一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.36 『世界の果ての通学路』

子供たちは遠い遠い学校へ行く――
彼らの通学路を追う感動ドキュメント

私たちは恵まれている。
不況だとか生活保護とかいろいろあるけれど、世界的にみても日本人である私たちは恵まれている、世界でも特別に豊かな国である。それをなにかにつけ思い出すことが必要だと思う。なかなかできないけども。
この映画は何時間もかけて学校へ通う4人の子供たちを追ったドキュメンタリーだ。

学校に行って学ぶということが、命がけ。
ケニアの11歳のジャクソンは、野生動物が出没する危険なサバンナを、片道2時間かけて妹を連れて学校へ通う。象の襲撃を避け、ジャクソンと妹は小走りで道なき道を毎朝行くのである。
モロッコのザヒラは片道4時間!という学校へ毎週月曜日に友だち3人と通う。道というか、ほとんど岩山のようなところを歩いていくのだ。途中で車に乗せてもらったりもしてるようだが、女の子の足では大変な道のりだ。

インドのサミュエルは足に障害があって、粗末な車椅子を弟ふたりが押して片道1時間15分の道のりを通う。ボロボロの車椅子はタイヤが外れて動かなくなったり、砂地で埋まってしまったりトラブル続出。その度に幼い弟たちは大騒ぎしながら兄の乗った車椅子を押しつづける。嫌な顔などすることもなく。

アルゼンチンのカルロスは片道1時間半の道のりを妹を後ろに乗せ馬に乗って6歳から学校に通う。誰もいない石ころだらけの道をしばらく行くと、やっと馬で通う友だちに遭遇する。

子供たちの夢を語る姿にジーン
けなげな天使たちよ、がんばれ!

4人の子供たちの通学の様子の興味深いこと!もう見入ってしまう。みな学校に行くことを楽しみにしている様子が伝わってくる。
そして、「学びたい。それは、夢があるから」と語るキラキラした瞳に思わずこちらはうるうるしてしまう。貧しさから這い上がるためには教育しかないが、それを彼らは知っていて学ぼうとしている。かつての日本もそうだったのだが、今はそうではない。

こんなキラキラした瞳、表情の子供って、あんまり日本じゃお目にかかれない。
キラキラした子供たちって観ているだけで、気持ちが明るく、高揚させられるところがある。いつまでも観ていたい。飽きないのだ。

この映画を観ながら思い出したことがある。
私も小学校の登校は、徒歩で片道1時間かかった。おかげで丈夫になったと思う。兄と一緒だったのだが、兄とその友だちがいつもみち草をして、私はイライラしながらも一人で行くことができず、よく遅刻して半泣きになっていた。あの道のりはほんとうに遠かった。しかし、あの6年間通いつづけた道は私には貴重な思い出の道である。その道のそこここに数限りない思い出がある。私の人格の基礎のかなりの部分があの道でつくられたように思う。

基本的な生き方を教えられる
恵まれた自分を振り返ろう

映画に登場する子供たちは遠い学校へ通えることはある意味幸せなのかもしれない。いや、彼らの顔を見る限りでは幸せだろう。りっぱな夢もあり、そのための通学路である。どうぞ、彼らが夢を叶えても変わらずキラキラした瞳と表情を失することがないことを願う。
まったくもって、基本的な生き方を今さらながら教えられるような作品だった。
定期的に観たい映画である。自分の恵まれた位置を知るためにも。

『世界の果ての通学路』
4月19日(土)より、シネ・リーブル梅田/京都シネマにてロードショー!
4/26より、シネ・リーブル神戸
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