一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.25 『武士の献立』

料理下手の頼りない夫を育て上げる
賢い料理自慢妻の美徳

いい話である。
料理下手の夫に料理を教え、立派な包丁侍へと育てる妻。
料理を通してギクシャクしていた夫婦が理解しあい、愛情を確認する。
ふたりが本当の夫婦になっていく過程はほのぼの心温まる、静かに感動させられる佳作だ。

味覚も料理の腕も秀でた加賀藩の女中、春。ある日、その腕を買われ藩の台所方の跡取息子の嫁に請われる。春は出戻りで、相手は我儘で年下の料理下手。どうも最初からうまくいかず、ある日料理侍の夫の料理を勝手にフォローしたことから衝突。激怒する夫に春は包丁の腕比べを申し出る。「私が勝ったら私の料理指南を受けてもらいます」と。
もちろん春が勝つのだが、それから始まる料理特訓の日々が愉しい。

実在した加賀藩の舟木家に伝わる、献立書に基づき忠実に再現された「饗応料理」。大変興味深いのだが、いかんせん当時の日本料理なので、地味。しかもあまりアップにならないので、どんな料理かも一つ詳しく分からないのが残念。料理の見せ方は難しいな、と再確認。
しかし、この映画は料理を通して描く妻の夫への愛情のお話なのでまっいいか。

春はかつての日本の妻そのもの
頼もしい賢く強いヒーロー

この妻、いい感じなのだ。
ダメ夫に料理を教え込み、一人前の料理侍に仕上げたと思ったら、夫は謀反の暗殺計画に加わろうとする。それを事前に知った妻は命がけで阻止。その後も夫に仕える……。
ああ、いい女だな。これぞかつての日本の妻の姿なんだろう、と見ていてホっとする。女性の役割りそのものではないかと思う。男を影で支え育て守り、仕える。
また、義理人情にも厚く、かつて仕えたお方様が無実の罪で幽閉されていると知るや、心を込めてお重を作り会いにいく。このシーンで私は泣いてしまった。お互いを思いやり、二人で過ごした時間を懐かしむ女主人と女中。女同士の友情の時間だ。
賢く強い女は、ヒーローだと思う。だって無敵なのだ。
春は私には頼もしいヒーローに見えた。

食べることは人間にとって
一番大切なこと、そして人を繋ぐこと

スピリチュアル視点で言わせてもらうと、食は人間にとって一番大切なもの。そして、人を繋ぐものだというのが良くわかる映画である。また、おいしいものは人を笑顔にするとも。
この映画を観た全ての人が、自分が常日頃食べているものについて振り返ってもらいたいとも思う。

 

 『武士の献立』 
2013年12月14日
大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネア、MOVIX京都、神戸国際松竹他公開!

■監督・脚本/朝原雄三
■脚本/柏田道夫、山室有紀子
■出演/上戸彩、高良健吾、余貴美子、西田敏行、夏川結衣、成海璃子
■配給 松竹

(c)2013「武士の献立」製作員会

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