アーユルヴェーダで使われる、奇妙なモノ ~ 蛭(ヒル)~ 病気になるかならないかは、自分次第? 〜インド生活『村上アニーシャのアーユルヴェーダ』Vol.30

血液はそもそも、普段食べているものから作り上げられるので、普段どんなものを食べているかが、とても大切になってきます。

今回は、アーユルヴェーダにおいて、血液浄化治療に使われてきた奇妙なもの、ヒルについてお伝えしたいと思います。

美容的な面において、肌がきれいかそうでないかということは、外見的に大きな影響をもたらす部分ですが、アーユルヴェーダによれば、肌は血液の派生物として考えられ、その人の血と血漿の状態と質を映し出す鏡とみなしています。

きれいな血は、肌に反映されるのですね。つまり、肌の血色がよくきれいなら、血がきれいで健康的な状態ということになります。
こうした肌は実際、メークなしでも十分に魅力的に見えます。

血液はそもそも、普段食べているものから作り上げられるので、普段どんなものを食べているかが、とても大切になってきます。

では、肌に何かしらのトラブルがある場合、何が起こっているのでしょうか。

きれいな肌はきれいな血から

 

アーユルヴェーダでは、肌の病気は本質的に、ピッタやカファドーシャを機能障害に導く、怠惰な肝臓機能が原因と説明しています。

肝臓がよく機能していないがために、腸管の中にある毒素できあがり、それが血液の中に吸収され、体中を循環することで、何度も同じような症状が肌に現れる原因となり、そこで、薬の内服と毒素の排泄、そして血液浄化の必要性が出てきます。

その治療法のひとつとして、インドでは何千年もの間実践されてきた治療法のひとつが、ラクタモクシャナという、吸血動物・ヒルを使った瀉血治療です。

瀉血は、簡単にいうと、体の血液を抜くことで症状の改善をはかろうとする治療法の一つで、アーユルヴェーダのラクタモクシャナは、汚染された血液を体から吸い上げるために、毒性のない(または毒抜きした)ヒルを肌の上に引っ付けるというもの。

古代インドの治療イメージ

 

ヒルに、体の中の汚れた血を吸い取とらせることで、アトピー性皮膚炎をはじめ、さまざまな病気を治療する有効な方法とされています。

具体的には、ヒルを置く肌の部分に、乾燥した粉をこすりつけ、汚染された血液を吸わせます。(もし、つけた場所が痛くなったりかゆみが出る場合は、きれいな血を吸ってしまっている可能性があるので、場所を移動させる必要があり、なかなか肌から離れないようならターメリックをふりかけて、ヒルを引き剥がすのだそうです)

……聞いただけでもゾゾっとするような治療法ですが。

この治療では、
アトピー性皮膚炎、乾癬、脱毛症、治りにくい潰瘍、フィラリア、うみ、痔、皮膚病、喉の病気、目の病気、腫瘍、動脈硬化症、頭痛、歯の病気、中毒、ヘルペス、血栓症、骨関節炎、坐骨神経痛など、たくさんの病気の治癒に効果があり、一般的にピッタ関連の病気、血液の病気に用いられ、病気の過酷な痛みや苦しみの根源を処置する方法として使われてきました。

アーユルヴェーダのように、ヒルを使わないとしても、瀉血という治療自体は、西洋医学でもさかんに行われてきた療法で、その多大な治癒効果ゆえに、血を抜くこと以外はほとんど何もしない医者もいたそうです。

現在ではこのラクタモクシャナは、科学の進歩により、わざわざヒルを使わなくても同じ効果が得られる方法があるので、ほとんど実践されていないとのことです。

 

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