一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.89 『バクマン。』

漫画家を目指す高校生ふたり。サイコーとシュージン。サイコーは作画。シュージンはストーリー。週刊少年ジャンプで頂点を目指す彼らの奮闘の日々をテンポ良く描く。そして、サイコーとクラスメイト、アズキとの結婚の約束......。

日本人の良い所が表出の原作を
違和感なく巧みに映画化!!

夢を持っている人はすごく励まされるし、力をくれる映画である。
私は原作漫画をコミックスが出る度に買い、毎回泣いていたように思う。
それもほとんど号泣だった。私が号泣したのは、この漫画の古風な点である。
そのことについては後述する。

サブ⑨

 

テレビアニメも毎週観るというファンぶりで、かなり当時ハマっていた。アニメの出来も良かった。ほぼ漫画の通りで違和感がなかったし、タイトルロールやエンドクレジット、主題歌も優れたものだった。そんな大好きな作品が映画化される……。ニュースを聞いた時はキャストに不安になったが、それは杞憂だった。

 

良く、出来ている。
泣けた。青春映画の秀作である。

漫画家を目指す高校生ふたり。サイコーとシュージン。
サイコーは作画。シュージンはストーリー。
週刊少年ジャンプで頂点を目指す彼らの奮闘の日々をテンポ良く描く。
そして、サイコーとクラスメイト、アズキとの結婚の約束……。

サブ③

映画は時間の制約があるので、どうしてもサラッとになり、深く描くのが難しいが、漫画のエッセンスはしっかり入っている。

 

サイコーのおじさんの回想シーン
そこで毎度泣かされた!!

私が本作で泣いていたのは、全てサイコーのおじさんのシーンでだ。
おじさんは漫画家で、ジャンプで連載を持っていたが、読者の人気アンケートで票を獲得できず連載打ち切り。
その後失意のままに早世するのだが、サイコーの心にはいつもおじさんの姿があるのだ。
演じる宮藤官九郎の自然さもあってこの回想シーンは秀逸!
原作漫画でも、おじさんのシーンは泣いてたなあ。

サブ⑥

 

古風な話は王道なのだ!
多くの日本人が好むであろう原作の展開

さて、その原作の古風な点だ。
まず努力を重ね(それも血を吐くような)漫画家を目指す少年の覚悟の姿。
そして、漫画家になり、お互いの夢が叶ったら結婚してくれ、というサイコーのアズキへの古風なプロポーズ。それまでほとんど会わず、メールのみでプラトニックを貫くふたり。しかし、アズキはサイコーを絶えず支え続ける。たとえば、肝臓を悪くして倒れて入院したサイコーが、死んでも連載を続けると、震える手でペンを持つのだが、その手をアズキが支えて絵を描かせようとするなど(このシーンは映画にはありません)、ふたりは一心同体状態なのだ。

サブ②

また、アズキはおじさんが好きだった女性の娘だったとか……とここまで書いてあれっ、これって王道ストーリーだよね? と気づいた。

だってジャンプ連載漫画だもん。

王道のはず。でも、王道は元来古風なものなのだ。振り返ればこの原作は王道の基本のようなもの。どんな異色で亜流の物語があろうとも、王道ストーリーは最強なのだ、と再確認。

そしてこの原作の古風さはたぶん、多くの日本人が好むものだと思う。

 

日本人は特別な民族
私たち日本人の使命を思い出そう!!

日本人は特別な民族だとスピリチュアルの世界では言われているが、本作の出来からも、日本人の凄さは垣間見れる。ここには日本人の良いところが沢山描かれているし、監督やスタッフの仕事も一級のものである。なかなかこんな映画は他国には作れない。

私は原作漫画を読んだ時に、古風なキャラクターの姿に涙したが、それは、私自身も忘れてしまっていた日本人の姿が描かれていたからだと思う。
あーっそうだった、こんな愚直でもいいんだ。大和撫子で奥ゆかしい少女ってなんて魅力的なのか。義理人情あり。人としての礼儀などなど……何度もハッとさせられた。

サブ⑦

最近、いろんなことを忘れがちな日本人。でも、まだまだ大丈夫と、本作を観て思った。日本人としてやらなくちゃいけないことが沢山ある。
その気持ちを強く意識させられた映画である。

原作、未読の方は是非読むことを強くお薦めする!

■10月3日(土)~全国東宝系にてロードショー
Ⓒ2015 映画「バクマン。」製作委員会
■脚本・監督 大根仁
■原作 大場つぐみ 小畑健(「バクマン。」ジャンプ・コミックス/集英社刊)
■出演 佐藤健 神木隆之介 染谷将太 小松菜奈 桐谷健太 新井浩史 皆川猿時 宮藤官九郎 山田孝之 リリー・フランキー
■119分

 

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