■味の効用part.1 基本となる6つの味:「甘味」「酸味」「塩味」「刺激性の味」「苦味」「渋味」~インド生活『村上アニーシャのアーユルヴェーダ』vol.117

今回からは新シリーズ「味のもたらす効果」についてお伝えしていきたいと思います。

「関東はしょうゆ味が中心の濃い味」、「関西はだしの効いた薄味」などとよくいわれることがありますが、料理の味付けも使う素材も、日本とはまるで違うインド生活を送る中で気づいたことは、日本の味付けはとてもデリケートで、繊細なうまみを重視する傾向があるということ。

インドでは、料理でもお菓子でも、塩味、辛い味、甘い味、どの味にしろ、味が堂々と主張しているような大雑把な味付けのものが普通です。

洗練された化学調味料などはほとんど使われていないため、よくいえば体にいいともいえますが、悪くいえば味が極端なので、日本の味しか知らなかった当時の私は、「インド人の味覚は絶対に壊れている」とよく思ったものです(インドの人たちに日本料理のデリケートなおいしさを味わってもらおうものなら、「味がない」とケチャップや塩をドバドバかけられてしまうことうけあいです。ちなみに寿司などの日本食をおいしいと感じるインドの人たちはだいたい、海外生活をしたことがある富裕層の人たちに限られます)。

果物も、日本で出回っているのような、果肉部分が多く味が洗練されている交配種のものはあまりなく、野生種に近い、酸っぱい、渋い、甘い、がはっきりしているワイルドな味のものが多くありました。
例えばイチゴは、小粒で形がバラバラ、そして酸っぱいのが普通です。

インドでイチゴを食べたときはじめて、「もともと果物って、こういう形でこんな味だったんだ……。」と、日本産の大きくて甘い、形が完璧なイチゴの元祖を知らされた気分でした。

(インドの食べ物はいちいち辛いのが特徴)

さて、環境からの影響とは怖いもので、インド生活が長くなるにつれ、辛すぎたり甘すぎたりするインドの味にもどんどん舌が慣れていき、インドで暮らし始める前は甘いものがまるでダメだった私も、チャイは激甘くないとチャイじゃない。と思うまでになりました。

それはさておき、アーユルヴェーダでは、食べ物の味には「甘味」「酸味」「塩味」「刺激性の味」「苦味」「渋味」の6つの基本の味があり、それぞれの味には、体や精神に及ぼす特定の効果があり、それをうまく使えば、私たちの心、体、精神のバランスをとるための強力な治療ツールとして使うことができるという、ユニークな概念があります。

 

★味の分類

アーユルヴェーダでは、伝統的な基本の教えのひとつに、「宇宙のすべては5つの基本要素、地、水、火、空気、空間で構成されている」というものがあります。
これは、味についても変わりはありません。

つまり、私たちが日々味わっているさまざまな味もまた、すべてこの5つの基本要素で構成されています。

 

★6つの味とその構成要素

それぞれの味は、次のような二つの優勢要素で成り立っています。

・甘味 ⇒ 「地」+「水」
・酸味 ⇒ 「地」+「火」
・塩味 ⇒ 「水」+「火」
・刺激性の味 ⇒ 「火」+「空気」
・苦味 ⇒ 「空気」+「空間」
・渋味 ⇒ 「空気」+「地」

アーユルヴェーダでは、私たちが日々、バランスのとれた健康的な生活を送るために、これらの6つの味をすべて、普段食べる食事の中に入れること(一回の食事ですべてとらなくてもよく、一日を通じてすべての味をとること)を奨励しています。

(渋・苦・甘くておいしい、インドの果物ジャムン)

人によって、好きでよく食べる味、あるいはあまり好きでなくめったに食べない味というものがあると思いますが、6つの味のうちどれか一つでも欠けている場合、食べ物に対する渇望が残るといわれています。

例えば、渋味をさけていると、妙に甘いものへの渇望が強くなったりします。

これは、私たちの体はそもそも「甘味」「塩味」を求めるように作られていて、バランスがとれていないと、極端に甘味または塩味が欲しくなってしまうということです。

このため、偏った渇望をはじめから予防し、健康を促進するために、6つの味をバランスよく、食事の中に入れることがすすめられます。

また、味にはそれぞれ違う効果があるため、ある味がよくてある味は悪い、といったことはなく、個人の体質や、現在のアンバランス状態によって、食生活において多めにとったほうがいい味、あるいは少なくても十分効果がある味というものが若干違ってくるといわれています。

 

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(トップ画像/慣れるとクセになる、インドの激甘スイーツ)