一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.26 『ゼロ・グラビティ』

我々は「宇宙」から「地球」に来た「光」だと思い出す

ラストが素晴らしい映画である。
私はものすごい感動に打ちのめされた。
胸の奥底から込み上げるものがあって、「ええ~っ」と思いながら「うっ」と喉が詰まって、あとは涙がだらだら流れた。その間、私は自分の現状を考え、整理し、答えを出した。異様な興奮状態の中で私は冷静に自分を振り返ることができた。
そういう意味で、とても個人的に印象に残った作品だ。しかし、このラストは普遍的に多くの人の心を打つことだろうと思う。それは、我々は言わば「宇宙」から「地球」に来た「光」だからである。

本作初の最新技術を駆使した
驚異の映像とサンドラのリアル演技

スペース・シャトルの船外任務中に、デブリ(人口衛星の破片)により、宇宙空間に放り出された飛行士ふたり。一人はエンジニアの女性博士ライアン。そしてベテラン飛行士のマット。生存者はふたりだけ。出演者もふたりだけ。いや、ほぼライアン博士を演じるサンドラ・ブロック一人だけと言ってもいいかもしれない。彼女がいかにして一人で地球に帰れるか!?というお話なのだ。

シャトルから火がでたり、酸素がなくなったり、パラシュート(?)の紐がシャトルにからまったりと、とにかく次から次へと問題が発生する。しかも彼女には辛い過去があり、心もくじけがち。そこへマットが力づけにくるのだが……。

サンドラ・ブロックはこういう焦る演技が実に上手いと思う。ものすごくリアルなのだ。これは彼女の声に負う所大なのだろうが、ちょっと低めの早口でまくし立てられると、ぐっと聴き入ってしまう臨場感がある。
「ああ、どうしたらいい?」と親身になり、彼女と一緒になって焦らされるところが凄い。
また、無重力(ゼロ・グラビティ)空間で浮遊する動きも「一体どうやって撮っているのこれ?」と大きく疑問。「NASA」が協力している……わけないか。
これは12本のワイヤをサンドラにつけ、遠隔操作で繰り人形のようにして浮かせて撮っているそうなのだが、最新技術を駆使した驚愕の映像だ。

私たちそれぞれが「最高の旅」をするために
今生を生きているのだ!
ものすごい力をもらえるラスト!

それから効果音も異様にリアルと、見どころはいろいろあれど、最初に書いたように、私が一番感動したのはラストだ。
もう少し具体的に言うと(ここから未見の人は注意を!)サンドラはある決断をしなくてはならなくなる。
「このままだとあと10分で焼け死ぬか、中国の宇宙ステーションに飛び乗って地球へ帰るかだ。でも……どちらにしろ最高の旅だ!」と決意してボタンを押す。私はこのセリフに激しく動揺!
「すごいじゃんっ! すごい選択肢だ! どっちも最高のぶっちぎり人生じゃないか! 全力で生きているよ! こんな最高の旅できるなんてうらやましい!!……と、私はどう? 毎日の仕事に一喜一憂していて、些細なことに悩んで、そんなの悩むことないんだ、たいしたことないんだよ、だって、私は、私たちは最高の旅をするために生まれてきたんだもの! この地球に!」と頭の中が爆発状態!
そして、あれ?
なにか、忘れていたことを思いだした。ものすごい開放感。そうだった、私たちは「宇宙」から来たことを思い出した……。
私の魂が涙を流すのを、私自身は不思議な気持ちで見ていた。
母のお腹の中にものすごい勢いで入り込んだことを思い出した。
懐かしい記憶とともに、私はあのラストで自分の出自から今を振り返ることができた。

さあ、私の後半生、「最高の旅」に仕上げなくちゃ!
と、ものすごく力づけられ、深遠な気持ちにさせられた(超個人的)傑作である。

 

『ゼロ・グラビティ』
2013年12月13日(金)梅田ブルク7他全国ロードショー 3D/2D&IMAX3D 同時公開
配給:ワーナー・ブラザース映画

公式HP:
http://wwws.warnerbros.co.jp/gravity/
Facebookページ:
https://www.facebook.com/zerogravitymovie

上映時間:1時間31分

■キャスト
サンドラ・ブロック(『しあわせの隠れ場所』)
ジョージ・クルーニー(『シリアナ』『マイレージ、マイライフ』)

■スタッフ
監督:アルフォンソ・キュアロン(『ハリー・ポッターとアズガバンの囚人』『天国の口、終わりの楽園。』)
脚本:アルフォンソ・キュアロン&ボナス・キュアロン
製作:アルフォンソ・キュアロン、デイビッド・ヘイマン

(C)2013 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.

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