私と他者を分けるものはあるのか?~ティクナットハン師「本当の名前で呼んでください」

禅の世界的指導者であり、「応用する仏教」の実践者であるティクナットハン師。
師は、「すべては“インタービーイング(相互共存)”の関係で成り立っている」という考えのもと、本当に幸せになるための方法を指南しています。
これまで数多くの詩を生み出してきたなかで、代表作とも言われる詩をご紹介します。


「本当の名前で呼んでください」

明日、私が出発すると言わないでください。
今日まだ、到着しているのだから。

深く見てください。私は毎秒、到着している。
そして、春の樹の蕾(つぼみ)となる。

羽がひよわで、新しい巣でさえずりはじめた小鳥となる。
花のなかにいる青虫となる。
石にひそんでいる宝石となる。

私はまだ到着している。笑い、泣き、恐れ、望むために。
私の心臓の鼓動は、すべての生きものの、出生と死にほかならない。

私は川のみずもで変態する蜻蛉(とんぼ)。
私は春になって、蜻蛉を食べる頃にやってくる鳥。

私は澄んだ池で幸せに泳いでいる蛙。
そして私は、静かに近づき、その蛙を飲み込む小蛇。

私はウガンダの子供、痩せこけて、脚が篠のように細い。
そして、私は武器商人。ウガンダに死の武器を売っている。

私は十二歳の少女。小舟に乗った難民。
海賊に犯されたあと、大海に身を投げる。
そして、私は海賊。心はまだ、見ること、愛することができない。

私は党の中央委員。大きな権力を手にしている。
そして、私は人民にたいして、「血の債務」を払わなければならない者。
強制労働収容所でゆっくりと死の道を辿っている。

私の喜びは、春のよう。暖かく、生命の歩みのすべてが、花を開かせる。
私の苦しみは、涙の川のよう。あふれて、四海を満たす。

すべての、ほんとうの名前で呼んでください。
そうすれば、私の泣き叫びと笑いが、すべて、同時に聞ける。
そうすれば、私の喜びと苦しみが一体であるとことがわかる。

すべての、ほんとうの名前で呼んでください。
私が目覚め、
心の扉、慈愛の扉が、開け放しになるために。

『微笑みを生きる』より
ティク・ナット・ハン著


「私」は海賊に犯され、海に身を投げた十二歳の少女であり
「私」はその少女を犯した海賊でもある。
「私」とは一体何なのでしょうか。
「私」と「他者」を分けるものはあるのでしょうか。

この言葉の真意はそれぞれがそれぞれの言葉で受け止めてください。
あなたの「ほんとうの名前」は何ですか?

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