「カレワラ物語」PART.2~フィンランドという小国の賢い決断。人口と資源の少ない国だからこそ、教育重視

「カレワラ物語」PART.2~フィンランドという小国の賢い決断。人口と資源の少ない国だからこそ、教育重視

最も重要な国の基本は「人」

前回寄稿しました「カレワラ物語」の書籍レビューにつづき、フィンランドの魅力を語るPART.2ではフィンランドの教育についてご紹介します。

多くの人に「サンタクロースとトナカイ」「ムーミン」「白夜とオーロラ」の国として知られるフィンランド。最近ではOECD(経済協力開発機構)の調査で学力世界一の国として、その教育の質の高さが知られるようになりました。

私が初めてフィンランドを訪れたのは2000年のことでした。人口は日本と比べて20数分の1と少なく、資源にも恵まれているとはいえない、独立して100年に満たない国フィンランドが、北欧の一国として高い水準の社会環境を維持していることについて、とても不思議に感じたことを覚えています。よほど高度に最適化され、賢く運営されているに違いない……。

2013年春、夏にフィンランドで講座を行うことが決まったちょうどその頃、フィンランドの学力や教育についての記事を頻繁に目にするようになりました。改めてフィンランドについて調べていると、2000年に当地を初めて訪れた際に感じた疑問への答えが得られたように思われました。

1917年に共和国として独立したフィンランドでは、1968年から教育改革に取り組み、最も大切な国の資本を「人」と定め、将来国を担っていく人々の教育へと投資することを決めたそうです。90年代に不況に陥った際も、いずれ国から流出してしまうかもしれない企業資本にではなく、改めて教育分野に力が注がれたそうです。

フィンランドではもともと、教師になるためには少なくとも修士以上の資格が必要とされており、学校で教える内容や方法についても、大幅に現場の裁量に任され、それが教師のモチベーションと創意工夫や質の向上を刺激しているといいます。

競争原理によってではなく、反対に落ちこぼれをつくらないような配慮がなされ、また経済格差によって教育の格差が生じないようにとの配慮から、幼稚園から大学院に至るまで、給食費なども含め学費は無償。教師は社会的に尊敬されている職業であるそうです。子供たちに教育がきちんと行き届き、学び、成長する機会が保障され、尊重されている。

たとえ結果が出るまで時間はかかっても、最も重要な国の基本である「人」への教育に、手間と時間とお金を投資するという、長期的な視野と先見性がなくてはできない決断をしたこと。さらにそれらの決断を数十年にわたって継続し、しかも変革し続けられること。私はここにフィンランドという国の真の賢さを見る気がします。

そのような教育環境を当たり前のものとして享受している当のフィンランドの人たちは、特別意識していないかもしれません。しかし、フィンランドの人々はその基礎教育課程において「幼いころから競争によって消耗疲弊することなく、一人の人間として成長する道のりを尊重され、何を選ぶにせよ、自発的で自立的に生きられるよう本質的訓練を受けている」と言えるのかもしれません。

学ぶことへの高い意識が国の財産になる

私個人の体験となりますが、フィンランドでの講座では、平均年齢は40代から60代の、医療、教育、ジャーナリズム、経営など、さまざまな分野に携わる方々が参加されました。生涯にわたる学びを尊ぶフィンランドの人々らしく「新しい視点を学べて嬉しい。これからももっと学びたい」「共通の興味や考えをもつ人々と、世界観を変容させるという体験はなんという喜び」「全員が来年の講座を心待ちにしています」などと熱心なフィードバックをいたただきました。私も、日本だけでなくフィンランドでも、霊性の探究に真摯に取り組む人々に出会えたこと、そして彼らの暖かな歓迎と学びたいという熱意に、深い喜びと感動を感じています。

フィンランドの教育への投資の結果は学力調査に表れていますが、最も大切なのはその基本となる「人は最も重要な財産」という理念ではないでしょうか。フィンランドは、人口と資源の少ない国だからこそ、人を大切にし、教育を重視する。出生率・人口が減少しつつある日本も、フィンランドを初め他国の賢明な取組みから、多いに学べるのではないか。そんな思いもよぎるのでした。

~続く~

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「カレワラ物語」PART.1