松田有真のミラクルHappy☆Life宮古島~しあわせ島時間PART.2 命を繋ぐ大事なお水②

【宮古島の生活用水原と農業用水源】

現在、宮古島の生活用水源は、宮古島の上に方にある「白川田湧水」や、隣の「山川湧水」などの水源から水を摂って生活を営んでいます。

この2か所から採られている水は現在、宮古島で使用している全水道水の70%ほどをまかなっています。

一方、水を大量に使用する必要性がある農業用水は、どのようにして確保しているのでしょうか?
【登場した救いの手!
平成12年・世界初の大規模「地下ダム」がついに完成…!】

「水の確保が困難な島」と言われ、雨の降らない年は作物が育たず
農業が中心の宮古島の農家の人々は困り果てていました。

農業を営む上で水は命…
「水が自由に使えること」それは農家の方々の夢であったのです。

昭和47年に沖縄が本土復帰となりそれを契機に「畑に水を、若人に夢を」を合い言葉に
「灌漑(かんがい)事業」の実現に農民は立ち上がり
国や県、関係機関に繰り返し陳情してきた歴史がありました。

「いつでも水を撒けるようにしよう…!」
そのような思いで、地下水を溜めるダムを作り、その水を汲みあげ畑までパイプで送る方法を考え出したのです。

その働きかけが実り、宮古島全域を対象に大規模農業用地下水調査が行われ
昭和49年から地下ダム開発調査開始。

そして、昭和52年から54年に実験地下ダム「皆福地下ダム」の工事が実施され
その成功を受けて、昭和62年ついに国営かんがい事業が着工。

↑地下ダム建設の様子

そして、平成12年、14年の歳月と約640億円を投じ、世界で初めての
2つの大規模な地下ダムがついに完成致しました。

世界に先駆け、大規模な地下ダムが誕生した瞬間です!

天からの恵みだけに頼る、いわゆる「水なし農業」から安定した水の供給を実現する「水あり農業」の実現の為に、国や県、市町村が一丸となって取り組んだ結果、世界初の本格的な地下ダムが宮古島に完成致したのですね!

こうして、地下ダムの完成とともに、農家の夢が実現し次々と新たな農業が展開されていくことになっていくことになっていったのです。

【ところで「地下ダム」っていったいどんな仕組みなの…?】

通称“目に見えないダム”と言われている地下ダム。

地下ダムは、地上にあるダムとは異なり、水を透しやすく、大小の穴があいている琉球石灰岩の隙間に水を通さない壁(止水壁)を地中に作り、地下水の流れを堰き止め、地下水をためる仕組みになっています。

「地下ダムの仕組みとは?」
1.雨が降ると、雨水は地中に染みこむ。
2.石灰岩に染み込んだ雨水は、水を通しにくい粘土層にぶつかる。
3.水を通しにくい粘土層と、地下ダムの止水壁に挟まれた水は地中で溜まる。
なるほど…!ですね!

亜熱帯性気候の宮古島では、年間約2200mmの雨が降ります。
ところが、そのうち880ミリ(1.4億t)は地下水となって海へ流れて行ってしまうのです。

地上に降った雨は、水を透しやすい隙間だらけの石灰岩を透過するのですが、泥岩に遮られ、石灰岩の穴の中を移動します。

そして、島には断層線が北西から南東方向に幾重にも走りその断層で囲まれた、地下谷に貯まった地下水が海岸の崖下から湧き出ます。

こうして出来る地下水流の下流域に水の流れをせき止める「止水壁」というのを設け地下に水を溜めるのが地下ダムの仕組みなのですね!


↑地下ダムのイメージ図。ピンク色の線が地下水をせき止める「止水壁」

この仕組みを考えた方、すごいですね…!

 

【世界初の大規模「地下ダム」!その大きさは…?】

宮古島に地下ダムが完成したことにより、約2,400万トンの水源を確保し、8,400haに畑地かんがいを行う事が出来るようになりました。

かんがい(灌漑)とは、農地に外部から人工的に水を供給することで、水を耕地に組織的に導き、行き届いた管理のもとに地域的に配分することを言います。

宮古島の「地下ダム」がある場所は三角形の形をした宮古島の底辺右付近ある「城辺(ぐすくべ)」という所の「砂川(うるか)」という場所と「福里(ふくさと)」という場所にあります。


↑上空からダムの写真。赤い線が地下ダムの「止水壁」が作られている場所です。

砂川、福里の二つのダムの貯水量はそれぞれ次の通りです。

★「砂川地下ダム」…学校のプール27,100杯分
★「福里地下ダム」…学校のプール30,000杯分
この2つの地下ダムの貯水量で大きく島の方々の生活が変わる事が分かりますよね!

川のない宮古島に2,400万トンを貯える地下ダムが世界に先駆け、完成したということは、とても奇跡的な事でした。

長い間、島の農家の方々苦しめられてきた水不足。

お天気次第で全てが決まる「水なし農業」から「水あり農業」への展開が可能になったことは農業の歴史から見るとまさに「宮古島における農業改革」といえるほどの大偉業だったのですね!

地下ダム建設に携わって下さった皆様の労力を思うと、感謝の念で溢れてきます。
【知っていますか…?宮古島の地下ダムには、いろんな方が視察に訪れているのです…☆】

ところで、皆さんはご存知でしょうか?

宮古島の地下ダムは、世界的にも有数の大規模地下ダムとして全国から様々な方が視察に訪れているんです。

水源開発の一手法として宮古島は「大規模地下ダム技術の発祥の地」として知られていて、海外からはJICA(国際協力事業団)を通して、南米や東南アジア中近東辺りから地下ダム建設技術ついて研修に訪れたり、県外からの修学旅行生や地元宮古島の学生の皆さんも地下ダムの勉強に訪れています。

そして、平成16年1月25日には、天皇・皇后両陛下が地下ダムを利用した農業視察の為ご来島。

平成15年8月9日には細田大臣が地下ダム資料館を訪れました。

タイ王国のマハー・チャク・シリトーン王女も地下ダム視察の為に来島されていたそうです。

その他、TVや雑誌などでも宮古島の地下ダムが紹介されて、宮古島の地下ダムの設備と建設技術は各方面から注目を集めているのですね!

【そもそも、なぜ「地下ダム」を作ることが出来るの? 宮古島の独特の地形「地下谷」とは…?】

宮古島には、幾つかの「地下水盆(谷)」というのが存在しています。

宮古島は、島全体が水を透しやすい穴ぼこだらけの琉球石灰岩に覆われ、その下の基盤は水を透しにくい島尻層泥岩が分布しています。

その為、島に降った雨は、蒸発する分を除いて、その大部分が地下に浸透し、琉球石灰岩を帯水層として、地下水となり下層にある島尻泥岩の上の形に規制されて流れていってしまうのですね。
地下水はこうした「地下の谷」に沿って流動しているのです。

さらに、宮古島の地層は断層によって分断され、水を透さない島尻泥岩の基盤が谷のような形をしています。

この谷を地下ダムの止水壁でせき止める事で地下水を溜める事ができる仕組みになっているのです。

宮古島のこの水理地質機構は珍しく、地下ダム適地としては最高の地質なのだそうです。

この地下の谷をせき止めて地下水を琉球石灰岩中に溜めて、畑地灌漑用に使おうというのが地下ダム建設の目的だったのですね!
【地下ダムの完成!その後、どんな変化が訪れたのでしょうか…?】

地下ダムが完成してから、島の人々の暮らしに様々な変化が訪れました。

1.干ばつの解消と営農労力の軽減
⇒地下ダムによる安定的農業用水の確保により干ばつ被害が解消され、灌漑施設の整備により水運搬の労力が大幅に軽減されました。

↑左が灌漑設備の整った畑で育ったサトウキビ。右が従来のままの畑のサトウキビ。

2.農作物の収穫量の増加や安定化に繋がった
3.高収益作物の導入と収量の増加
⇒かんがい用水を利用してカボチャ等の露地野菜の品質向上や施設果実マンゴーや、施設野菜ゴーヤピーマンの導入が進み、これまでさとうきび中心だった農業から、野菜、マンゴー、たばこなど新しい農産物が生産されるようになりました。

 

【しかし…地下に穴を掘って「地盤沈下」などの心配はないの…?!】

「地下ダム」と聞くと、多くの皆さんが地下に湖のような貯水池があり、地盤沈下の危険性があるのでは?と思われる方も多いのではないでしょうか?

しかし、心配は御無用…!

通常、砂礫や粘土層が分布する一般地域では、地下水位を低下させると、土層中の水分が絞り出されて収縮し、地盤沈下が発生してしまい、このような地層の場所で地下ダム建設する場合は地盤沈下に留意する必要がありますが、宮古島の「地下ダム」は決して地下に「湖」がある訳ではありません。

琉球石灰岩の隙間に水が溜まっている上、この琉球石灰岩という地質は強度があり、自立しているので、構造上、よほど急激な水質変化等が起こらない限り地盤沈下の心配はないようなのです。

(ホッ…)ちょっと安心ですね!

【「地下ダム」の良い点ってどんなところ…?】

通称“目に見えないダム”と言われる地下ダム。
そのメリットはいったいどんなところにあるのでしょうか?

①地上に建設するダムとは異なり土地の水没エリアが発生せず
地表部は今まで通り使う事が出来る。
②地上のダムのように決壊による災害がなく決壊によって家屋が流出することがない。
③地下水を溜める為、水温が1年を通して安定している。
④地下水の流動が比較的遅いため、長期間に渡って安定した取水が可能である。
⑤ 地下ダム貯めた水が蒸発しにくい。
⑥ アオコなどが発生しにくく衛生的である。
⑦ 地下水位をせき上げ、地下水量を増加させる事が出来る。
⇒それによって、井戸がある場所では水位が上がり水を沢山くみ上げる事が出来るようになる。

⑧ 海岸部では、海水の地下水への進入を防ぎ地下水の塩水化防止に繋がる。

⇒それによって、以前は、水位が下がると海岸付近の井戸では海水の混入が起きていましたが地下ダムの建築によって水位が下がっても海水の混入が防げるようになりました。

地下ダムによって蓄えられる水源は2400万tにもなります。
石灰岩に貯められた水はミネラル豊富で農作物の栄養価を引き上げる働きにもなります。

これまで全て、お天気任せで、雨が降るのを待っていた農家の方たちも、地下ダムの完成により、計画的な栽培をすることが可能になりました。

地下ダムと灌漑用設備は宮古島の農業に大きく貢献しているのですね!
ダム建設に携わって下さった皆様に心からの感謝の念を抱くばかりです。