『ルーンマスター杉原梨江子 ~北欧の聖なる文字ルーンからの伝言~』 第18回

芽

春になりましたね。もうすぐ草花がいっせいに芽吹くでしょう。緑がぷくぷくと音を立てるのを聞く日も近いようですね。え、音が聞こえるの? と思ったあなた。耳を澄ませてみてください。芽がぷっくりふくらむ音、花がひらく音は確かに聞こえるのです。時には精霊たちがふわ~っとあくびする吐息も……。春の目覚めの音色を楽しんでみてください。

人間の善も悪も突きつけるオーディンの格言

今日は、ルーン文字の智恵を学びたい人にぜひ知っていてほしい、北欧の神様オーディンについてお話しします。オーディンがいなければ、私たち人間はルーン文字を知ることも、その神秘の力を得ることもできなかったでしょう。天地創造を行った万物の父であり、どんな戦いでも勝利をおさめる無敵の神様。肩にカラスのフギンとムニンをとまらせ、世界中の情報を探らせています。ルーン文字や呪文を自在に操り、空も大地も冥界も自由に駆ける、魔術の遣い手でもありました。だから、最近ではゲームなどでも英雄的な存在として描かれていることが多いのですが、じつは結構、ワルな男なんです。欲しいモノを手に入れるためには手段を選びません。名前をいくつも使い分けて、変身してはウソをついたり騙したり。負けず嫌いで気まぐれで、運命を狂わされた人間は数知れず。一方で、圧倒的なパワーをもって不可能を可能にするため、ヴァイキングたちから絶大な信頼を得て崇拝されていた神様でした。

私がオーディンに惹かれるのは、善と悪との両方の顔をもっていることと、絶対的に自分を信じ、欲しいものは確実に手に入れていくところです。生きることは楽しく、幸せなことばかりではありません。悔しい思いで涙したり、怒りにふるえたり、悲しみから逃れられないこともあります。激しい嫉妬の奥には強い強い愛があるかもしれない……。人の心は表裏一体、善悪混合。騙される側にとっては怖い存在ですが、強くて優しいだけではないオーディンの物語は人間の真の姿を私たちに突きつけてきます。

ネガティブな感情の裏に秘めた、あなたの本当の声は?

そして、オーディンが人間に残してくれた“ルーン文字の智恵”にはネガティブな感情の裏側にある、自分の本当の気持ち―「幸せに生きていきたい」―という真実に気づかせてくれるように思うのです。さらには、自分はどうすべきか?という行動の指針も。オーディンが残した格言には他者に迎合することなく、自分の信念を貫く人生を送る秘訣が描かれています。ルーン文字とともに紹介しましょう。ドキッとするかもしれません。彼が残した人生の智恵は、あなたの心にどんなふうに届くでしょうか?

人類
【人類のルーン/マン】
オーディンの格言:「他人の心の中に見つける知恵は頼りにならない」
魔法のチカラ:正しい道を知る、自分を愛する力、人生の軌道修正

ダイス
【ダイスのルーン/ぺオス】
オーディンの格言:「愚か者は毎晩目を覚ましてはくよくよと考える。朝がくると疲れ果てるが、すべては前と変わらず、みじめなままだと気づく」
魔法のチカラ:正しい選択、試練を楽しむ、冒険心、遊び心

言霊
【言霊のルーン/アンスル】
オーディンの格言:「愚か者は人が集まる場所では黙っているのがいい。あまり話さなければ、おまえが何も知らないことに誰も気づかない」
魔法のチカラ:的確に語る力、コミュニケーション力、沈黙の勝利

ルーンマスター、聖樹・巨樹研究家 杉原梨江子
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