一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.44 『マレフィセント』

ディズニーアニメ「眠れる森の美女」の実写版
悲しみと許しに満ちた改心の物語

「眠れる森の美女」。大好きなおとぎ話だった。真実の愛のキスだけが、永遠の眠りにつくオーロラ姫を目覚めさせる。なんてロマンチックなお話。

幼い頃私も夢見る少女の例にもれず、ラストに登場する素敵な王子さまを夢見たものである。時がたって、王子様は幻想と化したものの、まだ私のなかにはおとぎ話を大好きで信じたい少女がいて、ディズニーの作り出す物語にはいつも胸躍らされてきた。たぶん女性はみんな心の奥底に、永遠に少女がいるのだと思う。その私の中の少女は本作に夢中になって、この美しくも悲しい話に浸った。甘美な夢に酔った。そして、どれだけ元気が出たことか。物語は明日への活力、生きていく力を簡単にくれる。

男と女の間に「真実の愛はない」
そうかもしれない、そうでないかも……

オーロラ姫に呪いをかけた、最強の翼をかつて持っていた木の妖精、マレフィセント。本作は彼女の視点から描かれる。だから、良く知られている「眠れる森の美女」とはちょっと展開が違う。

すごく現代的とも言える。だって、驚いたことに、王子様のキスでオーロラ姫は目覚めないのだから。しかも何度も「真実の愛なんてない」というセリフが繰り返される。これは、マレフィセント自身が恋人だった人間に裏切られ、手痛い仕打ちを受けるからだが、おとぎ話としてはかなり夢がないセリフである。しかし、現実はそうなんだけどね。

「男と女の間に真実の愛なんてない」というのは、ある意味真理なのではないかと思う。
でも、男と女の間にはないのだけど、「愛」は存在するのである。オーロラ姫がその「愛」によって目覚めるシーンは驚きとともに、涙が一筋頬を伝った。ああ、なんとシニカルでリアルな展開! 現代版「眠れる森の美女」はこうじゃなくちゃ!素敵です! 大拍手のクライマックスだった。

なにかと話題のアンジー好演!
娘ヴィヴィアンも出演で母親度全開!

さて、マレフィセントをアニメそっくりの風貌で演じるアンジェリーナ・ジョリー。頬に人工装具をつけて頬骨を尖らせているが、あまりに痩せていてどこか悪いのでは、と心配になる。しかし、いつもの彼女には見られないような弱々しい表情や戸惑いや慈しみ、そしてまた荒々しさや冷酷さも美しさも、今回は多彩に魅せてくれて飽きさせない。好演、熱演。見ごたえたっぷりだ。

オーロラ姫の幼い頃の子役が金髪の可愛い子で、アンジーの演技もなんか不思議で、妙に目が優しくて、「もしかしてこの子ブラッド・ピットとの間の実子?」と思っていたら、そうだった。演技に滲み出ていましたよ、母のまなざしが。
他のアンジーの子どもたちも、オーロラ姫の誕生を祝うシーンで出演していたそうだけど、これは分からなかった。

「夢」のように美しい眠るオーロラ姫
忘れがたい白眉シーンはディズニーの真骨頂

あと、忘れがたい場面がある。
オーロラ姫が宙を浮いてゆっくりと眠りながら移動するシーンが、キラキラ金色に輝いて美しくて幻想的で「ザ・おとぎ話」だった。うっとりしてしまった。甘美な夢のように綺麗。というか、「夢」なのだ。「夢」そのもの。

この映画は「夢」を描いているのである。
ディズニー映画は常に「夢」を描いているから、素晴らしい。
だから、みんな永遠にディズニー映画が好きなのだろう。
みな「夢見る」ことが大好きなのだから。

『マレフィセント』
7月5日(土)TOHOシネマズ梅田他全国公開
ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン公式サイト
http://disney-studio.jp/
©2014 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

監督:ロバート・ストロンバーグ
脚本:リンダ・ウールヴァートン
出演:アンジェリーナ・ジョリー、シャールト・コプリー、エル・ファニング、
サム:ライリー、イメルダ・スタウントン