アンガーマネジメント Vol.16「“数千人の命”か“自分の安定的将来”……どちらを選ぶ?」

アンガーマネジメント Vol.16「“数千人の命”か“自分の安定的将来”……どちらを選ぶ?」

「数千人の命が自分の判断にゆだねられている……」

想像して下さい。
あなたはこれからたった一人で、この問題を解決しなければなりません。
タイムリミットは数時間です。

「あなたがこの紙にサインしなければ、数千人の命が消える。
しかしサインすればあなたの将来は保証されず、自分と家族の命も危険にさらされる可能性がある」

実際にこの場面に直面した人物がいます。
第二次世界大戦中にリトアニアの日本領事館に領事代理として着任していた杉原千畝(ちうね)氏です。

今回は、前回の連載「アンガーマネジメントVol.15~黒田官兵衛に学べ!究極の選択方法~」で例にあげた、黒田官兵衛の究極の選択方法を振り返りながら、どうやったら自分の思考の枠を外せるかについてもお話します。

当時のヨーロッパは、ドイツとソ連がポーランドをめぐって対立し、ポーランドの上に位置していたリトアニアはドイツの迫害から逃れて来たユダヤ人が数多くいました。

杉原氏は、外交官としてリトアニアでドイツとソ連の情報を探り、日本に伝える任務に就いていました。
しかしリトアニアにもすぐにソ連の支配下となり、日本領事館も閉鎖される事になります。身の危険を感じたユダヤ人は、リトアニアを脱出して他国へ逃げようとしますが、それには途中に通過する日本のビザが必要。そこで大量のユダヤ人が、ビザの発行を求めて杉原氏のいる領事館に押し掛けたのです。

ここで前回お伝えした不安/ストレスログにこの状況を当てはめてみましょう。

まず
「重大/コントロール不可(自分が頑張っても事態が変えられない)」枠には
・ビザを発行しなければ、数千人のユダヤ人が死ぬ
・ビザを発行すれば、外交官としてのキャリアや自分と家族の身が危険にさらされる可能性がある

という内容が入ります。

更に
「重大/コントロール可(自分次第で状況が変えられる)」枠には
・自分はビザが発行でき、うまくいけば数千人の命が救える

という内容が入ります。

ここで杉原氏は悩みます。
「目の前には救いを求めているたくさんのユダヤ人がいる。世界中の優秀なユダヤ人を政府の意に沿ってこのまま見殺しにする事は、本当に日本の国益に適うことなのか」
「外務省に逆らえば、外務省を辞めさせられるだろうし、家族にも害が及ぶかもしれない」

更に選択は続きます。

当時日本の通過ビザを発行するには
①日本から出国した後の他国の受け入れ許可書
②充分な資金を持っている必要がありましたが、命からがら逃れて来たユダヤ人のほとんどはどちらも持っていませんでした。

「重大/コントロール不可」の領域には
・ユダヤ人は外務省が要求する入国資格を持っていない

「重大/ コントロール可」の領域には
・ビザの発行要件を拡大解釈する事によって、発給要件で外務省とやり合える可能性がある

杉原氏は、諜報活動や交渉のエキスパートでもありました。
満州事変後、ソ連と北満州鉄道の買収の交渉に当たった時は、ソ連の当初要求額の4分の1の値段での買収を成功させています。

そして、わざと細かな事案を電報で問い合せるなどして時間を稼ぎ、全員のビザを発給し終わった後、下記の電報を外務省に送りました。

「我が国の通過ビザは、避難民がアメリカ方面に脱出するのに絶対欠かせないものとなっております。これはビザを求める彼らの事情をくみとり、同情するに値するものだと考えます。そこで私は旅費と行き先国の入国許可については拡大解釈の上で、ビザを発給します」

外務省からは、こう返信がありました。
「『以後』は、発給条件を満たさない人にはビザを発給しないよう厳重に取り扱うように」

言葉を変えれば、これまで発給されたビザは全て有効だという事です。

「あの人ならば、この場面でどう振る舞うか」

この英断によって救われたユダヤ人の子孫は、現在世界に20万人以上いるそうです。
今回考えて頂きたいのは、杉原氏の決断能力がどのようなプロセスを経てなされたかという事と、あと1つ。

自分が岐路にたった時、「自分が杉原氏と同じ位の勇気、人道愛、力を持っていたらどちらの道を選ぶだろうか」と「自分」でなく「杉原氏だったら」どちらを選ぶか、を考えて頂きたいのです。

これは、『プレイロール』と呼ばれるアンガーマネジメントのテクニックで、不安やストレスのコントロールに使われます。

自分の理想とする人物が、この場面でどう振る舞うか考えて自分で演じます。

私は大事な選択をする時、必ずこのテクニックを使います。
なぜなら今の自分の力や枠で考えていたら、絶対に「今以上の自分にはなれない」からです。

皆さんもぜひ、自分のロールモデルとなる人物を見つけ、徹底的に真似してみて下さい。最初は真似でも、段々自分の性格の一部になりますよ。

 

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