一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.88 「罪の余白」

「悪魔」な女子高生と彼女を崇拝する少女。そして死んだ少女。仲良しだった三人のバランスが微妙に揺れ始め、どんどん少女が死に追い込まれる描写が不気味で怖い。よく解らない。だから怖いのだけど。

娘の死の謎を追う父親と悪魔的女子高生
自らの「悪意」に気づく上級サスペンス!

世の中に、悪意のある人物というのはいるものである。

そういう人々を巧みに物語にする作家。最近では『湊かなえ』が、それに類する。
彼女の作品がどれもベストセラーになるのは、そういう「悪意」に引かれる人が多いからだろう。
まさに世相を反映しているわけだが、本作の原作も野生時代フロンティア文学賞を受賞した女性作家によるものだ。そして、「悪意」というものをカリスマ的魅力を持つ女子高生に体現させた。

サブ5

私自身は性善説を信じているが、自らの心が曇ってくると、「悪魔」に支配されることがある。
この女子高生は「悪魔」というより、「モンスター(化け物)」という感じだが、いずれりっぱな「悪魔」となっていきそうではある。
でも、大事なことは他者への「悪意」はいずれ自分に返ってくるということ。
自戒の念も込めて、忘れてはいけないことだ。
(あ~っ「悪魔」とか「悪意」って書いてると嫌な気持ちになってくるね。字面も綺麗じゃないっ)。

さて、そうは言っても本作は良く出来ていて最後まで緩むことなく魅せてくれる。
「面白いっ」のである。でも、「不気味」感は残る。

 

女子高生三人の微妙な関係が揺らぐ
直情型父親の最後の覚悟は!?

お話は、微妙な関係性を持つ三人の女子高生の内の一人が教室のベランダから転落するところから始まる。女子高生は死亡。大学で行動心理学を教える父親は苦悩するが、娘がイジメにあっていたことを突き止める。娘の死は自殺ではなく、殺されたんだ!  父親は娘を追い詰めた犯人を探そうとするが、それはクラスに君臨する美少女で、狡猾な「悪魔」だった……!

サブ6

この「悪魔」な女子高生と彼女を崇拝する少女。そして死んだ少女。
仲良しだった三人のバランスが微妙に揺れ始め、どんどん少女が死に追い込まれる描写が不気味で怖い。
よく解らない。だから怖いのだけど。

だけど。女の子三人という関係が難しいのは解る。
私も経験があるが、すごく面白い子がいて、その子といると楽しいし、気が合うんだけど、もう一人あまり面白くない女の子がいつもくっついてくるのだ。
それで、面白い子がその子と仲良くしてると面白くないし、その面白い子を独占したいと思うようになる。
よって、面白くない子は邪魔で、どっかいってくんないかな? と思ったことが何度もある。奇数は微妙なのだ。

サブ3

話は、この狡猾女子高生と父親との対決になる。
しかしこの父親、行動心理学を教えてるわりに直情型で(まあ、最愛の娘のことだからしかたないが)、心理戦に長けた女子高生に何度も痛い目に遭い完敗状態。
ここら「バカだなあ~っもっと作戦考えないと」とイラつくが、最後に覚悟の反撃に出ます!

サブ4

 

 

「悪意」を出してスカッとする……。
ひょんなシーンで自らの「心」を知る

ひとつ、劇中でハッとさせられたシーンがある。
父親の大学の同僚で父親に好意を持っているらしい地味でダサダサの女性がいるのだが、彼女に対して「悪魔」女子高生が服装から生き方までボロカスに言うところ。
完膚なきまで打ちのめすのだけど、私はここでスカッとした。
それは、私が思っていたこと、彼女に対して言いたかったことを女子高生が言ってくれたからだ。
私は私の中の「悪意」に気づいた。「悪意」は誰の心の中にもある。
それを出すことでスカッとさせる「作品」が最近少なくないように思う。
それだけ人々のストレスが溜まっているということか。いかんっ(笑)。

サブ1

映画はほんとに、ひょんなシーンで自らを省みることができる。

本作はスクール・カーストの非情さを教えてくれるとともに、「悪意」について考えさせられる。
サスペンスとしては上級の出来である。

 

■10月3日(土)~大阪ステーションシティシネマ/TOHOシネマズなんば/TOHOシネマズ二条/TOHOシネマズ西宮OS/全国ロードショー~

■監督・脚本 大塚祐吉
■原作 芦沢央
■出演 内野聖陽 吉本実憂 谷村美月 加藤雅也 葵わかな 宇野愛海
■120分

(C)2015「罪の余白」フィルムパートナーズ

 

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