前回では、秋はもともとの体質を問わず、どんな人でも生理機能上のヴァータが悪化しやすくなる時期(実際には秋から冬にかけての期間がヴァータ優勢の季節になります)で、この時期にヴァータのバランスを心がけることが健康を維持するための秘訣ということでお伝えしましたが、後半の今回は、アーユルヴェーダにおいて具体的にすすめられている食事やライフスタイルについてご紹介したいと思います。
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ところでその前に、現時点でのヴァータアンバランスをチェックしてみましょう。
次の項目に、イエス、ノーで答えてみてください。
*心配事や不安がひっきりなしにあり、機嫌が悪いことが多い。
*疲れているのに、リラックスすることが難しい。
*夜、質のいい眠りを得づらい。
*肌が普段とくらべて乾燥し、カサカサしている。
*髪に枝毛ができやすくなった。
*唇が割れ、喉がひっきりなしによく渇く。
*消化力がまばらで、胃腸にガスがよくたまる。
*じっと座ることができず、いつも動いていたい衝動にかられる。
*ボーッと物思いにふけっていることがよくある。
*物事を長い期間に渡って覚えておくことができない。
*注意力が散漫になりがち。
*集中力に乏しい。
*便通が一日1回以下のことがよくある。
さて、イエスだった項目はどのくらいありましたか?
ついでに、ちょっと鏡を取り出して、舌の状態をチェックしてみましょう。
以下のサインが見られますか?
*舌の上に小さなひび割れがある
*舌が乾燥し、浅黒い色をしている
*舌の奥の左右に小さくもりあがった粒がある
*舌の後方全体に膜ができている
*舌の上に小さな黒い吹き出物がある
……上記はすべて、アーユルヴェーダにおいてヴァータがアンバランス状態であることを示したサインです。たくさんイエスと答えた人は、残念ながら、現在すでにヴァータが乱れ気味の状態です……。
特に、舌表面にいつも小さなひび割れのようなものがたくさんある場合は、慢性的なヴァータアンバランスがある可能性が大です。
上記のサインがあった方は特に、この秋から冬は、念入りなヴァータケアがおすすめです。
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■食事のコツ
寒い気候のバランスをとるために、水分たっぷりでヌルヌルこってり系のものを、毎日食事の中に含めます。そして、栄養がたっぷりある「重たい」食べ物をいくつか入れましょう。高たんぱく質、高脂肪、油っぽいこってりしたものは滋養を与えます。
また、ヴァータの粗雑さを相殺する滑らかな質の食べ物を食べましょう。温かいもの、熱いものは、ヴァータの冷たい質のバランスをとり、体の内側に潤いを保ち、地に足をつかせる効果があります。
ヴァータのバランスを助ける三つの味は、「甘味」「酸味」「塩味」。これらの味を日々の食事の中に、いつもより多く加えてください。
ナッツ類は、すばらしいヴァータ緩和剤です。例えば、毎晩10粒のアーモンドを一晩水に浸し、翌朝に皮を剥いて食べると、そのまま食べるよりも消化が良くなります。
野菜で特によいのは、ニンジン、アスパラ、柔らかい緑色葉野菜、ビーツ(砂糖大根)、さつまいも、ズッキーニなどです。
こういった野菜類をヴァータ緩和スパイス(ターメリック、クミン、コリアンダー、乾燥ショウガ、黒コショウ、など)と一緒に組み合わせましょう。単品でスパイスを揃えるのが面倒な時は、はじめからミックスされた状態のガラムマサラがおすすめです。
一方、ファットフリーの食品、クラッカー、生野菜サラダ、冷たいシリアル類のような乾燥した食べ物は最小限に抑えます。そして、「苦味」「渋味」は少なくします。
一日を通じて、たくさんの常温水(またはお湯)を飲んでください。
★食べ物リスト
*果物例:
梨、柿、リンゴ(調理したもの)、アボカド、バナナ、デイツ、イチジク、グレープフルーツ、ブドウ、レモン、マンゴー、オレンジ、レーズン(水にふやかして戻したもの)
*野菜例:
ビーツ(砂糖大根)、カブ、ニンジン、唐辛子類、にんにく、オクラ、玉ねぎ、カボチャ、さつまいも、レンコン、セロリ、椎茸
*豆類:
味噌、緑豆(ムング豆)
*ナッツと種:
どんなナッツ&種類もOK。水に浸してふやかし、皮をむいて食べるとさらに効果的。
*乳製品:
バター、チーズ、生クリーム、ギー、乳清、牛乳(温めたもの)、サワークリーム、ヨーグルト
*動物性タンパク質:
牛肉、鶏肉、蟹、アヒル、卵類、魚、牡蠣、海老など
*オイル類:
ギー、オリーブオイル、ごま油、ピーナッツオイル、アーモンドオイル
*スパイス類:
あらゆるスパイス類。特にショウガ、ターメリック、サフラン、カルダモン、クミン、フェンネルなど
■ライフスタイル
ヴァータの質は、「落ち着きのなさ」「絶え間ない動き」「不規則」といった特徴があるので、これを相殺するために効果的なものが「規則的な日課を続ける」ことです。
起きる時間と寝る時間を毎日だいたい同じ時間にし、一日三食を、ほぼ同じ時間にとり、毎日似たようなパターンの仕事に従って、その日のうちにしっかり休養します。
また、忙しさのあまり食事を抜いてしまうことは厳禁です。栄養たっぷりの食事を昼間のうちにとり、朝食と夕食は軽いものにしましょう。
美容面では、この時期に限っては、乾燥肌を手厚くもてなし、甘やかすぐらいがちょうどいいので、たっぷりのオイルを使って全身をケアしましょう。こうすることで、血液循環が促進し、滋養を与え、筋肉と神経を強化できます。特にすすめられるオイルは、体を滋養し神経系を落ち着かせる効果がバツグンのセサミオイル。アーユルヴェーダにおいてセサミオイルは、何千年もの間、ほとんど薬として扱われてきた伝統的な滋養オイルです。
また、この時期の運動は、散歩、ハイキング、ヨガ、気功など、ゆったりとして穏やかな形態のものが理想的です。
そして寝る時間になったら、ラベンダーのようなヴァータを緩和する香りを寝室にスプレーし、香りに包まれながら、深呼吸を数分し、ぐるぐるまわる思考をそっと手放し、静かな自然のイメージ(例えば雪に覆われた山、雲のない青空、しとしと降る静かな雨など)を脳裏に描きながら眠りましょう。
《村上アニーシャ さんの記事一覧はこちら》
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