ココロセラピストが語る!『優柔不断』と向かい合うには?

優柔不断という言葉のイメージ

コミュニケーションの大きな弊害となるモノの1つに優柔不断と言うモノがあります。この優柔不断と言う言葉、実に不思議だと思いませんか。

優柔不断の優柔。優しく、柔軟という感じですよね。そう考えると、優柔不断と言うのは優しく柔軟性があるが、それゆえに決断力に欠けるというイメージを連想しませんか。

それでは辞書(『goo辞書』より)で調べてみましょう。

優柔不断…ぐずぐずして、物事の決断がにぶいこと。また、そのさま。▽「優柔」はぐずぐずしているさま。

この最初のプラスのイメージの二文字の段階で、なんと!すでに「ぐずぐず」なのです。ご存知でしたでしょうか。優しく柔軟性のあるイメージは何処へ行ってしまったのでしょう。

確かに優柔不断というのは、優しく柔軟性のある人が決断力に欠けているというわけではありません。単に、意思決定の能力が低い人もたくさんいますよね。

考えてみれば、本当に優しくて(もしくは優れていて)柔軟性のある人なら、相手の迷惑も初めから考慮に入れているでしょうし、臨機応変に対応して気を配ったりしそうなので「ぐずぐず」にはならないかもしれませんね。

僕自身が、やや優柔不断気味の自覚があるので時々反省するのですが、やっぱり誰かと時間を共有する時はマイペースも大事ですが、思い遣りの気持ちを持って相手のペースとの折り合いもきちんと計算して動きたいなって思っています。もちろん、相手本位のペースに無理して合わせるという意味では無く、バランスよくという意味ですよ。

それはそうと、ここで注意をして欲しい事があります。意思決定が著しく遅く、周囲をイラつかせてしまう人は確かに迷惑ではあるのですが、そんな彼らが必ずしも単なる優柔不断とは限らないのです。『うつ病』の方は、まさに優柔不断とも思える症状があるので接し方には注意が必要です。彼らは決して優柔不断なのではなく、そういう症状も含めて苦しんでいるのだということは理解してあげてください。薬物治療を受けている方だと、もしかすると薬の副作用で頭がボーっとして思考力が低下している可能性もあります。それはそれで危険ですので、もし身近な方で異変を感じたら信頼できる専門家に相談するように促してあげて下さい。

もちろん病気でも何でも無くて単なる優柔不断な方も、決して悩んでいないわけではなく、その事を悩んでいる方もたくさんいますし、病気ではない優柔不断の方に対してはキツく怒って改善を促して良いわけではありません。

確かに恐怖で人間の行動をある程度コントロールする事は出来ます。ただ、それだと恐怖心が優先してしまい、必要以上に慌てたり、混乱してしまう危険性もあります。単純な指示ならこなせるかもしれませんが、怯えている状況下では冷静かつ的確な判断は出来なくなる可能性もあります。場合によっては恨まれてしまって、優柔不断とかそれどころの問題では無くなってしまう事も無いとは言い切れません。だから、決して恐怖でテキパキを促す方法はオススメしません。

「怒る」と「叱る」は似ていますが、意味合いがまったく違うのです。「怒る」というのは感情の話ですよね。「私、マジでムカついてるんだけど!」みたいな感じです。これだと、優柔不断の人に限らず、「この人はすぐにキレるんだよね。困った人だよ…」などと思われてしまうと、本末転倒です。

一方、「叱る」というのは、目下の人などの間違いを指摘して注意する事です。「キミがもう少し早く行動してくれないと、みんなを待たせてしまう事になるんだよね…」と言った感じでしょうか。こちらの方が、少しだけ具体性を帯びていますよね。結局、どちらも最終的には「相手に違ったアクションを起こして欲しい」という事なのだから同じではないかと思ってしまうかもしれませんが、具体性に欠けると本意は伝わりにくいのです。

では、感情むき出しで怒りを伝えても優柔不断に効果が無いから、具体的に間違いをビシッと指摘すれば良いのかと言うと、そういう簡単な問題でもないのです。

結論を言うと、相手の元々の性格や能力をできるだけきちんと把握して考慮し、相手のプライドを出来るだけ傷つけないように配慮し、可能な限り具体的に何をどうして欲しいのかを伝える事が大事です。

優柔不断とモタモタは必ずしも同一ではない

性格に関してお話します。優柔不断と言っても、それはこちら側から見た主観だという事を念頭に考えてみて下さい。怠け者なのか、のんびり屋なのか、何も考えていないのか、理解力が無く物事を判断できないのか、それとも悪意があるのか。その辺の見極めをしないと、コミュニケーションが取れません。場合によっては初めから関わらない方が良い時もあると思います。

能力に関しては、単純です。本人がどんなにテキパキしたくても、能力以上の事は出来ないのです。そもそも、その人に出来ない事は時間制限を設けて具体的に指示を出してもあまり意味がありません。仕事などになって来ると、時間制限やノルマも影響して来ると思いますが、あからさまに不向きな事を強要しているのであれば、その辺から根本的に見直す必要があります。適材適所でなければ、優柔不断では無くてもモタモタしているように見られてしまう可能性もあるのです。「そうは言うけど、あの人は何をやらせてもモタモタしていて…」というお話しでしたら、それはもはや優柔不断は関係ない別の問題として考えて下さい。

補足ですが、優柔不断とモタモタは必ずしも同一ではない事に注意して下さい。優柔不断は決断力が乏しく、それも含めてモタモタしている事です。モタモタは決断力はあっても行動がスローで時間がかかっている人かもしれません。

プライドに関しては、性格も関係ありますが、悪意があろうとなかろうと相手の自尊心を傷つけてしまったら信頼関係が音を立てて崩れてしまうので相手に悪意が無い限りは極力上から目線にならないように気をつけて下さい。テキパキしたい人からすれば、優柔不断な人と接しているだけで大切な時間を無駄にしている気がして、それこそプライドが傷つくかもしれませんが、そういう人とバランスを取ってやりとりする事もまた学びなのだと言う心掛けの方が良いかもしれません。

具体性に関しては、時間の目処、急いだ方が良い理由、具体的な行動案などを上手に伝える工夫が必要です。「察してよ!」という気持ちも出て来ると思いますが、この際、その発想は捨てて下さい。本当に時間が無い時は、相手の意思決定を待つのではなく、自分の意見を提案して「その方向性で行かない?」と、相手の選択肢を小さくする工夫を促してあげて下さい。

と、長く語ってしまいましたが、もしかすると誰かを優柔不断と思ってしまっている自分こそが、実はセカセカ人間で、必要以上に焦って空回りしているタイプかも知れません。