「知性を活かせば、あらゆる現実に対処できる」。ダライ・ラマ法王 講演レポート

11月に来日し、東京、静岡、京都の各地で講演を行われたダライ・ラマ法王様(His Holiness the 14th Dalai Lama)。TrinityWEBでも、参加させていただいた講演の模様をレポートします。

 

自分の心の在り方が
現実を変えていく

世界中から尊崇を集めているダライ・ラマ14世の講演会が京都国際会館で行われました。世界に貢献する人材の育成のために必要な「自由と自治」について、作家のよしもとばななさんとの対談を含め、2時間半あまりこれからの社会、人の心の在り方について素晴らしいお話を伺うことができました。

 

「他を尊重しながら、いかに自分自身が自由に生きていくのか」、これはとても難しく感じられる問題です。ダライ・ラマ法王様はその著作などで、そのような難しい問題を、易しく読み解いてくれます。
今回の講演は実際に法王様が経験した事象や私たちに日々起こる身近な事象を通して、私たちにあらゆることを実現するためには、いかに「自分の心の在り方」が大切なのかを教えてくれました。

16歳で自由を、24歳で祖国を失い、そして50年もの間、祖国や世界中で日々起こる哀しいニュースを聞き続けているダライ・ラマ法王様が、自らの波乱万丈な体験をもとに、混沌とした不安定な世界に生きるすべての現代人に宗教という枠組みを超えて、最も大切なことを語られ、その体験に基づくお話は非常に説得力があるものでした。

苦しみを乗り越える
「知性」という可能性く

このような不安定な世界で起こるさまざまな不幸や苦しみは、個人の力ではどうすることもできない、その現実に自分自身も苦しいと法王様は語られます。しかし、人間には他の生き物にない、人間だけに与えられた恵み、「性質」があるとお話しされます。そこに個人や世界を含めたさまざまな不幸や苦しみを取り除く可能性があると。

それが「知性」です。人間がその与えられた知性を磨き、知性を使っていくことは、自己の内を高める条件の一つです。より良い機会として使用することのできる、自分の力です。「人として優れた知性をフルに活かすことができるなら、それがあらゆることを現実的に対処していくことができる」と。

2時間半の講演会や質疑応答はとても有意義なものでしたが、私はこの言葉を聞いたとき、学び続けること、そして人として生まれ、与えられた可能性を自らの責任として磨き続けることの重要性を今一度、思い出した気がしました。

法王様でさえ、「すべてを現実的に受け入れられること、見ることにより、より広い視野を持てるようになり、困難に直面したときにこそ、そのような姿勢があったので多くを学べた。感情は度が過ぎると偏向する。そのためにも現実的に見ることができる知性が重要」と言われました。肉体は毎日老化していくけれど、一方で毎日このような態度を維持し続けることで、自分自身の心は高めていくことができると。

法王様の一つひとつの言葉が輝き、光を帯びているようでした。対談や、時間を延長しての質疑応答にも、ユーモアと笑顔で応じるダライ・ラマ法王様の講演に参加し、とても有意義な、そして希望という光が見えた一日でした。

取材協力:京都精華大学 http://www.kyoto-seika.ac.jp/

Photo:Masumi Mizuno