認知症、アルツハイマーの予防は、毎日の通勤時間に有酸素運動をプラスして!

アンチエイジング専門医・川田浩志先生インタビューPART.9

日常生活で実践できる「ややツラめ」の有酸素運動とは

――アンチエイジングのためには、運動も欠かせない要素の一つということですが、川田先生は、筋トレに加えて、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動も勧められていますよね。

川田先生:
「そうです。有酸素運動は、アンチエイジングにたいへん効果的なのです。有酸素運動を毎日実践していると、加齢とともに低下してしまう最大酸素摂取量が増加し、体内に取り込める酸素量が増えます。その分、より多くのエネルギーを生み出すことができて新陳代謝が活発になりますし、酸化ストレスに対する防御能力も向上するのです。

有酸素運動には、アルツハイマー病などの認知症の予防効果や、認知機能の改善効果なども認められています。さらに、地中海風の食生活と組み合わせると、予防効果がいっそう高まったという研究結果も出ています」

 

太極拳で死亡率が減少する!
米国疫学学会誌でも発表

――有酸素運動として呼吸法を実践している方がいらっしゃいますが、腹式呼吸にエビデンスはあるのでしょうか?

川田先生:
「呼吸法そのものには、それほどしっかりしたエビデンスはまだないと思います。ただ、呼吸法とは直接関係ないかもしれませんが、最近目にした文献のなかに興味深いものがありました。太極拳です。太極拳をすると、ウォーキングやジョギングをするのと同じように死亡率が減るという調査結果です。権威のあるアメリカの疫学学会誌に発表されたものです。これは中国人を対象にしているのですが、太極拳をする人は、太極拳をしない人と比べて23%くらい死亡率が減っていました。ウォーキングで25%くらい、ジョギングで27%くらいですから、かなりの減少率だと思います。

太極拳について、私はあまり詳しくはないのですが、けっこう有酸素運動になっているのではないでしょうか」

有酸素運動は
通勤時間中にできる!

――日常生活でも実践しやすい、川田先生お勧めの「ややツラめ」の有酸素運動は何でしょうか。

川田先生:
「健康や長生きには、マイペースでゆっくり歩くよりも、ある程度汗をかいたり、多少息が切れたりする運動のほうが、より効果があることがわかっています。

エスカレータがあっても、日頃から意識して階段を使うだけでも、けっこうな有酸素運動になると思います。長い階段になればなるほど、「はあはあ」いいますからね。

それ以外のちょっとした習慣も、長い目でみると、大きな違いを生み出してくれます。たとえば、電車を利用する人であれば、座らずに立つのも良いと思います。立つのと座るのでは、消費するエネルギーはけっこう違ってきます。30分ほど立っているだけで体重分くらいのカロリーを消費できます(50kgの人は55kcal、60kgの人は65kcalくらい)。ですから、今日は座れなくてガッカリではなく、「今日は座れなくてラッキー」と前向きにとらえて、アンチエイジング生活を楽しく実践してみてはいかがでしょうか」

~おわり~

 

<プロフィール>

川田浩志先生
東海大学医学部血液内科准教授。医学博士。著書に『見た目が若いと長生きする』(筑摩書房)他
ブログ:http://ameblo.jp/antiagingworld/

Photo: Miho Urushido