ティクナットハン師匠の禅生活1週間~ライター&編集長の珍道中「いまが瞑想のとき」

ティク・ナット・ハンに学ぶ“マインドフル”な生き方

TRNITYの遠藤編集長が、「ティクナットハンさんにインタビューするので、一週間、プラムヴィレッジのリトリートに同行しませんか?」と、お声をかけて下さった。なんて、美味しい仕事!と、間髪入れず、二つ返事でお引き受けした。
ティクナットハン師は、いつか会いたいと思っていた人物だったし、リトリートという魅惑的な響きに、瞑想三昧の心穏やかな時間が過ごせそう……と、心はワクワク。けれども、編集長との旅は、ハプニングから始まった!!

<以下、()の青色の部分は編集長遠藤のコメントです>

最初からハプニング?!

何故か私の腕時計が10分遅れていて、乗るはずだった電車が二人の目の前を走り去って行った。が~ん! 今思うと、甘すぎる私の考えに対する天からの警告だったのかもしれない。

(遠藤談:でも、時計が狂ったお陰で乗った電車では、最後の方で20代とおぼしきかわいい女性から、話しかけられたりして、そのうち、私が有名なお坊さんに会いに行く、と彼女に行ったら、「もしかしてティクナットハン?」「そうそう」「えー、私も行ったよ」などそれは奇跡的な偶然という体験もしましたよね。かなりの低確率だったと思うよ。だから、結局間に合ったし、良いハプニングでしたね。敦子さんのお陰です)

東京のスタッフの迅速な対応と、道中出逢った方の親切のお陰で、何とか予定通りに辿り着いたプラムヴィレッジ。迎えて下さったシスター達の、まばゆいばかりの笑顔が、何より印象的だった。

とにかく忙しい!

待ちに待ったリトリート。
スケジュールは日によって違うけれど、基本的に、朝5時半からのシッティング・メディテーション(座る瞑想)、朝食の瞑想、ウォーキング・メディテーション(歩く瞑想)と続いていく。

午後の部は、昼食の瞑想の後、タイ(ハン氏の愛称。ベトナム語で先生の意)の法話や、ダルマ・シェアリング(参加者間のわかちあい)がある。夕飯の瞑想までの間に、食事の下ごしらえのお手伝いやお掃除、庭師が切ったプラムの枝を移動したり、シスターたちが買ってきた大量の食材を運んだり。男手がない分、当然、力仕事もある。

一日の最後は、やはりシッティング瞑想で締めくくる。つまり、起床から消灯時刻まで、とっても忙しい!! 自由時間に読書でもと、何冊かの本を持参したけれど、開く事は一度もなかった。それに加えて、慣れない共同生活へのとまどいが大きかった。編集長の他、ビアリッツから参加している女性(とても優しかったけれど)との同室での生活。もともと神経質で、実家でも、母に気を遣って安眠できない私なのに、ここでは、不思議な程、良く眠れて助かったけれど。

(遠藤談:そうそう、独り暮らしが長い女性には2段ベッドを含む共同部屋はきついわね。けれどね、あぁ、もう消灯時間だな。髪乾かすの急がなきゃ。夜中のトイレは静かに、など、なんて言うんだろう、義務とかだけじゃない、ルームメイトに快適に過ごしてもらいたいという想いからの気遣いはそれ程苦にならず、どちらかと言えば、心のヒアルロン酸のようなものでしたよね。あぁいうところでは、優しさとか利他とか、自然に学べるようになっていまーす)

神聖な儀式の間で

予想外にタイトなスケジュールで行動するうち、2日が過ぎた。
私は、苛立ちを覚えていた。メディテーションの間も集中できない。食べることも、歩くことも、りんごの皮むきも、全ては瞑想であり、マインドフルネスのトレーニングだというタイの教えが、実践できていない。セラピストという仕事上、健康的な生活を心がけ、ストレスから程遠い日常を送っているはずなのに、心を静められない自分自身に失望していた。

そんな折、プラムヴィレッジの儀式を見学させていただくという幸運に恵まれた。十戒を受けて二年経ったシスターたちが受ける、シキシャマと呼ばれる六法戒。身も心も仏に捧げると決意した人だけの神聖な空間に身を置いたとき、文字通り、心洗われる思いがした

一時間弱の儀式の間、思考は止まり、ただ目の前の美しい光景を泣きながら見ていた。たった今、この瞬間、生きていることが、ただただ有難く思えた。

(遠藤談:本当に忙しかったですよね。薪とはいえない枝をよいしょ、よいしょと運んだり。ただ、瞑想は特別なことではなく、神聖さはいつも身近にあるということを、プラムヴィレッジで1週間滞在すると、なかからじわじわじわぁと感じてきますよね。きっと、あのシキシャマは後半の方で体験したので、もう準備ができていたのではないでしょうか? 私はあのシキシャマを拝見して、いわゆる日常の世界、誘惑も多く、堕落も多く、だからこそ聖なるものも選択次第、学ぶ機会が多いこの日常世界。本当に私たちが住む日常は聖なる世界への道と実感しました)

壁に飾られた師の言葉

その晩の瞑想は、始まった途端に深く入った。1時間が5分のように感じられた。
ヴィレッジの至る所に、タイが毛筆で書いた言葉が飾られている。私の一番のお気に入りは、お茶の瞑想のためのティーバッグやコップが置かれているテーブルの横にあった一枚。

「Arrète ta penseè bois ton thè」(思考を止め、お茶を飲みなさい)

プラムヴィレッジを後にしても、一瞬、一瞬を、マインドフルにしっかりと意識して生きていこう……と、思った。

 

■フランス・プラムヴィレッジのリトリートレポートは本誌で詳しくご紹介しています。→TRINITY Vol.50の詳細ページ

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●ハン師の教えを引き継ぐ導師たちによるセミナーが開催

師の禅的思考と実践を、経営に取りいれたいという世界中の企業から声が掛かり、米国シリコンバレーのGoogle本社からも講演に招かれています。今回、そのティクナットハン師の教えを引き継ぐ導師の来日が決定! ビジネスに活かせる手法を学ぶセミナーを開催します。(※ティクナットハン師ご本人は来日しません)

『すべての社会人に必要な、人間力を養う1Dayセミナー』
どう部下を叱ればいいのか、どう同僚に気持ちを伝えればいいのか?
指導的立場のみならず、職場でも営業先でも問われるコミュニケーション能力。
世界的禅の指導者であるティクナットハン師の教えをビジネスでも応用し
退職の理由のトップに上がる人間関係の基本、伝える力・受け取る力を学ぶ1日

【開催日時】2014年5月10日(土)10:00〜17:00
【場所】東京グランドホテル 桐楓の間(キリカエデノマ)
【料金】15,000円

■お問い合わせ・お申し込みはこちら■
株式会社エルアウラ Tel.03-5778-3290
http://www.trinitynavi.com/products/detail.php?product_id=933
※その他の来日・企画は、『微笑みの風』(http://www.windofsmile.com)をご覧ください

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