“ 響き“を感じてみる - 気づきの物語 - あなたは今日、どんな響きと共鳴しますか?

白梅

“ 響き“ と聞いて、どんなことが思い浮かぶでしょう?

梅の花の香りが漂う頃になりましたね。
一番冷え込む時期に蕾を膨らませる梅を観ていると、自然の豊かな力に励まされるような気がします。

私たちは、朝目覚めてから夜休むまで、そして休んでいる間、夢の中でも、ずっと、何かの”響き“ の中にいます。
小鳥の声、風が通る音、メールの着信音、好きな音楽、お湯が沸く音、子どもの笑い声、猫の密やかな足音、駅のアナウンスなど、耳に直接入ってくる音波のほかに、素晴らしい絵から醸し出される空気感、清浄なご神域に流れる雰囲気、古代建築から感じられる力、香しい花の香り、美味しいお料理の余韻、そして、大好きな人の体温なども、波動として伝わって来ますね。

あなたは、そっけないように聞こえる言葉の根っこにある優しさや、それとは逆に、丁寧な態度の底にある傲慢さを感じたことはありますか? 或いは、何かをする時に、自分の内側から湧き上がって来る違和感のようなものに気づくこともあるのではないでしょうか?
街を歩いていて、ふっと入りたくなるお店があれば、近づきたくないと感じるお店があったり、心地いいと感じる香りと、そうでないものがあったり、同じ種類の天然石でも、こちらは何だかいい感じ……というのもありますね。
また、泣いている赤ちゃんが、どうしてほしいかが分かるのは、お母さんにとって珍しい事ではないでしょう。

周りに溢れる圧倒的なほどの情報や、内側からの”響き”から、私たちは、その時々、心が向いたことに焦点を絞って受け取り、共鳴し、そのほかの情報は排除しているとも言えます。

心身共に鍛錬された武術家であれば、相手が動く前に察知して、自身の次の動きを自然に発現します。相手の内側で既に動き出している、微細なエネルギーを感知出来ているのです。
私の太極拳の師は、ある時、素早い動きで対する推手(すいしゅ)をしながら、突然飛んで来たボールを、瞬時に片手で素早く受けて下に落とし、何事も無かったように動きを続けられました。目の前の相手に対しつつ、意識は大きく広がっていて、遠くから飛んで来るボールのエネルギーを、目で見ることなく感じて - 観えて - いたのですね。相手の動きだけに集中していたら、ボールが当たっていたでしょう。

意識的に “響き”を聴くことで、開かれてゆく感覚

武術の達人でなくても、日々何気なく感じているさまざまなエネルギーの波“響き”を「意識的に感じる」練習をしていくと、これまで見過ごしていたことに気がついてゆきます。それはまるで、新たな世界を発見してゆく旅のようです。

先人たちは、意識が何ものにも捕われず、あらゆる可能性に開かれている状態を”空”と表現してきました。ありのままを”観じ“ ている瞬間は、頭の中でひっきりなしに動く思考や想念の波から離れ、過去の体験から来る怖れや劣等感などから解放されています。それは自分が作ってきた枠を超えて自由になることであり、だからこそ、“空”という状態にアクセスする事ができる状態なのでしょう。

そういった開かれた意識でいる為に、古来からさまざまな瞑想方法が伝えられてきました。静かに座って目を閉じる瞑想でなくても、日常生活の中で、起きて活動している時間を瞑想状態にすることが可能です。

音楽や会話とともに流れて来るものを聴いてみる、今目の前にいる人の存在を丸ごと感じてみる、自然の景色や空気の密度を感じたり、口にする食べ物を全身全霊で味わってみる、本の行間を感じてみたり、お香の香りを聴くこと(香りは、”聴く“と言いますね)、インターネットのページから発しているエネルギーに注意を向ける、身体からのサインを受け取ってみる、嬉しさや悲しさの波を感じたら、ただ味わってみる ……そんな風に、周りや内側から伝わって来る“響き”に意識を向ける練習をしていると、情報を受信する感覚が敏感になり、また、エネルギーの質の違いも分かるようになってきます。
そして、自分が、どんな”響き”を発しているのか、どんな”響き”に共鳴しやすいのかに気がつくでしょう。

こうなってくると、認識している世界が変わります。
自分の細胞を構成している分子、素粒子が微細に振動していたり、また、広大な宇宙にある無数の銀河がダイナミックに動いていることまでも、自身の呼吸を感じつつ、同時に感じとることができるかも知れないですね。

これからの連載で、”響き”にまつわることを、色んな観点から取り出してみたいと思います。

あなたは、今、どんな”響き”を聴いていますか?