その差は紙の上にあるのか、言葉び上なのかってわかんないじゃない。そういうことを考えている中で気づいたら脳の研究をしていましたね。俺も本当は……須藤さんみたいに放浪したいんだよ(笑)。

須:そうなんですか(笑)、ありがとうございます。茂木先生が研究しているクオリアとはなんですか?

茂:クオリアとは「心が感じるさまざまな質感」です。バラの赤さや香り、水の冷たさ、空の青さ……色や匂いは質感でできていますよね。それをクオリアと呼びます。何故それを研究しているかというと、人間の脳には一千億の脳細胞があるんですが、それは全部方程式で書けるんですね。方程式で書けるということは数値の世界のはず。ところがクオリアは質感だから、数字で書けません。脳がクオリアを生み出しているわけだから、数値で書ける世界と書けない世界の関係はどうなっているのか、と。それが科学の世界で大問題になっています。たとえばノーベル賞1個もらえるのを“1ノーベル”とすると、クオリアを解けば100ノーベル(笑)。凄く難しいのですが、なんとか解きたいなと思っています。そういえば、須藤さんは思っていることを紙に書くとおっしゃってましたね。著書のなかで空海の話を書かれて、理念していたら金星が口のなかに入る……それが思っていたら実体化したと著書にありましたが、どういう意味ですか?

須:あれは虚空求聞持法といって、ずっとその言葉のエネルギーを書いていると、その振動数の震動数が低下して物質化すると僕は捉えています。ところで茂木先生はスピリチュアルな世界をどうお考えですか?

茂:僕は江原さんと2度お会いしています。彼は小さいときにお父さんを亡くされて、自分でどう生きるか苦しいなかでああいう世界観を生み出した訳ですが、みんな自由でいいんですよ。だからなにを考えたっていい。ただ、その自由さのなかで考えたこと、イメージしたことがだれかの人生の邪魔になっては困りますね。それが生きるエネルギーになるんだったらいいんじゃないかな。

須:スピリチュアルなことが流行するのは社会が混沌として、病んでいるからだと思います。不安で見えない者に頼りたくなるからでしょうね。

茂:機械はちゃんと働いてくれるけど、自分がどう生きるかは教えてくれないからね。そういえば「幸福論」あとがきに“仲間がテレビに出たとか、雑誌に出たと騒いでいて、昔の自分もそうだったけど今は興味がない”みたいなことが書いてあったよね。須:それがちょうど3年前ぐらいです。価値観が段々変ってきた頃ですね。

茂:将棋棋士の羽生善治さんに面白い話を聞いたんだけど、将棋って勝ち負けじゃないですか?ところが江戸時代の名人は世襲制で年に1回、徳川将軍の前で御前将棋をすることが一番のイベントだったそうです。あらかじめさし手も決まっていて、勝ち負けではなく、対戦しちゃうと勝ち負けが生まれる。背後ではいろいろあったでしょうが、表向きは勝ち負けを超越ししたものが名人だったそうです。

須:ああ、合気道も試合もあまりなく、型を見せると聞きますね。個人的には勝ち負けにこだわる競技社会は終わっていくと思うんです。物質主義というかゲーム的感覚なものは崩れていますし、限界にきていると思います。

茂:白黒つけると偏っていくこともありますね。先日、僧侶の方と食の話をして印象に残ったんですが、食べ物にこだわって「これしか食べない」っていう人いるでしょ。托鉢僧はもらったものを頂くしかないので自分で食べ物をコントロールできないんですよ。これしか食べないという発想は、まさに須藤さんの言葉でいうと脳内対話が成立しちゃっている。差し出されたものを食べるしかないときってあるじゃない、食べたくなくても(笑)。

 

 

須藤元気が提案する新しい価値観 “3.5次元のスピリチュアル

須:魂の存在についてはどう思われますか?

茂:物質の世界にそれがあるとは証明できないけど、目をつぶったらそこにあるものが魂ですよね。我々のイマージュ(空想)の世界は広いし自由です。その自由度を止めちゃいけない気がします。あると思うならそれでいいんじゃないかな。それよりも死んだ人に対してどういう態度をとるかが重要だと思いますね。
須:僕は魂がなければ指1本動かないと思っています。すべての源でないでしょうか。死んだじいさんを思い出すし、覚えている限りはじいさんの魂は存在するんじゃないですか。

茂:須藤さんは良く勉強されているからご存知ですが、量子学とか相対象性理論とかああいう世界観って本当に凄いです。この世はかなりミステリアスなのでなんでもありですよ。いまの物質的世界観も間違いでした、ということもありえる。ただね、研究者はいままでの知識を前提に物事を考えるんですよね。

須:100年後に僕らの考えていたことを未来の人が見たら、間違えてはいないけど遅れた考えの人たちと総括されるような気がしますね。

茂:惜しかったねーとか(笑)。

須:はい。それが歴史であって、常に成長していくことだと思います。

茂:須藤さんは昔からスピリチュアルに興味があったんですか?

須:中学ぐらいからですね。最初の目的は「いかにこの世で成長するか」ということでした。この物質社会で成長するには目に見えない力を借りればもっと合理的に成功できるんじゃないか、と思ったんです。それでうまくったこともありますし、ダメだった部分もあります。それで今の考えに至ったわけです。

茂:でも、書いてあるものを読むとすごく距離感がいいよね。そこが須藤さんの面白いところなんだな。スピリチュアルな力を借りて成功しようとすると、ギトギトの人がいるじゃない(笑)?そういうのとは違うよね。

須:そうですね(笑)、どっぷりハマるのは危険ですから。

茂:やっぱり強靭さがないと、取り込まれちゃうというか向こうへ行っちゃうのかな。

須:フィジカルなこと(格闘技)をしていたから地に足が着いていたと思いますね。今は肉体をもって生まれたわけですから、テーマがあって生きている。3次元で生きながらちょっと4次元の窓を覗ければなっていう3.5次元のアプローチでいろいろ表現できればと。簡単に言うとスピリチュアルな領域を物凄く俗っぽい比喩を使って表現していこうと思います。

茂:それが3.5次元なんだ。

須:はい。スピリチュアルについて凄く勉強しました。僕は別に脳を否定するわけじゃないんですが、脳ではたどり着けない領域だと考えていまして、脳はどちらかというと計画的なものだと思うんです。

茂:でも、最近の研究だと脳のなかには神を見っちゃったり超常体験したときの脳活動はわかっているんですよ。

須:それは覚醒した状態ということですか?

茂:一番鍵になっているのは頭頂葉の空間近くのところ。あとは自己に関わる活動が、普段と違う活動になっている。それがなんなのか、正体はつかめていないですが、そういう領域があることは事実なんです。脳の限界というより、脳の使い方がいわゆる変成意識状態。要するにいまこの使われ方が、全てではないということですね。

須:そうですね。僕は前頭葉しか使ってなかったので、前頭葉を押さえていかに内的対話をしていくか、沈めることによって精霊の囁きが聴こえてくるようになりました。それは自分の閃きや直感ともいいます。前頭葉を下げないと聴こえないという経験があるので。

茂:確かに、自分の内側の調べに耳を傾けるのは凄く大事なこと。あんまりできないことですよ。前頭葉って我々の言葉でいうと社会的な役割とか目的。この目的に注意を向けること。武術で「居付く」というスタイルがありますよね。相手ですよね。それを我々がほとんど制圧しているのです。例えばいまだったら、椅子にちゃんと座っていなきゃいけないとか。いろんな可能性を消してしまっているわけですよね。ただ、あまりにも解決しすぎちゃうのも問題だからおっしゃるように3.5次元ぐらいがいいと思う。

須:計算してスピリチュアルな力を借りてどうにかやろうと考えて、なかなか突破できなかったんですが、今はスピリチュアルな知識を捨てることが逆に大事だってわかりました。知識ではやはり辿りつけないなって。

茂:確かに知識って助けにはなるけど、邪魔にもなりますね。そうなんだよね。

 

須藤元気 元総合格闘家。2006年引退し、現在は俳優、作家、思想家とマルチに活躍中。チャリティーにも精力的に参加し「WE ARE ALL ONE(全てはひとつ)」というメッセージを発信している。著書に15万部を突破した「風の谷のあの人と結婚する方法」、「レボリューション」など。最新著書は「無意識はいつも君に語りかける」(マガジンハウス)。公式サイト&ブログcrnavi.jp

茂木健一郎 脳科学者。ソニーコンピューターサイエンス研究所シニアリサーチャー、東京工業大学大学院連携教授(脳科学、認知科学)数多くの大学で非常勤講師を務める。「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究。また文芸論、美術評論にも取り組んでいる。「脳と仮想」(新潮社)で、第四回小林秀雄賞を受賞。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」ではキャスターとしてもお馴染。最新著書は「脳を活かす勉強法」(PHP研究所)公式ブログkenomogi.cocolog-nifty.com/qualia

 

(2008年公開のものです)。