一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.45「パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト

 

世紀の天才ヴァイオリニストの
半生をドラマチックに描く力作!

パガニーニと言えば超絶技巧の演奏が有名で、数曲しか知らなかったのだが、本作を観て驚いた。まさかこんな女たらしでヤク中、アル中、ギャンブル狂でスキャンダルまみれの生涯を送った男とは・・・! いや、なんと魅力的なことか。しかも、演じるのがあのイケメンヴァイオリニストのデイヴィッド・ギャレット。彼自身が、天才ヴァイオリニストと言われていて、ロックとクラシックを融合させた新しい試みやドラマチックな演奏はパガニーニと重なる部分が大いにあり。
最初は演技的に不安になったが、どんどんパガニーニが乗り移ったかのように悪魔的で不遜さ全開になってきて、体中からフェロモンむんむん状態。また、演奏シーンは実際の一流ヴァイオリニストというのもあるが、聴き応えたっぷり。

D・ギャレットのロックスター
ばりの激烈演奏シーンにキャーッ!

客席の後ろから突然現れて「キュイ~ン!!」とまるでギターソロみたいに大音響で、長髪の頭を振り乱して切なそうに熱く激しく猛然と演奏する姿は、セクシーなロックスターそのもの。もう、唖然! のカッコよさなのだ。当時はパガニーニの演奏に失神した女性がたくさんいたそうだが、分かる! と納得のギャレット=パガニーニ演奏。パガニーニは当時で言えばロックスターみたいなもんだったそうで、演奏シーンはほんとロックコンサートばりに興奮させてくれる。

パガニーニ初めての愛を史実と絡ませ
切なくスリリングに!

本作は単にパガニーニの半生を描くだけではなく、かなりドラマチックに脚色がされている。しかし、登場する人物は全て実在の人物に基づいているという。
面白いのは無名の頃のパガニーニの前に現れ彼のマネージャーとなるウルバーニ。彼はパガニーニに「世紀のヴァイオリニストにしてやるが、私に逆らうことは許さない」と言う。そして彼は巧みにパガニーニを意のままに繰りスターにしていくのだが、まるで彼は「ファウスト」の悪魔メフィストなのだ。悪魔に魂を売り渡したファウストならぬパガニーニは、ロンドン公演で初めて愛を知る。
相手は指揮者の娘シャーロット。しかし、この愛もウルバーニの企みによって成就されない。ウルバーニの暗躍ぶりが謎に満ちていてハラハラドキドキと物語に夢中になる。演じるジャレッド・ハリスの猥雑な個性が際立っていた。

役者が素晴らしい!
A・デックの魂の発光ぶりに釘付け

また、特筆すべき役者がシャーロット役のアンドレア・デック。彼女は歌声も素晴らしいが、彼女が画面に出てくると、まるで画面に紗がかかったように霞み、彼女の頬や肌が発光してるように輝いていたのには驚いた。たぶん女の一番美しい一時期の年齢であり、その一瞬が幸運にもこの映画に記録されたのだと思う。神々しいほどの輝きは歌うシーンでより輝きを増しキラキラと金粉が飛び散っているように見えたので、きっと彼女自身とても霊力のある人ではないかとも思う。
そして、デイヴィッド・ギャレット。ものすごい濃い濃い顔である。北村一輝より濃い。しかし、この濃さが途中から心地よく、セクシーにしか見えなくなる魔術は凄い、と思った。一歩間違えたらむさ苦しいだけなのだが、これも映画のマジックだろう。

うらやましいパガニーニの
生きたいように生きた人生

さて、結局パガニーニという人は死ぬまでシャーロットを思いながら、カジノ経営の失敗で不遇のままに亡くなる。
観終わって、むちゃくちゃ荒れて汚れた人生の中で、シャーロットと息子への愛だけが真実だったんだなあ、と思ったら切なくなった。しかし、ドラマチックな人生、かく生きたいものである、とも思った。
生きたいように、人は生きていいのだから。

パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト
7月11日(金)、TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば
京都シネマ、TOHOシネマズ西宮OS 他全国ロードショー
http://paganini-movie.com/
©2013 Summerstorm Entertainment / Dor Film / Construction Film /
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監督・脚本・撮影 バーナード・ローズ
出演 デイヴィッド・ギャレット ジャレッド・ハリス クリスチャン・マッケイ ヘルムート・バーガー アンドレア・デック