ココロセラピストが語る!「自己開示」あれこれ~開示すれば良いわけではない~

人間関係のコツ?自己開示とは

人は誰でも人間関係を円滑にしたいと思っています。コミュニケーション能力無くして有意義な人生無しと言い切っても良いくらい重要な事です。
人間関係のコツでよく言われているのが自己開示です。聞いた事のある言葉だと思います。どういうものかというと、簡単に言えば自分自身に関する情報を相手に教えてあげる事です。そうすると、どうして人間関係がスムーズになると言われているかと言いますと、ここにある心理作用が働くと言われています。
それは『返報性』という作用です。要するに自分の言動は返ってくると言う事です。相手に対して「この人大好き!優しくしちゃう!」って思って接していれば自ずと相手も自分に対して好感を持って優しく接してくれる。これを『好意の返報性』と言います。一方では逆に『嫌悪の返報性』というのも存在します。これも感覚的に理解できると思うのですが「コイツ、まじウザいんだけど~」と思って接していたら、相手も自分に対して決して良い対応はしてくれなくなりますよね。そういうことです。
金子みすゞと言う有名な詩人がいるのですが、彼女の「こだまでしょうか」という詩をイメージしてくれるとイメージしやすいかもしれません。
素晴らしい詩なので全文引用したいところですが、御存じない方はサーチエンジンで検索してみて下さい。すぐに見つかると思います。

そんなわけで、自己開示というのは、「個人情報をわざわざ自分のために教えてくれているのだからきっといい人に違いない!」と思わせて「私も個人情報を教えてあげなきゃ。お互いがお互いの事を深く知ることが出来れば信頼感もアップするわよね!」という流れになるための重要なプロセスだと思われているようです。
心理学ブームなので、もしかしたら自己開示を推奨している人も身近にいるかもしれませんね。ただ、自己開示というのは、残念ながらそんなに簡単なモノでは無いのです。

メソッドやテクニックに溺れず、本質を磨こう

確かに普段人に言えないような秘密性の高い情報を共有できたら親しみを持つかもしれません。ちょっとドキドキワクワクする楽しい感じもします。
では自分が人には言えないような事を自己開示したら、相手も必ず自分の人には言えないような話を開示してくれるでしょうか。それを共有して共感し合って親友になれるでしょうか。危険なポイントは、ここなのです。返報性は絶対法則ではありません。
人間は自分にとっての不利益になる事は基本的に望みません。だから自分にとって都合の悪い事は隠したがる人も大勢います。もちろん身を守るためです。一方で、人は何処かで相手の弱点も探っていたりします。自分の方が優位な立場に立っていた方が安全だからです。

悪人では無くても警戒心の強い人はどんなに相手が自己開示して来ても自分は自己開示しません。とはいえ、自己開示しないから信頼関係が深まらないかというと必ずしもそうではありませんので誤解しないように気をつけて下さい。
人間ですから誰しも人には知られたくないことや、言いたくないことだってあると思いますし、あって当然だと思います。
よく「自分の弱さをさらけ出してこそ信頼関係が生まれる!」と自己開示を促す人もいますが、厳密にはそれは間違っていて「自分の弱さ」というのは開示がどうという問題ではなく自分で直視し受け入れることが大事なのです。
それに自己開示というのは必ずしも秘密を打ち明ける事でも無ければ、自分の弱さを相手に伝える事でもありません。

詐欺師やスパイは、むしろ信頼関係を深めるフリをして、あの手この手と情報を引き出すために自己開示をするように誘導して来ます。うっかり教えなくても良い事まで教えてしまうとそれこそ大事件に発展してしまう可能性すらあります。
このような話をすると、僕は自己開示を否定しているように思われてしまうかもしれませんが、決してそういう意味ではありません。自己開示する事で信頼関係が深まる可能性があるのは事実です。良い事だと思います。
しかし自己開示して良いレベルの内容かどうか、自己開示して良いタイミングかどうか。危険を冒してまで自己開示するに値する相手かどうかを見極める力も重要だと言う事を忘れないでください。

信頼関係というのは、そもそもメソッドやテクニックだけで成立するものではありません。大切なのは相手を思い遣る心です。あなたの想いや行動が信頼関係を深めるのです。自己開示は、そのプロセスの途中途中でエッセンスとして挿入して行けば良いのです。信頼の本質は心です。忘れないでください。