フランスの空港や土手で活躍するエコ羊たち ~農薬を減らす試み~

いわゆるオーガニック化粧品には、有機栽培の植物原料から抽出された成分(オーガニック原料)が使われています。 私たちが数ある化粧品の中から、オーガニック化粧品を選ぶことは、有機農業の推進につながるわけです。 そして、農薬を極力使わない農業を広めることは、地球環境の保護につながります。

私は、フランスのオーガニックスキンケアブランド「ドンキーズ&co.」やオーガニック精油ブランド 「Finessence(フィニサンス)」を輸入販売しています。そのため、オーガニック製品や有機農産物、そして 環境保護の取り組みに関心があり、常にアンテナを張り巡らせています。

最近、フランスで行なわれている農薬を減らす取り組みとして「これはすごい!」と思ったのが、除草剤を 散布するかわりに、羊を放牧して雑草を食べてもらうというもの。

今回は、「フランスの空港や土手で活躍するエコ羊たち」と題してレポートをお届けします。

 

空港周辺の土手に羊を放牧

フランスでは農地と隣接する学校が多いのですが、生徒の毛髪を分析したところ、農薬が検出されたというニュースがテレビ(France 2)で報道されていました。日本でも無農薬栽培の取り組みが地道に行なわれているようです。
近年では「奇跡のリンゴ」のように、リンゴの無農薬栽培の試みが話題になりましたね。

さて、フランスのシャルル・ド・ゴール空港周辺と空港を結ぶ鉄道には土手があります。自然があるということは、草刈りというメンテナンスが不可欠です。さて、ここでは除草のための薬剤散布のかわりに、羊を放牧して雑草を食べてもらうというユニークな取り組みが行なわれています。

該当する地域は、ヨーロッパ最大の国際ハブ空港シャルル・ド・ゴールと、パリ郊外イシー=レ=ムリノー(ISSY-LES-MOULINEAUX)市です。
イシー市は、IT分野などのグローバル企業の誘致に力を入れており、ハイテク企業が多いことで知られています。最先端をいく企業が多いこの市で、羊の放牧による除草が行なわれるのは、きわめて対照的な光景です。このユニークでエコな取り組みには、人々を癒す効果もあるようです。

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初めてエコ羊を目撃

2010年9月、郊外鉄道RERのC線(パリ、ヴェルサイユ方面)の土手で、羊8匹とヤギ2匹の放牧が行なわれました。
観光でヴェルサイユ宮殿に電車で行く方は、Issy Val de Seine 駅とIssy駅間の土手にご注目ください。

土手の斜面(かなり急です)に黒っぽい動物が見えます。
私は初めて目撃したとき、「黒豚がいる!?」とわが目を疑いました。よく見ると黒い羊でした。

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2014年夏、シャルル・ド・ゴール空港のターミナル2を急いで歩いているとき、ふと窓の外に視線を落とすと、モン・サン=ミシェルで良く見かける顔の黒い羊が優雅に草を食べているではないですか!

「これは一体何?」

このように、数年前から羊の存在を不思議に思っていましたが、今回調査のため現場に行ってみました。

実際の現場では、
Issy地区のエコ羊は日曜日の午後、沢山の人々に見守られていました。子どもたちが羊に「メー」と言ってごらんと呼びかけても、羊はわき目もふらず草を食べることに専念。ミニ動物園のようで、子どもだけでなく大人も羊に癒されています。

 

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羊の体長は約40cm、体重は約40kg。
角があるのが1匹いますが、これは雄のようです。合計8匹の羊が放牧されています。種はブルターニュ産の保護種です。この取り組みは、「羊の保護」「除草剤を使わないことによる環境保全」「人々への癒し」という3つの効果をもたらしています。

フェンスに囲まれた全長800mの斜面には、草刈機を入れることができません。急斜面に放牧された羊たちは、毎日元気に草を食べています。

 

空港の羊たち

シャルル・ド・ゴールのような大きな空港では、毎年110トンものグリーン廃棄物(枯葉や小枝が堆積したもの)が出るそうです。これを処理する目的で、ここでもブルターニュ種の羊、ヤギのほか、キツネから羊たちを守るためにロバが放牧されています。ロバもかなりの雑草を食べてくれます。

私は以前、「ドンキーズ&co.」の仕事でロバ牧場に行き、牧場主のパトリックさんに会いました。そのとき、彼が語ったことを思い出しました。「ロバは一時忘れ去れていたが、現在では、トラクターが入らないような狭い畑を耕すには、ロバが見直されているんだよ。」と。

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観光でフランスを訪れたとき、空港で羊が皆さんをお迎えしてくれるかもしれません。
私たちは自然回帰をしているようです。

 

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■Bernard France Service
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