アーユルヴェーダと大豆〈1〉~アーユルヴェーダの伝統的な食事には大豆が含まれていないのはなぜ?~インド生活『村上アニーシャのアーユルヴェーダ』vol.80

一般的に、大豆は豆というよりも、ナッツのような働きがあり、ヴァータを緩和すると信じられているものの、大豆独特の消化困難な質と、いくらかのラジャス質(刺激性の質)を持つために、大豆が薬として使われることはめったにないとされています。

インドは、世界的に有名な菜食大国。

豆の種類がとても豊富で、肉や魚を食べなくても十分に満足感が得られるベジタリアン料理がたくさんあるので、インドである一定期間暮らしていると、肉や魚を食べることをすっかり忘れてしまうほどです。

そして、インドではじめて出会った数々の豆類を一通り食べてみた後に、自分の育った国の食べ物が恋しくなり、自然に手を伸ばしたくなるものが、大豆。

私がインド生活をしていた当時は、日本の味が恋しくなった時はいつでも、当時唯一手に入る日本食材の調味料として貴重だった、シンガポール製のキッコーマン醤油をいかに有効に、クリエイティブに使いこなすかがポイントで、日本の味を再現できる食材として、大豆そのものをよく活用したものでした。(茹でた大豆を潰してハンバーグにしてみたり、あるいは塩ゆでしたものをそのままおやつにしたり……)

そんなベジタリアンライフを送っていたところ、ふと、インドの人たちは大豆をあまり、というかほとんど食べない人もいることに、ある時気づきました。

インドの家庭で家庭料理をご馳走になっても、あるいはレストランにいっても、大豆を使った料理が目の前に現れることはなく、メニューにのっていることもありませんでした。(少なくとも私は一度も見たことがありません)

(インド料理メニューイメージ)

インドにはさまざまな豆類が豊富にあるので、大豆は目立たないのだろうか……ぐらいに当時は思っていたのですが、後に、どうやらアーユルヴェーダでは、大豆はあまり奨励されている食べ物ではなく、アーユルヴェーダの伝統的な食事法の中に含まれたことは一度もないということがわかってきました。そして実際、何人かのアーユルヴェーダの専門家たちは、頑なに大豆を「消化の悪い食べ物」として反対してさえいることもわかってきました。

子どもの頃から豆腐や納豆、味噌汁に親しんで育ってきた私のような日本人にとっては、大豆製品はある意味ソウルフード。

が、アーユルヴェーダでは、ほとんど推奨されていない。
これは一体どういうことなのでしょうか……。

というわけで、今回から数回に渡り、大豆についてのお話をご紹介していきたいと思います。

 

■アーユルヴェーダの見解
~消化が困難なタンパク質・大豆は食事に不適切?~

アーユルヴェーダによれば、大豆はとても消化が困難なタンパク質であり、伝統的な食事法の中に含まれたことは今まで一度もなく、それどころか、大豆には「反栄養素」が含まれると考えられ、危険物としての悪評すらあります。

また、大豆はエネルギー的に、マインド重たく鈍くする食べ物と考えられています。

一般的に、大豆は豆というよりも、ナッツのような働きがあり、ヴァータを緩和すると信じられているものの、大豆独特の消化困難な質と、いくらかのラジャス質(刺激性の質)を持つために、大豆が薬として使われることはめったにないとされています。

(日本人のソウルフード「豆腐入り味噌汁」)

興味深いことに、発酵食品もまた、アーユルヴェーダでは好まれる食品ではないことから(発酵食品はマインドを鈍くする質・タマス質の食べ物と考えられています)、大豆を発酵させた食品・味噌や納豆も、アーユルヴェーダでは使われていません。

このため、納豆のような発酵大豆食品の医療効果は、アーユルヴェーダではほとんど知られていないというわけです。

これが、アーユルヴェーダでは大豆が奨励されない理由となっているようです。

《次回に続く》

 

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