さて、これまでの経過で、過度に処理された加工食品をできるだけさけ、小麦を食べる場合は本来の形が残り自然な方法で作られたものがヘルシーで、インドで伝統的に食べられてきた家庭パン・チャパティは、理想的な食べ方のひとつということでご紹介してきました。
じゃあチャパティならいくら食べても大丈夫なのか、というと、実はそうともいえないのです。今回は、そのあたりのこともふまえ、小麦というのはそもそもどんな穀物なのかというところまで少し遡りながら、お伝えしてみたいと思います。
★そもそも小麦は、一年中食べるような類いの穀物ではない?
私たちが現在食べている小麦は、もともとは野生種を食べやすくなるように雑種交配されたもので、この技術のおかげで今や小麦は、一年に複数回、収穫されることができるようになりました。
小麦は今やアメリカやヨーロッパにおいて主要な穀物となり、現代ではほとんどのアメリカ人が一日3回、365日、生涯にわたって食べ続けています。
一方、雑種交配される以前の小麦は一年に一回、秋にしか収穫されず、収穫の秋と冬の限定穀物でした。そもそも長期間の保管がきかないことから、今日のように一年を通じていつでも食べられる類いのものではありませんでした。(小麦がヨーロッパ全域で栽培されるようになった理由のひとつは、とても丈夫でより寒い気候でも元気よく育つ植物だったためといわれています)
自然界というのは本当によく出来ているもので、ある特定の時期にのみ収穫される旬の食べ物というのは、人間がその季節を健康的に過ごせるように、その季節に必要とされる栄養分を供給してくれる、ありがたい食べ物でもあります。(このため、アーユルヴェーダでは、一年を通じて旬の季節の野菜や果物をその時期にたっぷり食べることをすすめています)
小麦もその例にもれず、小麦に含まれるタンパク質グルテンには、私たちを秋や冬の寒さや乾燥から守ってくれるような温め効果、どっしりとして消化に重い性質、断熱性、湿り気と粘着性があり、私たちがこの極端な季節の変わり目の衝撃を緩和するための、断熱材のような食べ物なのです。
また、グルテンのこういった質ゆえに、過剰に食べ過ぎれば、脂肪生成をもたらす(つまり太る!)食べ物でもあったことから、もともとは寒い季節限定でしか食べられていませんでした。
アーユルヴェーダによれば、冬は私たちの消化力が他の季節よりもはるかに強くなる季節。
「食欲の秋」ともよくいわれるように、秋や冬は確かにおいしいものがたっぷりと食べられる季節ですが、消化力が最高に高まる冬に、消化が重い小麦を食べることは、こういった面からも理にかなっていたのですね。
さて。本来なら秋や冬にのみ食べられることでその健康効果の恩恵を私たちに授けてくれた小麦。
雑種交配により一年に数回収穫されるようになり、小麦を食べる頻度や量は、昔に比べてかなり増え、
消化器官がチームを組んで挑まなければ決して消化ができないような消化困難なグルテンを含む小麦を、まさにもうこれでもかというほど毎日食べられている現代。
この小麦の食べ過ぎ傾向も、現代の小麦アレルギーという問題を引き起こすことになった原因のひとつとして考えられています。
★日本ではありえないような太り方をしている人たちが多いインド:
グルテンは過剰に食べ過ぎれば、脂肪生成をもたらすことについて触れましたが、それなら、毎日チャパティを食べているインドの人たちはどうでしょう。
インドでは、日本人ではまずありえないような太り方をしている人たちが普通にざらにいます。
これは、「チャパティ太り」とも呼ばれている太り方で、男性では20代後半ぐらいからすでにビール腹に近い「お腹ボッコリ」的な太り方の人も多く、特にお金持ちの家庭で生まれ育った人たちに多い印象でした。
インドのすごいところは、太っていることを、誰も特に気にとめていないこと。
インドでは太っていることはある意味「豊かさの象徴」なのです。逆に痩せていることは「貧しさの象徴」であり、太っていることがひとつの美徳です。
つまり、先進国にありがちな「痩せているほうがキレイ」といった美意識はインドには存在しません。(ボリウッドのムービースターで痩せている人はほとんどいません。特に女性は皆、むっちりぽっちゃりです)
インドでは、太っていることは、美しいことなのです。
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というわけで、小麦はそもそも一年中、毎日食べるような穀物ではないことをお伝えしましたが、小麦だけ、あるいはグルテンフリーだけ、と偏らず、さまざまな穀物をバランスよく食べる。これが理想的な食べ方といえるのではないかと思います。
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