文明化の答えとしての「現代日本」

水俣病患者への鎮魂の文学『苦海浄土』で知られ、〈近代文明の毒〉に対して
警鐘を鳴らし続けてきた、世界的な作家・詩人、石牟礼道子によるラストメッセージ

未来はあるかどうかはわからないけれども、希望ならばある。
文明の解体と創世期が、いま生まれつつある瞬間ではないか。

文明化する日本社会の中で起きた水俣水銀中毒事件をモチーフに、「近代とは何か」を現代人に突きつけた名著『苦海浄土』。

本映像作品は、その作者として知られる石牟礼道子さんに、来るべき世について語っていただいた最後のメッセージです。
本作は、この数年の間、監督ら制作陣が不知火海の地に住む石牟礼さんを幾度も訪ね、その言葉をまとめた作品。
現在、パーキンソン病に苦悶しつつ日々を送る石牟礼さんが、「文学とは何か」、「詩とは何か」、そして、新作能の新たな構想、最後に文明社会のゆくえなどを語ります。

その中で石牟礼さんは「祈り」や「犠牲」という、われわれ現代人が失くしてきた言葉を強調しました。
作品の映像は、水俣・天草・不知火海はいうまでもなく、60年代の水俣漁村の風景も用い、そして金大偉監督の独創的な音楽が乗せられています。

そして、2011.3.11に起こった東日本大震災もこの作品の中で描かれています。
水俣や福島で起きた事件について、石牟礼道子はわれわれにいかなる言葉を伝えるのか……本作を観ると、今改めて「日本人として生きる」覚悟を突き付けられます。

■石牟礼道子さんプロフィール
1927年、熊本県天草郡に生れる。詩人。作家。
『苦海浄土――わが水俣病』が、文明の病としての水俣病を鎮魂の文学として描き出しとたして絶賛。73年マグサイサイ賞。86年西日本文化賞。93年『十六夜橋』で紫式部文学賞。01年度朝日賞。『はにかみの国――石牟礼道子全詩集』で02年度芸術選奨文部科学大臣賞。藤原書店より刊行されたものとして、『石牟礼道子・詩文コレクション』（全7巻）、初の自伝『葭の渚』、本作品撮影時の語りの全てを収めた単行本『花の億土へ』ほか著書多数。04年4月から刊行された、『石牟礼道子全集・不知火』（全17巻・別巻1）が14年5月に完結(藤原書店)。

『花の億土へ』
2014年6月28日（土）より渋谷アップリンクにて公開

■公式ＨＰ
http://fujiwara-shoten.co.jp/main/news/archives/2014/04/post_163.php

■特報動画YOUTUBE
http://www.youtube.com/watch?v=XWUYSix1hG4

出演：石牟礼道子（いしむれ・みちこ）
監督・構成・撮影・編集・音楽：金大偉（きん・たいい）
音楽ゲスト：大倉正之助
ナレーション：米山実
プロデューサー：藤原良雄
制作：藤原書店
(2013年度作品／日本／113分／ハイビジョン／16:9)