ユーティリティー植物「アケビ」 ~ 食材・漢方薬・アケビ細工など豊富な利用価値で大活躍!

万能食材~アケビ

今年は台風が多く、なかなか落ち着いて秋の心地よさを堪能できる日は少ないですが、この時期、私に秋を感じさせてくれる食べ物のひとつが「アケビ」です。

私の実家の垣根には、アケビのツルが張り巡らされ、夏には青々としていた実が秋口には薄紫色に色づき始めます。食べ頃は、皮に割れ目が入り、白く半透明な中身が見え始めたころです。スプーンですくって食べると、ほんのり甘くてやさしい味が口いっぱいに広がります。半透明の実の中には、ギッシリと数え切れないほどの種が含まれています。子供の頃、祖母には「種はそのまま吐き出すか、噛まずに飲み込むように」と言われていたのですが、興味本位で種を一粒かじってみたところ、そのあまりの苦さに大騒ぎをした覚えがあります。
また、アケビは、実だけではなく皮も食材として調理されます。アケビの皮の形をそのまま利用した肉詰めや千切りにした味噌炒めは、自然な苦味が利いた大人の味です。さらに、春には新芽をおひたしにしていただきます。

また、アケビのつる性の茎の部分を輪切りにして乾燥したものは「木通(モクツウ)」と呼ばれ、利尿作用や抗コレステロール作用などを持つといわれています。そして、漢方薬を構成する生薬として、打撲・生理痛・頭痛などに用いられる通導散、頭痛・冷え性・生理痛などに用いられる当帰四逆加呉茱萸生姜湯、膀胱炎、膣炎などに用いられる竜胆瀉肝湯などにも配合されています。

さらに、アケビのツルはアケビ細工にも用いられます。
私の母も、アケビのツルを編みこんでカゴを作っていました。上の写真は、母が趣味で作成したものです。店内ではクロス入れとして使用しています。一時期、あまりに作りすぎて部屋がカゴで埋まってしまったこともありました。

スポーツでは、ひとりで様々なポジションをこなす選手のことをユーティリティープレイヤーといいますが、実、皮、新芽は食材に、茎は漢方薬に使用され、カゴまで編めてしまうアケビは、まさにユーティリティー植物と呼ぶにふさわしい利用価値の高い植物ではないでしょうか?機会がありましたら、是非ご賞味ください。ただし、決して種は噛まないように!