仏像に隠されたもの~古来の人々が信仰してきた対象~

古来の人々から崇拝されてきた仏像の本来の意味とは……。その時代時代に息づいてきた風習がありました。

仏像本来の姿

仏像は、その芸術性からスピリチュアルな世界のみならず、美術的な観点からも多くの評価を集めていますが、今回は、そういった美術的な面ではなく、仏像本来の姿ともいえる「信仰の対象であり、スピリチュアルな存在」である面を紹介したいと思います。

今年の3月に、オランダの美術館に持ち込まれた仏像が世界的に話題となりました。
その理由とは、仏像の中に1000年前の「遺体」が隠されていたからというもの。
仏教には、即身仏といって、厳しい修行の果てに自らミイラ化する行があり、日本にも即身仏は存在していますが、仏像の中に隠されたというのはレアケースといえます。

しばらくの間は即身仏として祀られていたものが、なんらかのきっかけによって、仏像の中に隠されたのではないかとされていますが、即身仏の中にも肺があるはずの部分に「中国の文字が書かれた紙切れが詰められていた」とのことです。

仏像の中に収められるもの

分析したのが欧米人ですので、「紙切れ」という表現をしていますが、仏像や神像といった信仰の対象となる像の中に、像が造られた理由や、像を造ることによって叶えたい願いなどが書かれた「願文」が収められるというのは、比較的ポピュラーなことです。

こういった文章は「胎内文書」といわれており、願い事や制作者を示すだけでなく、「経典」を収めることでその経典がもっている力によって、より「仏像をパワーアップさせる」といったようなことも考えられていたようです。

他にも仏像には、さまざまなものが収められています。
2012年には滋賀県大津市にある「三井寺」が所蔵する「木造地蔵菩薩坐像」の頭部に、「折りたたまれた包み紙」があることがわかりました。
これはX線検査の結果わかったのですが、過去の文献によると、この仏像が作られた南北朝時代には、亡くなった人の耳の近くの鬢髪(びんぱつ)」と呼ばれる部分を、仏像に収めて奉納する習わしがあったことから、この包み紙には遺髪が包まれている可能性が高いとされています。

こちらは、仏像の力によって死後迷うことがないように、また像が、人々を地獄から救うといわれている、「地蔵菩薩」ということもあり、間違って地獄にいってしまっても、救い出して貰えるようにというような祈願が込められたものといえるでしょう。

仏像の中に仏像?

さらに、仏像の中にさらに仏像を収めるというケースもあります。
願文や髪の毛を収めるというのは、理由がわかりますが、仏像の中に仏像をいれるということには、あまり意味が見いだせません。

その理由は、現在でも定かでは無いのですが、いくつか有力といわれているものはあるようです。
まず、前述の即身仏のように、古くなった仏像を修復するのではなく「保護する意味で、同じ種類のより大きな仏像に収めた」というもの。
これは、内側の「胎内仏」と、外側の仏像である「鞘仏」の制作年代が違うことが多いことから、比較的有力なのではないかといわれています。

次に考えられるものとして、「人に見られないように隠した」というもの。
仏像には「秘仏」といって、人目に触れないように、通常はご開帳されず、隠されているものが多くあります。
これらの仏像は、「非常に強い力をもっている」ために、みだりに人目に触れさえないようにするという意味合いがあるようですが、仏像の中に収めることで、確実に見られなくすることができるわけです。
さらに、秘仏としての強力な力を鞘仏によってある程度マイルドにするという、スピリチュアルな意味合いも感じられます。

いかがだったでしょうか?

仏像というと、美術的な面ばかりが強調されがちですが、こういった隠された要素もまだまだ色々と存在しています。今後、仏像を眺めるときには、表面的な美しさだけでなく、その内部に込められた想いまでも感じ取ると色々と新しい発見があるかもしれませんよ。

What was hidden in the Buddha statue?
Spirituality of Buddha statue.

 

》前回の記事はこちら《