涅槃仏~寝ていても仏様は助けてくれる

このような仏像のことを「寝仏」「涅槃仏」などと呼んでいます。姿としては寝ているわけですが、実際には眠っているのではなく、釈迦が「入滅」した姿を現しているとされています。

【寝ている仏像 涅槃仏】

「仏様が横になって寝ている像」というものをご覧になったことがあるでしょうか? 日本ではあまりポピュラーではありませんが、タイでは仏像のモチーフとして比較的良く目にすることができるものです。

このような仏像のことを「寝仏」「涅槃仏」などと呼んでいます。姿としては寝ているわけですが、実際には眠っているのではなく、釈迦が「入滅」した姿を現しているとされています。

入滅とは、この世を去って仏の世界である「涅槃」に行くというようなものであり、つまり釈迦の「最も最後の姿」を現しているわけです。

 

【涅槃仏には2種類ある】

この最後の姿にも「2種類ある」とされています。

「目を開いているもの」は、入滅する前に最後の説法をしている、もしくは、悟りを得てから入滅するまでに、弟子たちに仏法を説いている姿だといわれています。「目を閉じているもの」は、こちらはそのまま入滅する様子なのだそうです。

 

【世界最大級の涅槃仏は全長46メートル】

ちなみに、世界最大級の涅槃仏があるお寺としてはタイにある「ワット・ポー」が有名です。

こちらの涅槃仏は、全長46メートル、高さ15メートルという巨大なものであり、全身が金箔で覆われていることから、なんともいえない迫力があります。ちなみに、目は開いているので、説法をしているところを表現しているようです。

こちらの涅槃仏はたんに拝むだけではなく、「お参りに来た人が自分自身の煩悩を消滅させるための、様々な仕掛け」が施されています。

 

【煩悩を捨てるためのアトラクション】

巨大な足の裏には、「涅槃図ともいわれる、108の絵」が描かれています。こちらは、幸運を呼ぶという絵なのですが、一説によると仏教やバラモン教の「宇宙観を表現している」ともいわれています。

さらに、背中側には、壺がおかれており、そこに「コインを入れることで煩悩を捨てる」ことが出来るとされているのです。このとき、壺の中にコインが落ちる音は、「お寺の鐘の音に似ている」とされていますので、ある意味個人で除夜の鐘をついているようなものかもしれません。

 

【日本にもある巨大な涅槃仏】

このように、涅槃仏は、煩悩を退けるための一種のアトラクションにも成っている感じがありますが、日本にもワット・ポーには劣るものの、全長41メートルの涅槃仏が存在しています。

福岡県にある「南蔵院」の涅槃仏は、「ブロンズ像としては世界最大級」とされています。こちらは目をつぶった状態ですので、入滅後の姿なのでしょう。

足の裏はタイのものとは違って、元々釈迦の足の裏にあったという模様が刻まれており、「体内巡り」ができるようになっています。中には、釈迦の骨が収められた「仏舎利」が安置されているということですので、入滅後の姿にはぴったりといえるでしょう。

 

【お告げで見つかった不思議な涅槃仏】

また、ちょっと変わった涅槃仏として、まるで本当に眠っているかのように「布団を掛けられている」ものも存在しています。京都にある「穴太寺」の涅槃仏は、布団をかぶれるだけあって、サイズはほぼ等身大と小さいものですが、「夢のお告げ」によって見つかったという不思議な由来を持っています。

大阪に住んでいた、とある人の夢の中に、寝姿の釈迦があらわれて、孫娘の病気平癒を手助けしてくれて、穴太寺にこもっていることを悟ったというのです。実際に寺中を探したところ、天井裏で眠っている仏像が発見されたというのです。この逸話もあって、こちらの涅槃仏は通常のものと違って、特に「病気平癒に御利益がある」とされています。

通常は「布団を掛けられて安置されている」のですが、参拝者は自由に布団をめくって、涅槃仏を撫でることができるようになっています。治したい身体の悪いところを撫でるといいということで、多くの人に撫でられたためか木製の像はつるつるに黒光りしているのです。

このように見てくると、一見するとゆったりと休んでいるように見える状態でも、仏様は私たちを常に助けてくれているのかもしれません。

 

Buddha statue lying.