一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.35 『1/11 じゅういちぶんのいち』

累計60万部突破の人気漫画の映画化は
ストレートに胸にきます!

幼子の何気ない言葉が胸を打つように、時に稚拙な表現というのはこちらの胸にストレートにキタりする。本作が長編デビュー作となる片岡翔監督は、決して上手いとはいいがたい若い俳優たちを使い、また、演出も心もとないながら、幼子の言葉のように印象的な作品を作り上げた。
累計60万部突破という泣ける青春漫画として大人気の漫画が原作だそうだ。
いかにも漫画っぽいキャラクターが続出で、でも、しっかり話は巧妙に出来ていて、セリフは考え抜かれた珠玉のもので、漫画の映画化ってのは、失敗なしだな~なんて今さらながら感慨深く思ってしまった。

話は高校生7人の事情を描く群像劇。サッカーを一度諦めたものの、ある出会いによって再び始めたいと思い、人数の足りない部員募集に励むサッカー部部長。親に部活を反対されているサッカー部マネージャー。中学時代野球少年だったが、高校になってから野球も辞め日々鬱屈しているイケメン君。写真オタクの変人少女。演劇部の熱血部長。新人演劇部員、そして……。

スピリチュアルなラストに涙……
みんな悩んでいるんだよね

最初のシーンに登場する髪の長い女の子が誰だかなかなか分からないのだが、彼女が誰か、また彼女の謎が解けるラストは思いがけず涙が溢れた。こういうスピリチュアルな展開はとっても弱い。人の想いの強さを実感できるからだ。そして、高校生の彼らが日々悩み、苦悩し、挫折し、涙を流し、勇気をだし、成長していく姿に思いのほか心をかき乱された。みんな悩んでいるのだ。そして、何か、突破口を見つけたいと思っている。それが私自身の気持ちとシンクロして、涙を次々流させる。一人じゃない、という勇気をもらえる。まさに泣ける青春漫画!の、映画化だ!

ラストは感動だけど、中盤のイケメン君がサッカー部部長に1 /11の意味をガツンと説かれて愕然とするシーンも見どころ。ここはかなりうるっとしました。とっても青臭いシーンなんだけど、セリフが金言、磨きぬかれているんだから。ここらへん、漫画家の凄さを感じた。また、人が変わるとこを観るのってほんと、快感、カタルシスです!
青臭い、稚拙なものって、ずっと人の心の奥底にあるものなのかも……ね?

 

『1/11 じゅういちぶんのいち』
4月5日(土)より、シネ・リーブル梅田ほかにて全国ロードショー!
© 2014 中村尚儁/集英社・「1/11 じゅういちぶんのいち」サポーターズ