Czary Mary ポーランド~魔法と神秘の満ちた国より~ vol.6

科学と理論を優先するヨーロッパにあって、未だに多くのポーランド人は霊や術を信じています。都会では多くの人が占い師を頼り、地方には「術使い」と呼ばれる能力者が数多く活躍するこの国の、スピリチュアルなレポート&こぼれ話をどうぞ!

月とスラブ人

いつも変わらぬ姿を見せる太陽にくらべ、絶え間なく姿を変える月は非常に魔術的で昔の人々に多くの幻想を生み出させました。まだ、自然界や宇宙が今よりも大きな神秘で包まれていた頃、スラブの世界では月が欠けるのは、魔女や狼、狼男によって食べられたためだという話も、長い間まことしやかに言い伝えられてきました。

現代ではテクノロジーや科学の発達で、月の満ち欠けが人々の精神に何かしらの影響を与えているという話は、ごく普通に受け止められるようになりましたし、それを数値で説明することさえ可能になりました。しかし、昔のポーランドを含めるスラブの大地に住んでいた人々は、毎日の生活のなかで、月の満ち欠けが彼らを生かしてくれている自然の営みに深く関係があることに気がつき、そのリズムに合わせて生活をしていました。漁師や農民は月を見て、いつ漁に出るか、いつ種をまくのかを知りました。女性たちも闇夜を照らす月を見て、どの時期に洗濯物の汚れが落ちやすいか、保存食を作るべきか、また薬草を干す時期かを知るのでした。

そんな自然とともに形成された彼らの知恵は現代でも受け継がれ、多くの農業や庭に従事する人に活用されています。また、一般生活に利用できるとあって、生活を自然のリズムに合わせたいと願う都市生活を営んでいる人たちの間でも、活用している人は少なくありません。今ではインターネット上の月暦で、いつ歯の治療すると痛みが少ないのか、髪を洗うとふけが出にくいのか、また美容パックの効果がてきめんに出るのか、などを知ることができます。

 

それでは、ポーランドの月の満ち欠けによる生活の知恵と迷信をちょっと見てみましょう。

 

〈新月〉

昔、新月期は自然の魂や霊が暴れる時期とされ、地域によっては新月期の1日目にはお供えものがされ、祈祷されていました。また、こちらの世界に月が見えないとき、月は死者の世界を照らしているとも信じられていました。そして100年ぐらい前までは、町のインテリと呼ばれる人たちの間でも、この時期に髪の毛を切ると、よく伸びるといわれていていました。現在では髪の毛を染めるのにいい期間(染料が落ちにくい)とされています。

昔の南スラブ、ブルガリアでは輪になり歌いながら踊り新月を迎えました。女子はパンやお金を携え、月が満ちるのと同じように食べ物も財も満ちることを月にお祈りしていたそうです。また、ポーランドのカシューブ地方では、新月に3回頭を下げながら願い事を唱えると願いが叶うと言われていました。

 

〈第1期、第2期〉

月が徐々に満ちてきます。この時期は人のエネルギーも上昇するそうです。肉体的にも、記憶力などの知的な方面でも1番いい状態になり、特に朝の9時から10時、15時から18時は、持ち前のコンディションのなかでも最高の状態を発揮できるとか。

また、摘んだ後すぐ食べる野菜や果物もこの時期が一番栄養があり味もいいので、果物狩りツアーに出かけてみるのもいいかもしれません。

〈満月〉

ヨーロッパの多くの地域で、満月になると狼男が変身するという話がありますが、スラブ地域でもその話は健在です。この時期はすべての神経が敏感になるようです。だからでしょうか、現在でもこの時期は身体への痛みが一番感じやすくなるので、歯医者に行くことや手術はやめておいたほうがいいといわれています。

 

20世紀後半には米イリノイ州の大学で、満月時に果物が他の時期に比べて20%早く成長するという研究結果が発表されました。自然界に広がる月の力。科学万能の現代では、数値になって初めて信じる人もいたかもしれません。

 

〈第3期、第4期〉

月が徐々に欠けていきます。

この時期は地上に出ている植物への損傷が少ないとされているため、農耕に携わる人たちは、木の剪定や植え替えを行いました。また、長期保管しておく果物などの収穫時期でもあり、自宅にりんごの木などを持っている人たちは、この時期に採るそうです。その他にも、この時期の切花は鮮度が長く持つといわれています。

昔のスラブ人のように宇宙の動きにあわせ、月の満ち欠けに自分の生活を少し寄り添わせてみると、自然に更に近づき、今より無理の少ない生活を送れるかもしれません。今晩から夜空を見上げてみませんか?