かわいい物から怖いものまで、日本の民芸品はとってもスピリチュアル

最近になって復活の兆しをみせている民芸品が「魔除けどんどろ」。 こちらは、「静岡県の伊東温泉」で土産物として1950年代から70年代にとても人気があったものだといわれています。

【日本の風土をあらわした民芸品】

日本は決して広い国土をもっているわけではありませんが、東西に長いことから、「地域毎に様々な特色」を持っています。そんな特色を反映したものとして、「民芸品」があります。民芸品とは、「庶民の生活の中から産み出された、その地方独特の手工芸品」なのですが、現在では、その地方独特のものであれば、大量生産されたものでも民芸品といったりしますので、「独自性と地域性があれば民芸品」といってもいいのかもしれません。

 

【親が子を思う気持ちがこもったさるぼぼ】

そんな民芸品の中で知名度が高いものとして、「さるぼぼ」があります。こちらは、岐阜県は「飛騨地方」のものであり、お土産としてあちこちで販売されています。冒頭に掲載した写真がさるぼぼですが、奇妙な味のある姿をしていることがわかると思います。

さるぼぼがどうしてこのような姿をしているのかには、いくつかの説があります。飛騨地方は土地が痩せていたために、男性は出稼ぎに出かけざるを得なかったので、残った女性が子供のために作った手作りの人形が元というものや、中国から伝わってきたぬいぐるみの起源ともいえる人形が元というものもあります。

このあたりのことははっきりとはわかりませんが、少なくとも古い時代に子供の健康などを願って、母親や祖母が「お守りとして人形を作る」という風習があったようです。当初は普通の人形だったものが、魔除けや病避けの色である「赤」が取り入れられ、さらに、「災いがサル」「家内エン満」「良エン」といったように「猿・サル・エン」という「言霊的」な意味が取り入れられて、真っ赤な猿の姿になったのだそうです。

つまり、子供を守るために作られたものが、よりさまざまな要素に対応できるようになったという、「非常にスピリチュアルな要素をもった民芸品」といえるでしょう。こちらは、様々な要素があとから加わっていって成立したタイプですが、民芸品には、元々宗教的な儀式やスピリチュアルな用途で使われていたものが、それが忘れられてしまい、姿だけが残ったというケースもあります。

 

【神秘的なたたずまいを見せるイタヤ狐】

「秋田」の民芸品に「イタヤ狐」というものがあります。こちらは、「イタヤカエデ」という木材とシンプルに加工することで、狐のような姿にしたものであり、素朴ながら芸術性の高さを感じさせるもので、お土産として人気があります。

こちらは、一般的には子供の遊び道具として作られたといわれているのですが、その姿が子供に与えるものにしては、洗練されすぎていることもあり、古い時代にはなんらかの「宗教的儀式で、依り代などに使われていた」という説もあります。しかしながら、現在ではそのことを裏付ける資料は残っていないので、あくまでも、仮説でしかありません。しかしながら、そういった説が出てくるのもうなずけるほど、なんともいえないオーラを発しているのは事実です。

イタヤ狐 (秋田)

photo by モノ思いに耽る日々

 

【近年復活した魔除けどんどろ】

さるぼぼは、今から「1000年以上前」、イタヤ狐は由来もわからないぐらい前からある民芸品ですが、比較的歴史が新しく、それも「海外が由来の民芸品」も存在しています。それは、最近になって復活の兆しをみせている「魔除けどんどろ」。

こちらは、「静岡県の伊東温泉」で土産物として1950年代から70年代にとても人気があったものだといわれています。制作者が減り、廃れてしまっていたものが、近年になって展示会が行われたり、新作が作られるなどのイベントが行われるようになってきました。

この人形は「魔除けの力を持つ」として知られていますが、その起源は民芸品としては特異な物です。西暦1600年に九州に漂着した「ウィリアム・アダムス」というイギリス人が持っていた、人形が元になっているのです。彼は、日本初の帆船を建造した人物として知られていますが、その建造途中で、病気が流行し建造が遅れそうになりました。その時に、もっていた人形を祀ったところ、病気が治り帆船が完成したことから、魔除けの人形といわれるようになりました。

ウィリアムはこの人形を、日本に漂着するまでの間に「南洋地方」で手に入れたといわれています。元が南洋のものだったということもあり、その姿は日本の民芸品とは思えないぐらいエキゾチックなものです。どんな姿をしているのか、動画をご覧下さい。

姿形は南洋のものですが、命名にはさるぼぼと同じように、日本らしい言霊がこめられたスピリチュアリティが感じられます。どんどろの「どん」は「生命の始まり」を意味し、どろは「生命の終わり」を意味しているのだそうです。生命の始まりと終わりで人間の一生を意味する名前を持っているということもあり、その人を「一生守ってくれる魔除けの人形」というわけです。

いかがだったでしょうか? 日本全国に民芸品はありますが、その多くがさるぼぼや、どんどろのような、「スピリチュアルな意味合い」をもっています。一時期はこういった民芸品は廃れていましたが、近年では再評価されてきていますので、比較的簡単に手に入れることが可能です。民芸品を通して、日本の庶民の間で流れていた「生活に密着したスピリチュアリティ」を感じることができますので、どこかに旅行する際には、ぜひ、民芸品もチェックしてみて下さいね。

Spirituality with the crafts of Japan.
It introduces a variety of crafts.