■減塩しすぎると心臓や血圧に悪い?~『アーユルヴェーダにおける、塩のお話〈2〉』 〜インド生活『村上アニーシャのアーユルヴェーダ』VOL.46

塩味はピッタとカファを高める効果があり、ヴァータ質を解放するため、ヴァータのアンバランスを中和する、重要な薬のひとつです。

今回も前回に引き続き、塩のお話です。

ここのところ30年ぐらいは、「塩分の摂り過ぎは心臓関連の疾患や高血圧の原因となる」といった見方が一般的に定着し、日本のスーパーでは、「減塩醤油」が棚に並び、「健康のためには減塩」的な雰囲気があります。

ところが最近になり、塩をとり過ぎることが心臓発作や高血圧へのリスクに繋がり死に至るという根拠が確認されていないどころか、「減塩しすぎると逆に心臓や血圧に悪い」という報告までなされるようになりました。

その研究報告によれば、「一日、最大14gの塩を食べる人たちは、一日7g以下を食べる人たちよりも、血圧が低く安定していた」とのことです。

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インドで生活していた頃、インドの人たちと接していて気づいたことは、彼らにはそもそも「減塩する」という発想自体がないということ。(当時のアヤさんが作ってくれる食事はほぼすべて塩辛すぎたので、塩を減らすように毎回頼まないといけませんでした)

インドの人たちはバリバリ塩辛いものを普段から食べていますが、心臓疾患になるどころか心臓に毛が生えているに違いないと思えるほど、心臓が丈夫そうに見えました。

そんな塩の効能を証明するかのように、アーユルヴェーダでもまた、塩味を「人間の生に必要な基本の味のひとつ」とみなし、塩に対する反感はほぼ存在しません。

塩味は成長に不可欠なものであり、体の水分電解バランスの維持や、適切な消化や吸収、そして排泄のために、なくてはならないものと考えられています。

健康維持のために不可欠な塩を、減らしたり完全にカットしてしまうことは、正しい方法ではないと教えています。

 

■塩は冬の健康維持に必要なひとつの薬

塩は冬の健康維持食品

 

アーユルヴェーダによれば、塩は、

*体を温める
*神経系を落ち着かせる

という、主に二つの効果があります。

このため、特に冬のような寒い季節には、健康を維持するための重要な食べ物とされています。

冬はアーユルヴェーダでいうところの「ヴァータの季節」(ヴァータが優勢になる季節)。ヴァータは、体の神経系、動き、冷たさといった質を支配する原理を現し、伝統的に塩は、冬の時期に特にたくさん食べられてきました。

塩味はピッタとカファを高める効果があり、ヴァータ質を解放するため、ヴァータのアンバランスを中和する、重要な薬のひとつです。

 

■他、塩のさまざまな効果

塩味はまた、刺激性の味、酸味と同様に、ラジャス的(刺激剤、炎症性)な質があり、知覚を活性化し、マインドを外交的にします。

また、食欲を刺激し、消化を高め、自然の毒の消化を助け、関節を柔軟にし、食べ物の質を鋭くします。

体の微妙な経路を開かせ、神経と感情を落ち着かせる効果があるといわれています。

 
★禁煙したい時の家庭薬としての塩
塩は、禁煙したいときのひとつの家庭薬にもなります。シンプルですが効果的な方法です。

喫煙したい衝動にかられたら、すぐに何か塩味のものを食べるか、岩塩のような自然の塩を少量、舌の先につけて舐めます。

……すると、タバコへの渇望が消えてなくなります。これを日々、まめに繰り返すことができれば、ニコチン中毒から解放される日も近いかもしれません。

 

■塩をとり過ぎると……

加工食品は塩分たっぷり

 

塩は体にとって必須の食べ物ですが、塩のとり過ぎは、お肌のシワ、喉の異常な乾き、虚弱の原因となることがあります。また、塩味と酸味は、血液を熱くする効果があり、ピッタや感情を悪化させます。

また、加工食品には、保存料として大量の精製塩が使われているので、日常的に加工食品をとることが多い場合、知らず知らずのうちに塩分摂取過多になっていることがあります。

次回では、食卓塩など精製された塩や、それらがたっぷりと含まれた、保存がきく加工食品が体に与える影響について、お伝えしたいと思います。

 

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