アロハ(Aloha)のダーマ(徳)~スピリチュアルな実践としてのアロハと日本の禅との関連性~

ハワイ

日本の禅僧がハワイのカフに託したこと

ハワイにある臨済宗の禅寺、超禅寺の田上老師が、カフ(Kahu)であるカウイラ・クラーク(Kauila Clark)先生が、高さ50センチから75センチ程もある壺を既に20個以上作っていた陶芸室に入ってきました。詳しくない方のためにご説明しますと、高さが50センチから75センチもある壺を作るのはたいへん難しいのです。

「お元気ですか?」と田上老師が尋ねると、クラーク先生は
「はい」と答えました。
「お父様が癌に罹っておられますね」と田上老師は言い、
「どうしてご存知なんですか?」とクラーク先生は尋ねました。

クラーク先生は父親が病気であることをその前夜に知ったばかりで、そのことを寺の人々にはまだ話していませんでした。すると田上老師は、
「お父様を案じるあなたのエネルギーが、今朝あなたが作った壺にこもっています。作った壺は全部壊してしまわないとだめですよ」と言いました。
「なぜです?」とクラーク先生が問いかけると、田上老師は、
「あなたのストレスというネガティヴなエネルギーが、作った壺に1万年残りつづけるからです」と答えました。

後に私がクラーク先生に、どうして田上老師はネガティヴなエネルギーが壺の中に1万年残るとわかったのかと尋ねると、
「田上老師は、現在までに発見された最古の陶器が1万年前のものだったことから、あのようにおっしゃったんだよ」と先生は答えました。

引き継がれたのは、
アロハを世界中に広めたいという願い

田上老師は亡くなる前に、クラーク先生の叔母、ピラヒ・パキの定義によるアロハを広めるという使命をクラーク先生に託しました。

ピラヒ・パキは20世紀の後半に、もしハワイの人々がアロハの原理を身につけなかったら、ハワイ(Hawai’I)のスピリットは死に絶えて、ハワイはバランスを失って暴力に満ちるだろうと予言しました。パキの予言は、ゼロックスの社員が1999年11月に7人の同僚を射殺した時に現実のものになったと、クラーク先生は考えています。

この事件後、クラーク先生は使命を果たすことは急務だと感じるようになりました。もっとも、クラーク先生はアロハをハワイ(Hawai’I)だけで活性化させたいと思っているわけではなく、あらゆる場所に平和と調和がもたらされるようにアロハを世界中に広めたいと思っています。

ピラヒ・パキのアロハの定義とは

ピラヒ・パキのアロハの定義はハワイ(Hawai’I)の法の一部であり、アロハを巡る振る舞いの原則を示しています。その振る舞いは、アロハのアクロニム(頭字語)を使って次のように説明されています。

A-アカハイ(Akahai)-優しさで表現される思いやり。
L-ロカヒ(Lokahi)-ハーモニーで表現される調和。
O-オルオル(Olu Olu)-感じの良さで表現される好ましさ。
H-ハアハア(Haa Haa)-謙虚さで表現される慎ましい心。
A-アホヌイ(Ahonui)-辛抱強さで表現される忍耐力。

アロハを世界へ
アロハのダーマを分かち合う

日本の臨済宗の禅僧が、ハワイのカフナにアロハを広めてくれと頼むなんて奇妙だと思われるかもしれませんが、田上老師は、常々ハワイの文化と日本の文化ほど近しい文化はないとおっしゃっていました。実際、ハワイ王国のデイヴィッド・カラカウア国王は、かつてハワイと日本という二つの島国の絆を強固にするために、王女を日本へ遣わして日本の皇族と結婚させようとしましたが、ハワイ王国が滅亡したために、この計画は実現しませんでした。今、田上老師とクラーク先生は、スピリチュアルなレベルでカラカウア国王の使命を達成しようとしています。

禅と武士の修行は、より良い人間になるためのものだと田上老師は確信していましたし、アロハの振る舞いの目的と方法論によく似ていると考えていました。どちらも思考の習慣を超越して、気のエネルギーやスピリチュアルな表現の領域に入っていきます。よって、本シリーズの目的は、スピリチュアルな実践としてのアロハの側面を提示して、それが禅とどのように関連しているかを田上老師とクラーク先生の実践や実話をお話しすることによってお伝えすることにあります。

ハワイ(Hawai’I)から、ハワイの外に存在するたくさんのダーマへ、アロハのダーマを謹んで分かち合いたいと思います。