アーユルヴェーダと大豆〈2〉~アーユルヴェーダの伝統的な食事には大豆が含まれていないのはなぜ?~インド生活『村上アニーシャのアーユルヴェーダ』vol.81

私たちがよく食べる納豆は、中国の明王朝(1368年~1644年)の間に作る方法が発見され、たくさんの病気を治癒する栄養豊かな薬として、漢方の医薬品とされた食品だったのです。

~大豆を安全な食べ物に変える魔法「発酵」~

インド暮らしをはじめた当初は、日本食とは言えないまでも、チリの入っている量も少なく、日本料理にちょっと似ている味付けでホッとするチャイニーズ料理のレストラン(といっても、味付けはどうしても濃い目で油どっさりなインディアンチャイニーズ)があったので、よく通ったものでしたが、

豆腐の入った料理を注文するとまるで当たり前のように、日にちが経ったやや酸っぱめの豆腐が普通に使われて目の前に出てきたものでした。

子どもの頃から豆腐や納豆といった大豆製品に親しんで育ってきた日本人の私には、日本だったらもう捨ててしまってもおかしくないレベルの酸っぱい豆腐が出てくるたびに、

「インド人て、豆腐の賞味期限全然わかってないよね」と思い、

豆腐だけをわきによけて食べたものでした……。

今思えば、実はこの古くなって酸っぱくなった豆腐は、案外悪い食べ物でもなかったかもしれないことが、大豆のことを知るにつれ、わかってきました……。

(インドで食べるチャイニーズ料理のトウフはなぜかいつも酸っぱめ。)

 

■大豆のメリットとデメリット

インドはそもそも、豆類がとても豊富なことと、アーユルヴェーダの世界では発酵食品があまり奨励されないことから、大豆が日々の食卓を彩る食べ物としてはほぼ注目を浴びてこなかったことは、前回お伝えしましたが、

いくつかの貧しい国では、大豆は貴重なタンパク質源として、ほどほどに成功してきました。
つまり、大豆が本来もっている栄養分そのものは、とても豊富であることがわかります。

一体、いいのか悪いのかよくわからない、ある意味ミステリアスな食べ物、大豆。

中国の古代文献では、伝統的に大豆は、アーユルヴェーダの見解と同様に、人間が消費するには不適当なものと考えられ、その理由は、大豆には、豊富な栄養分とともに、他に類をみないほどの特定の毒性反栄養素(アンチニュートリエント)が含まれているためです。

この成分は今や、乳がん、甲状腺疾患、生殖能力に関連する病気とも繋がっているとされる他、酷いアレルギーの数々や免疫虚弱、脳障害との関連が認められています。

 

《アンチニュートリエントってどんな成分?》

たくさんの植物には、昆虫や動物から食べられないようにするための自然の知恵が備わっています。
それがこのアンチニュートリエントという成分です。
考えてみれば、栄養が豊かな豆類というのは、虫たちにとっては、ごちそうのようなもの。
このため、特に豆類がサバイバルのために身につけていった進化プロセスのひとつが、このアンチニュートリエントなわけですね。

大豆に限らず、豆類は一般的に、消化が重い食べ物に分類されています。

大豆のアンチニュートリエントが他の豆類と違ってユニークなところは、他のほとんどの豆類は、洗い落としたり調理することで取り除くことができるのに対し、大豆の場合は取り除けないところです。

特に厄介なものは、フィチン酸塩と呼ばれるもので、この成分はなんと、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、鉄分、銅のようなミネラルを磁石のようにくっつけて、体から奪う可能性があり、その結果、体がミネラル欠乏になってしまうリスクがあります。(普段から豆乳や豆腐をたくさん食べている人は要注意!)

また、個人差はあるものの、大豆に含まれるゲニステイン(植物性エストロゲン)とダイゼインは、甲状腺ホルモン統合に関連する酵素を抑制するため、甲状腺機能を抑制するかもしれないこと、また、肝臓機能、生殖ホルモン、生殖能力を損なうことが報告されています。

 

■大豆における古代の解決策 ~発酵~

(納豆は古代漢方薬だった!)

中国では、大豆は発酵できることが発見され、それとともに大豆の評判は回復するという変化がありました。
一方、発酵されていない大豆は、未だにさけられるべき食品として扱われているとのことです。

大豆の発酵プロセスは、大豆の毒性抗栄養素を取り除くために重要なプロセスで、実際、発酵させることで驚くべき健康効果が解き放たれました。

私たちがよく食べる納豆は、中国の明王朝(1368年~1644年)の間に作る方法が発見され、たくさんの病気を治癒する栄養豊かな薬として、漢方の医薬品とされた食品だったのです。

そして現代、専門家たちの多くが、発酵を大豆の中にある危険な反栄養素を中和するたったひとつの方法と見なし、発酵させた大豆を、食べ物としてというよりも、薬として優れたものとして分類しています。

☆次回は、「大豆製品を食べる時のコツ」についてお伝えしたいと思います。

 

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