『衣・食・住』が彼女の教えの根底にある。
女性らしくシンプルで、私にも分かりやすい。
しゃっちょこばった講話などはせず、ただ一緒に過ごすうちに、いろいろな気づきが心身に浸透していく。
こたつに横たわりながら、突然の講話が飛ぶ！
朝六時から寺の廊下拭きの仕方を教えたりもする。黒光りした長い廊下をよつんばいになって、タッタッターと昔風の拭き方で拭く。動物のように四つん這いになる、これが健康になる秘訣だという。
今思えば、生きたエクササイズを気づきをもって生活の中でせよ！ という伝授が、かしこにゆきとどいていた。
玄米の炊き方も太母式。
ガスを節約し地球温暖化にならないように炊く炊き方。当時から彼女は温暖化のことを切に話してくれていた。だから、お茶も飲まず、水しか飲まない人。電気も徹底的に節約。置いてある電化製品も扇風機とこたつだけで、大きな伽藍とした寺の冬は相当寒かった。
しかし、その体験が今の私を作っていて、このオーストラリアのテンプル（Temple Of New Dawn）も伽藍堂で天井がすごく高いから暖房も冷房も不可能なので、冬の寒い朝には家の中でダウンコートを着て過ごしたりしても、苦にならない良い習慣が身についた。太母さんのお陰さま。
電気やガスや水をできるだけ使わないこと、こんなにシンプルなことが温暖化や地球が汚れるのを防ぐ秘訣だって知っていますか？
世界中の先進国に住む人々がこれをしたら、地球は一気に変わり始めます。人の意識も変わり、世界の政治経済や全ての在り方・動きも変わり、強いてはおかしくなってる地球の天候や天変地異すら変わり始めます。自然回帰が始まります。
そういう教えを戦前から見抜き『船を岸につなぎなさい』という本も出版し、訪ねる人皆んなに教え、伝えていた太母さん。すごいですね。明治生まれなのにエネルギッシュに永遠で、すごく進んでいる尊敬すべきマチュアな女性です。お年や古さを感じさせない人。
彼女の在り方は、流れる川の流れのように清々（すがすが）しく美しい。
静流。という名は、彼女が残したスピリチュアル自伝小説『慧日（えにち）』の主人公の名前でもある。ある意味、この名前とその響きに彼女の教えのすべてが秘められているのかもしれない。
【そろそろおいとま】
真っ白なTシャツと白いスパッツ、白地に真っ赤なバラのプリントの太いサッシュベルトを締めてスカッとしていた私のいでたちは、だんだんベージュに変容し始め、夏でもあったから、三日三晩を着た切り雀で過ごす内に、綺麗好きな私の我慢の限界を遂に超え、鎌倉から国分寺の友人宅までいったん引き揚げることを決意した。すると太母さんは寂しそうに『早う帰ってこい！』。
それ以後も、お寺を訪ねる時は、彼女のきらめく無垢さと一緒にいると時を忘れ、楽しくて嬉しくて仕方ないから、ついつい帰りそびれる。それに、太母さんはとても寂しがってひきとめるから、その彼女の慈愛と心のあり方に負けて、あえて残ることも多々あったわけです。太母さんが気に入ってる好きな人には誰にでもそういう風にしました。８０歳を過ぎていたけど、とても素直で可愛い人。大好きな人で、今も一緒に遊べたらどんなに素敵なことでしょうか……。
【人生が闇から光に逆転】
この出会いの日以来、太母さんと私はまるでソウルメイトのように（年齢は５０歳くらい違っていたけれども）会うたびに親交が深まっていったのです。彼女のサラッとシンプルで、世にいう倫理・道徳や善悪を超えた教えがとても新鮮で、それまでの人生３３年間泥まみれになりながらも必死に生きてきた、私の心身と頭をどんどん溶かして、宇宙全体との融合が、ひたひたと凪の波が寄せるように、とても自然に起こっていったのです。
そういう繊細で絶妙でタイミングの良い伝授のプロセスが、彼女の在り方からいつも溢れ出ていて、知らず知らずの内に浸透していくのです。
『差が取れるから悟り（差とり）というのじゃ！』
『神は加身（加える身）と書く。』
という彼女の冗句いっぱいの言葉遊びみたいな教えが、瞬間瞬間ご一緒して、あるがままにいられたから、とても自然に浸透していったのではないだろうか？ と今、２９年前のあの頃を思い返しながら文章にしているからこそ、余計に納得できるし、もう一度『今ここ』でこのコラムを書きながら、学び直している感覚が強くします。こういう教えは永遠の教えです。ありがたいことですね。
今これを読んでいるみなさんにも、そのありがたい波動が浸透していっているんです。
