神話の記憶――人が「面白い」と感じる物語の共通パターン

人を引き付ける物語に隠された法則

どんな映画や小説を「面白い」と思うかは、各人各様の好みでしょう。
当たり前ですよね。誰かに「このお話を面白いと感じろ!」などと強制されることなんて絶対に無理だし。
ところが、ある「基本構造」を持つ物語を見ると、なぜか人はその物語を「面白い」と感じるという法則が存在するのです。

米国の文学者ジョーゼフ・キャンベルは、世界中に伝承されている神話を研究し、その多くに地域・民族・宗教を超えた「共通パターン」があることを見いだしました。
神話に共通する基本構造とは、次のような筋立てです――。

【出立】 
本来は貴い身である若き主人公が、何らかの理由により貧しい境遇で育てられる。そしてある日、自分の決意や思いがけぬ出来事をきっかけに、冒険の旅へ出る。
 ↓
【試練】 
旅ではさまざまな試練に直面する。未知の地で助けとなる仲間と出会ったり、自らに秘められた才覚を発揮しながら苦難を乗り越え、主人公は成長していく。
  ↓
【帰還】 
最後に、主人公は勝利する。そして手にした宝物やお姫さまと一緒に本来の故郷へと帰り、崇高な英雄となる。

こうした物語の類型は「貴種流離譚(きしゅりゅうりたん)」とも呼ばれ、日本では「桃太郎」がそうです。
この物語構造を宇宙スケールに拡大して映像化したのが「スターウォーズ」で、世界中で爆発的にヒットしました。ほかに「ライオンキング」をはじめディズニーの冒険アニメにも多く見られるし、さらには「ドラゴンクエスト」などロールプレイング・ゲームも、だいたいこのパターンにのっとっていますよね。

魂の成長の過程こそ、神話の源流

けっこうありきたりの筋立てとも思えのですが、ではどうしてこれを人は共通して「面白い」と感じるのでしょうか?
人類がこうした神話を世界のあちこちで何百年、何千年も昔から脈々と語り継ぎ、さらには映画やゲームなど「現代版」までつくり続けてヒットしているわけだから、潜在意識的な理由がきっとあるはずです。

学者などの解説では、「自分自身がかつて母胎を離れ産道を通って生まれ出たときの記憶になぞらえているから」という見方もあります。

でもここで、ちょっと踏み込んだ解釈もできるでしょう。
多くのスピリチュアルな教えで、共通して語れられている話――すなわち、神が自らを知るために、小さな魂となって本源を離れ、神であることを忘れてこの三次元世界であらゆることを経験し、最後にワンネスへと帰る――という話。
世界の神話の共通パターンは、まさにこの「魂の物語」の通りといえますよね。

ではこの「魂の物語」をそもそも誰がつくったかといえば……、それはきっと、ワンネスの魂としての「本当の私」自身なのでしょう。
人は、「本当の私」が作った自らの物語の記憶を、心の奥底で覚えているのだと思います。

昔の神話の語り手は、おそらく自らの根源的な魂の記憶をもとに、このようなストーリーの物語をつむぎ出したのでしょう。
そして神話を聞く人々も、自らの魂の記憶に照らし、その物語を「面白い」と感じる――
そう感じて当たり前といえます。だって、もとは「自らがつくった、自分自身の物語」なわけですから。

そしてその物語は、今まさに自分自身の目の前で上演途中なのです。
「試練」を経て、「帰還」へと向けて――。