ライフスタイルデザイナー高橋克彰の“ウェルネスのセンスを磨く” PART.30~太陽を浴びる3つのメリット

前回、太陽を浴びることについてビタミンDの観点からお話しましたが、今回は別の観点でお話したいと思います。
ぼくが太陽を浴びることの重要性を認識し始めたのは睡眠の勉強をし始めてからです。

通常ぼくたち人間は、おおむね朝7時に起きて夜23時に寝て、また次の日も朝7時に起きて夜23時に寝て……という日々繰り返しています(睡眠覚醒リズム)。なぜなら、1日24時間が今日も明日もずーっと変わらないからです。体温のリズムも、朝低くて、お昼に高くなって、夜になると低くなる(体温リズム)。これを毎日繰り返しています。ということは、睡眠覚醒リズムも体温リズムも24時間周期なのだと考えるのが普通です。

ところが、「時間的手がかり(太陽、人との接触、時計、食事時間の規則性など)」の一切を排除した部屋に人を置くとどうなるか?という研究が、1970年代に行われ、その結果、体温リズムは25時間、睡眠覚醒リズムは33時間という結果が出ました。
つまりどういうことかと言いますと、睡眠覚醒リズムで言えば、今日21時に眠くなって寝た人が、明日は33時間後の朝6時に眠くなって寝る、ということです。分かりますかね?

(ぼくはこの研究結果を知った時に、けっこう衝撃だったといいますか、人間の身体って実に複雑なシステムになっているんだなあ、と感じたんです)

ぼくたちの通常の生活に当てはめて考えたら、これってすっごく困りますよね。仕事になりません。睡眠覚醒リズムを、1日24時間と同じく24時間周期にしたいですよね。

そこで、このリズムを24時間周期に整えてくれるのが、太陽光、食事の規則性、運動、社会的接触の4つです。
そして、この4つの中で圧倒的な調整力を持っているのが太陽光なんです。
太陽があるおかげで、ぼくたちの身体は朝を認識し、太陽が沈んで暗くなると夜を認識します。
それによって睡眠覚醒リズムは24時間周期で回ってくれるというわけです。

一日部屋にこもってテレビゲームとかしていると、眠くなる時間がどんどん遅くなって遅寝遅起き型になってしまいやすいですが、早寝早起きをしたかったら外に出て日光を浴びることは必須!
生体リズムは、日光を浴びることで本来の健康的なリズムに調整されるのです。

朝の日光浴が肥満解消に!?

今年4月に、米オンライン科学誌「PLOS ONE」に、朝の日光を浴びることが人のBMIに影響を及ぼしている、という研究論文が掲載されました。
この論文によると、7日間の実験期間中、被験者(平均年齢30歳のボランディア54人)は光の浴び方と睡眠サイクルを測定するために手首にセンサーを装着し、食事の記録も取られました。

その結果、運動レベルやカロリー摂取量、就寝時間、年齢、季節に関わらず、朝の日光がBMIに影響しているという結果が出たそうです。またこの研究によると、光を浴びる朝の時間が早ければ早いほどBMIは低く、逆に遅ければ遅いほどBMIは高くなったそうで、BMIに影響を及ぼすには、最低20~30分間の日光が必要だということです。

肥満解消というと、「食事制限」「有酸素運動」を想像する人がほとんどだと思います。もちろんこれらも重要な要素ではあるのですが、朝起きてしっかり日光を浴びるという、一見なにげない行為が、実は身体の生体リズムを整え、健康でスリムな身体にしてくれているわけです。夏でも冬でもできるかぎり早く起きて、朝の光をしっかり浴びたいですね。

日光浴が幸せをもたらす!

「セロトニン」という言葉は聞いたことあると思いますが、これは脳内神経伝達物質の1つで、情動を調節して心の安定をもたらすため、「愛のホルモン」「幸せホルモン」などと呼ばれたりします。
脳内セロトニンが少なくなると、気分が落ち込んでうつ病になったり、キレやすくなったり、感情のコントロールができなくなります。

セロトニン研究の第一人者である有田秀穂先生によると、日光などの高照度光(2500~3000ルクス)によって脳内セロトニン濃度が上昇することがわかっています。ただ、どんなに明るい照明の部屋にいても1000ルクスくらいしかありませんので、高照度光を浴びるには日光がもっとも現実的ですね。
なお、セロトニンを増やす方法としては他に、歩行や咀嚼、呼吸などのリズム運動で、逆に慢性的なストレスによってセロトニンは減ってしまいます。

太陽は生命の源

「太陽の恵み」なんて言葉がありますが、何千年も昔から人は太陽を崇め、畏敬と感謝の念を抱いてきました。それがここ数十年の美白化粧品の登場によって「太陽光は1年中徹底して避けろ!」と言われはじめました。でも太陽を完全にシャットアウトして本当に健康的に美しくなれるのかと言うと、それは土台無理な話なんです。

なぜなら人はずっと太陽を求めて続け、太陽によって身体と精神の健康を維持して生きてきたわけですから。たかだか数十年程度で人間の身体は変わらないんです。

ぼくは冬の寒い日の朝のぽかぽかとした太陽光が大好きです。夏場のくそ暑い太陽は大っ嫌いですけどね!(笑)

前回お話したように太陽を過剰に浴び続けることはガンリスクを生じますし、シミ、シワ、そばかすも増えちゃいますのでそれも忘れずに。
でもぼくたちは、太陽の恩恵にあずかって生きているんだなあと感じます。
植物が光合成で生きているのと同じですね。