アーユルヴェーダで使われてきたハーブたち~霊的修行中の人は食べちゃダメ? ニンニクの話《前編》~インド生活『村上アニーシャのアーユルヴェーダ』vol.75

ニンニクや玉ねぎ類は、ラジャス質とタマス質に分類される食べ物とされ、中枢神経を刺激し、意識をより、精神性よりも物質である体の方へしっかりと根付かせる効果があり、興奮、不安、攻撃性、性的欲求の増加を誘発します。このため、瞑想や献身に有害なものとして、ヨガの世界では歓迎されない食べ物として扱われています。

さて今回は、パスタ類やインド料理に欠かせないスパイスのひとつ、ニンニクについてのお話です。
前編と後編に分けてお伝えしたいと思います。

ところでインドの人たちは、カレーという食文化ゆえに、ニンニク、玉ねぎ、ショウガ、ターメリック、チリを日常的によく食べます。
これらのスパイスはカレーには欠かせないスパイス類であることことから、ほとんど毎日、1、2回は普通に食べています。
(インドの人たちの体臭がきつい主な理由がこれです)

特にニンニクや玉ねぎは、おいしいカレーの風味づくりには欠かせない必須スパイス。
インドのほとんどの家庭のキッチンには、ある程度まとまった量のニンニクや玉ねぎが常にキープされてあるのが普通です。

さて、このニンニクと玉ねぎのセットですが、インド生活をしていた中で、たまに聞こえてくる声がありました。
それは、「ニンニクと玉ねぎは食べるべきではない」というもの。

ニンニクや玉ねぎはいわば、肉も魚も一切入っていない地味なベジタリアン料理を風味豊かにし、食欲を増進させてくれるもの。

この二つのスパイスさえも使ってはいけない。
というのは、一体どういうことなのでしょうか?

 

■ニンニクと玉ねぎは霊的修行の妨げになる食べ物?

・三つの質、「サットヴァ質」「ラジャス質」「タマス質」について

サットヴァ、ラジャス、タマスは、私たちのマインドやエネルギーの状態を表す質のことで、私たちが日々食べている食べ物も、これらの質に分類することができます。

これらの三つの質はどれも、私たちの生の中に多かれ少なかれ必要な質とされているものですが、バランスを保つ必要がある質でもあります。
では、それぞれの質について詳しく見てみましょう。

(食欲一気に増進! インドのガーリックピクルス)

 

◎『サットヴァ』

サットヴァは、私たちに好奇心を起こさせ、思慮深さ、注意深さなどをもたらす質で、マインドと体をなだめ、リフレッシュさせる質です。
心のエネルギーが高まり、明るく、静かで明快さをもたらします。
サットヴァ質の食べ物をより多く食べることで、これらの性質の具現化が促進されます。
サットヴァ質は、私たちのマインドや体にいくらありすぎても全く欠点になることはない、あればあるほどいい質といわれています。

《サットヴァ質の代表的な食べ物》:

新鮮な野菜、新鮮で熟したジューシーな果物、料理したての穀物類や豆類、しぼりたての牛乳やできたて新鮮ヨーグルト、ナッツ類とシード類、自然の冷搾オイル類、ギーなど。サットヴァ質の食事によく使われるスパイス例は、ターメリック、ジンジャー、シナモン、コリアンダー、カルダモン、フェンネルなど。

 

◎『ラジャス』

ラジャスは、私たちに活力を与え、精神的な刺激によって活性化させ、仕事への熱意や欲求を高め、物事をはっきりとさせる質です。
ラジャス質が過剰になると、人を内向き、他者向きの両方にさせ、過度に競争的にするといわれています。
ラジャス質のエネルギーを持つ食べ物は、私たちの中の火の質(内なるドラゴン)、攻撃性、情熱を刺激します。
一般的にラジャス質の食べ物を多く食べ過ぎると、明晰な脳や霊的な静けさから遠く離れ、私たちのエネルギーをより感情的、予測不可能、そして激しいものにします。

《ラジャス質の代表的な食べ物》:

肉、魚、卵、鶏肉、全粒豆類、辛いスパイス類、ナス、にんじん、玉ねぎ類、ニンニク、レモン、紅茶、コーヒー、タバコ、発酵食品、酸味のきついもの、刺激性のあるもの、辛いものなど。

 

◎『タマス』

タマスのエネルギーは私たちに、立ち止まり、スピードを落とし、休むための欲望をもたらします。
過剰なタマス質は、私たちをテレビの前に座って動かないようにし、内なる闇や混乱を増大させ、無気力、不活発、精神的な行き詰まり、鬱、無知、自己コントロールの不在状態、深刻な怒りを引き起こします。

《タマス質の代表的な食べ物》:

ファーストフード、油で揚げた食べ物、冷凍食品類、レンジでチンの食品類、加工食品類、調味料、作ってから何日もたった残りもの、アルコール、化学薬品類、玉ねぎ類、きのこ類、マーガリン、古く腐って酸化した食べ物など。
これらの食品は、体、心、魂にとても有害であると考えられています。

(あつあつガーリック・ナンは最高)

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ニンニクや玉ねぎ類は、ラジャス質とタマス質に分類される食べ物とされ、中枢神経を刺激し、意識をより、精神性よりも物質である体の方へしっかりと根付かせる効果があり、興奮、不安、攻撃性、性的欲求の増加を誘発します。
このため、瞑想や献身に有害なものとして、ヨガの世界では歓迎されない食べ物として扱われています。

一方、アーユルヴェーダでは(アーユルヴェーダとヨガは姉妹の科学で、似ている部分がたくさんありますが、異なる原理で成り立っている別々の科学です)、ニンニクは食べ物というよりも薬として見られ、古代アーユルヴェーダの教典の中で、ニンニクを避けるべきものとして叙述されたことは一度もないといわれています。

次回・後編では、「アーユルヴェーダにおける薬としてのニンニク」、そして、「ニンニクをサットヴァ質に変える方法」をご紹介したいと思います。

 

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(トップ画像/ニンニク、玉ねぎはインド料理に欠かせない)