一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.51 「さまよう刃」

娘を殺された父親の悲痛な復讐劇
魂のさまよいを学ぶことができる秀作!

最愛の人が残虐非道に殺されたら、犯人を殺したい! と思うのは当然の気持ちだろう。しかし、その犯人にも家族がいて、復讐や憎しみは果てしなく続いていく・・・。
中学生の娘がレイプされ殺される。犯人は数人の高校生。父親は犯人の情報を得て事件の証拠があるというアパートに行くが、そこで犯人の一人に出くわし、逆上して撲殺してしまう。それから父親はもう一人の犯人を追ってスキー場へ向かう。被害者だった父親が今は加害者となり、警察は未成年の犯人を助けるために父親を追うのだが・・・。

本作は、ワクワクして観た。
人は時にとてつもなく残酷な物語を観たくなるものだ。
これも東野圭吾の原作で、酷い話と知っていたので期待した。その時の私は酷い話を観たかったのだ。そして、画面に釘付けだった。文句なく面白く、辛く、やるせない。そして怖ろしかった。また、韓国映画の巧さに感心した。辛く煩悶させられる作品だが、同時に一級のエンターテインメントでもあるところはさすがである。私は煩悶したかったのだ、と知ることもできた。

スピリチュアル的視点で読み解くと
生きるためのヒントがいっぱい

本作をスピリチュアル的な視点で観ると、頭がパンクしそうなのだが、ひとつずつ整理していこうと思う。
まず、今生で殺されると言うことは、前世でなにか因縁があった相手に殺されるということで、因果応報。また、殺されることによって前世のカルマを返しているということにもなる。
そして、レイプされ殺されるというと酷い! と思うが、生き物は自分が耐えられない痛みや苦しさの許容量を超えるとエンドルフィンが多量に出て、痛みを感じなくなり、恍惚状態となる。だから、どれだけ酷い目にあっても途中から痛みや苦しみは感じないらしい。

また、私たちの魂は、人間として体を借りてこの世に生まれてきた理由はいろんなことを経験するためで、それがたとえ虐待や殺人でも、経験したいと魂は思う。
それから、酷い殺人や虐待事件を知ると、人は「信じられない!」「人間じゃない!獣だ」と非難するが、かつては、私たちもそういうことをしたことがある未熟な魂だったわけで、今は何万回も生まれ変わって多少魂が磨かれているだけで、加害者を非難ばかりできたものではないである。
そして、こういう酷い事件に関わった人々は、その状況を打破、変えていこうとする役目があるということ。そのためにその事件に関わったのだから。

こういう風に観て行くと、どんな映画も冷静に観ることができる。そして、自分なりにこの世のしくみと、自分がなぜ今この映画を観たのか、を考えることができる。まあ、そういう風に考えないと、本作はラストやるせなさすぎるので(笑)。
でも、ちゃんと希望は用意されているので、陰陰滅滅にはならない。ラストの刑事の言葉が救いだし、私たちはそうするしかないんだろうな、と思う。

本作で一番良かったのは、この刑事である。演じるイ・ソンミンが素晴らしい! こういう骨太な役者、今の日本には、いない。

■監督・脚本 イ・ジョンホ
■原作 東野圭吾
■出演 チョン・ジェヨン イ・ソンミン ソ・ジュニョン イ・ジュスン
■東京 角川シネマ新宿、他にて公開中
■大阪 9月20日(土)からシネ・リーブル梅田、他にてロードショー
■122分