人間関係・自然との共存……現代社会が抱える課題と同じ!?「だれも知らないムーミン谷」

人間関係・自然との共存……現代社会が抱える課題と同じ!?「だれも知らないムーミン谷」

アニメは原作の後日談だった!
ムーミンによる世界再生って何?

北欧生まれの「ムーミン」のシリーズは世界中に愛される物語です。「子ども向けのお話」という枠組みをはるかに超えた、味わい深い言葉、哲学、詩情…。心疲れた大人も和み、そして癒されるファンタジーですよね。でも、そこには意外に知られていない「秘密」がたくさんあったのです! 本作にはその秘密がぎっしり詰まっています。

だれもが憧れるユートピア成立の前史から、ムーミン一族の「もう一つの顔」が浮かんできます。トーベ・ヤンソン生誕100 周年を迎えた今年、今までになかった、まったく新しいムーミン読解で、ムーミンとムーミン谷の「謎」と「秘密」を明かす驚きの新刊です。

あなたの知らないムーミン谷Q&A
物語の謎が解き明かされる!?

【Q1】原作とアニメは違っているの?

アニメ『楽しいムーミン一家』は、ムーミンの原作完結から20 年後に、トーベ・ヤンソンの完全監修のもと日本で制作されました。このとき原作に以下の変更が加えられます。
① ムーミンたちが原作で抱えていた人間関係の葛藤や自然の脅威などの困難が大きく省略された。
② さらに彼らの平穏な暮らしぶりを描いたアニメ・オリジナルのストーリーが多数加えられた。
③ キャラクターの見た目が、原作の不気味なモノクロの姿からパステル調の可愛らしい姿に生まれ変わった

つまり、アニメのムーミン谷は、最初から存在する完璧なユートピアとして作り替えられたのだと言えます。このため、アニメは原作で生じるさまざまな葛藤を乗り越えたあとの「後日談」として位置づけられます。

1990 年に放映されたアニメ『楽しいムーミン一家』は日本で大ヒットし、繰り返し再放送されています。また、フィンランドだけでなく世界中で放映され、ムーミンと言えばアニメの絵柄・ストーリー・世界観が思い浮かぶまでになりました。

しかし、アニメだけではムーミン谷の真の魅力はわかりません。原作に描かれる葛藤を知ることで、アニメのユートピアがいっそうかけがえのないものに見えてきます。本書はこの点を解き明かしています!

【Q2】ムーミン谷の知られざる特徴って?

ムーミン谷は、まわりを海と森に囲まれ、外部から入ることが難しい、守られた場所にあります。ところが、そこでは、私たちの住む日本と同様、嵐や竜巻・洪水といった自然災害が多く発生し、そのたびにムーミンたちは屋敷が壊されるなどの甚大な被害に遭います。
また、谷の住民は、北欧の厳しい冬にも苛まれています。彼らが立ち向かわなくてはならないのは、他の児童文学によくあるような「悪の存在」ではなく、自然そのものなのです。「厳しい自然とどう向き合うのか」――これが、本書が提示する、ムーミン物語の第1のテーマ(課題)なのです。

【Q3】ムーミンたちの出生の秘密とは?

実は、ムーミン以外の谷の多くの住民は、谷の外から移り住んできた「孤児」や「移民」だと考えられます。ムーミンパパは孤児院出身ですし、2 作目『ムーミン谷の彗星』でムーミンが出会うスニフ、スナフキン、スノークの女の子(アニメでは「ノンノン」もしくは「フローレン」)は、親もなく子供だけで旅をしていて、そのままムーミン谷に住みつきます。ミイには例外的に家族がいますが、後にムーミン一家の養子として引き取られるところをみると、複雑な家庭環境を背負っているようです。フィリフヨンカ、ヘムレン、トフトなども親戚からやっかいもの扱いされる独り者です。彼らは出会って日の浅い「他人同士」であり、そのため彼らは人間関係に問題を抱えています。
しかし、アニメだけではムーミン谷の真の魅力はわかりません。原作に描かれる葛藤を知ることで、アニメのユートピアがいっそうかけがえのないものに見えてきます。本書はこの点を解き明かしています!

【Q4】ムーミン谷には「もう一つの世界」がある?

ムーミンたちは通常秋の終わりに冬眠に入り、次の春を迎えるまで目を覚ましません。そのため冬の時期は原作全9 作品のうちの前半5 作品では描かれません。

ところが、6 作目『ムーミン谷の冬』では、ムーミンが冬眠の途中、偶然目覚めたことで、もう一つの世界(冬の世界)が存在していたことが発見されることになります。冬の世界は、生き物の特徴、文化、コミュニケーション手段さえもまったく異なる、いわば「正反対」の世界として描かれます。冬の生き物の特徴は以下の通りです。

多くの場合、輪郭がぼやけた黒い塊のように描かれる。不気味な姿をしていたり、目に見えないこともある。
② ムーミンが話しかけても返事をしなかったり、意味不明のことばを返してきたりする。
③ 夏のあいだは「ひみつのあな」とよばれる谷のどこかに隠れている。
④ その正体は、ムーミンたちよりさらに原始的な自然霊だと推定される。

今まで明らかにされていなかったムーミン谷の秘密たち。
読み進めれば、登場人物たちが抱えている人間関係や自然環境との共存の課題は、実は驚くほど私たち現代人の課題と相通じていることに気づくはずです。

「だれも知らないムーミン谷」
著者:熊沢里美
出版:朝日出版社
1,598円(税込)