アンガーマネジメント Vol.18「あなたの記憶は本物?」

人間の記憶はあてにならない

「怒り」の感情は、最長どれ位続くと思いますか?

怒りの「持続性」を断ち切っていくのがアンガーマネジメントのポイントでもあるのですが、よく話を聞くと「普段は忘れていても、ふと思い出すとやっぱりムカつく」という、いわゆる「思い出し怒り」のパターンが多い様です。

記憶はあてにならない?!

今日はそんな「思い出し怒り」しやすい方に、私から1つ質問があります。

「あなたの記憶は、真実ですか」

当たり前だ!と答える前に、この調査結果を見て下さい。

米国同時多発テロが起きた直後、米国でNational Studyという大規模な閃光記憶(個人的に重大な出来事や、重大事件に関する記憶)に関する調査が行われました。

被験者はニューヨーク、ワシントン、ボストンなどに在住する3000名。かつて閃光記憶は、強烈な感情を伴っているので経年とともにその詳細な記憶が失われにくいと考えられていました。

しかし、実験では全く逆の結果になったのです。1年後には記憶の詳細(自分がどこに誰といたか、どうやって逃げたか、ニュースを見てどう感じたか等)の37%に変容が見られ、3年後にはその値が43%になりました。言葉を変えると、3年経過して事件当時の様子を真実の通り正確に覚えている人は、約半数しかいないという事になります。

感情の記憶は変化しやすい

このような恐れを伴った記憶は、海馬と扁桃帯の連携によってより強烈に頭の中に残りますが、その詳細は思い出す度に変化してしまうのですね。

更に厄介なのは、私たちが「記憶は書き換えられている」という事実に気付かない点です。

特に「その時どのような感情だったか」という「感情に関する記憶」は更に変容しやすいという結果が出ています。

「自分の感情記憶の正確性にどの程度自信があるか」も調べた所、実際は1年後で40%しか正確性がなかったのに関わらず、「自分の感情記憶の正確性」について1−5の5段階評価で自信の程を聞いたところ、被験者の平均点は4点(つまりほぼ正確に覚えている)でした。

誰かをずっと恨んでいるとしたら、それはあなたが作り出した、架空の記憶のストーリーかもしれません。そしてそのストーリーは、全て自分の都合のよいように書き換えられるのが常です。

不確かな記憶を頼りに怒り続けるのは虚しい

最初の質問に戻ります。
怒りは最長どれ位続くと思いますか?

答えはエンドレス。
貴女自身が「やーめた」
と思わない限り、誰も貴女の怒りを止める事はできません。

しかもその怒りが全く事実とかけ離れていたとしたら、とても虚しいですね。

まだ実感できない方、思い出して下さい。

貴女は3年前の3月11日、どうやって家に帰りましたか? かかった時間は? 寒さは? 翌日買物に行ったお店で、棚に食糧はどの位ありましたか?

私は当時宮城で被災しました。揺れが収まって外に出た時、雪が降っていたかさえ、覚えていません。帰路の途中で寄ったコンビニは、電気が消えていたのは覚えていますが、棚にどのくらいの食糧が残っていたかは全く覚えていません。

一生に一度遭遇するかどうかの出来事の記憶さえ、この程度の正確さなのです。

[参照]
How Accurate Are Memories of 9/11?
サンドラ・アーモット、サム・ワン『脳のしくみ』(2009年、東洋経済出版)

 

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