■味の効用part.4 ヴィルヤ(効力)について ~ インド生活『村上アニーシャのアーユルヴェーダ』vol.120

さて、今回も引き続き、味の効果を知る上で知っておくと便利な4つの専門用語のふたつめ、「ヴィルヤ」についてお伝えしたいと思います。

★ヴィルヤ(効力)について★

私たちが何かを食べ、それを消化するとき、その食べ物は体全体を熱くしたり、冷たくします。
この効果を、アーユルヴェーダでは「ヴィルヤ」と呼んでいます。

このヴィルヤは、「食べ物の持つ力」ということもできます。

このように食べ物は、代謝を熱くするか、または冷やします。
これは私たちが注意深く自分の体やマインドを観察することで十分に気づくことができる効果です。

ヴィルヤはまた、その食べ物が、私たちの消化力を焚きつける効果があるのか、それとも冷やして消してしまうのか。
消化力(アグニ)にどのような影響を与えるかについても説明しています。
ヴィルヤは特に、胃や小腸に影響を与えるものといわれています。

 

《「加熱するヴィルヤ」と「冷却するヴィルヤ」、それぞれの効能》

(苦いものは冷却ヴィルヤ)

加熱するヴィルヤは、カファとヴァータのバランスをとるために役に立ちます。
これは、カファとヴァータは質的に、「冷たい」からです。
つまり冷たいものは温めることでバランスをとることができます。
さて、この加熱するヴィルヤは、ピッタに関していえば、ピッタを悪化させる効果があります。
これはピッタが質的に「熱い」からです。
熱いものを余計に熱くしてしまうというわけですね。

このように、加熱ヴィルヤを持つ食品は、消化を促進し、体温を上昇させ、血液循環を促進し、私たちを活性化するのが特徴です。

一方、冷却ヴィルヤは、ピッタの過剰な熱を冷やすことにより、バランスをとってくれます。
ただし、もともと冷たい性質を持つヴァータやカファを悪化させる効果(ヴァータをさらに冷やし、カファをさらに鈍く不活発にします)があります。

冷却ヴィルヤを持つ食品は、消化プロセスを遅らせ、刺激や炎症を和らげ、体温を下げ、体の成長と体重の増加を促進する特徴があります。

食事の全体的なバランスにおいて、ヴィルヤが冷たすぎれば、その食事は消化不良に繋がる可能性があります。

例えば、氷でキンキンに冷えたそうめんを、わさびやショウガ(加熱ヴィルヤ)を加えたつゆで食べるというのは、利にかなっているということです。

また、反対に、食事の全体的なバランスが、あまりにも加熱ヴィルヤの食品の割合が多い場合、胃や小腸への過剰な刺激に繋がる可能性があります。

このようにして、食べるものを取り巻く自己意識を日々、開発することにより、私たちは食べ物が持つ「加熱」あるいは「冷却」効果を、簡単に感知できるようになります。

特に、食べ物を食べた直後から2時間、体やマインドに起こる変化を観察してみましょう。

以下のようなポイントにご注目を。

 

★温かく感じるかどうかをチェック

(暑い時に熱いものが食べたくなるのは……ピッタ悪化サイン)

・心臓の鼓動が速くなりますか?
・汗をかきますか?
・体が温かくなりますか?
・マインドがより鋭敏になり、精神的に鋭く感じますか?
・腹が立ってイライラしますか?

 

★寒いと感じるかどうかをチェック

・冷気を感じますか?
・食べる前よりも、マインドが鈍くなったと感じますか?
・脈拍数が落ちましたか?
・考えが行き詰まり、鼻腔も詰まってきたように感じられますか?
・冷静になり、落ち着いてきたと感じますか?

こういった観察は、便利な生活に慣れすぎ、「体調が悪くなったらとりあえず医者まかせ」という、体と対話する能力を失ってしまった私たち現代人が再び、「自分の体と繋がること」を復活させるいい訓練にもなると思います。

私たちが日々食べる食べ物が、どのような影響を私たちに及ぼし、それが気分を変えたり病気を予防したりするために使えるのか。

アーユルヴェーダのこういった微妙な理解を、私たちは自分を癒すために、日々、活用することができます。

 

■まとめ: それぞれの味がもつヴィルヤ

「味」    「ヴィルヤ(効果)」

甘味    →  冷却

塩味    →  加熱

刺激性の味 →  加熱

苦味    →  冷却

渋味    →  冷却

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◎次回は、三つ目の専門用語「ヴィパカ」についてお伝えしたいと思います。

 

《村上アニーシャ さんの記事一覧はこちら》
https://www.el-aura.com/writer/%E6%9D%91%E4%B8%8A%E3%82%A2%E3%83%8B%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A3/?c=73188

 

(トップ画像/夏は完熟フルーツ(冷却ヴィルヤ)をたっぷりと)