自分を大切にしていますか?PART.9~「手術」

手術当日……

病棟に案内され、ベッドの用意が出来るのを待合い室で無言のままで待っているのは嫌なものです。名前を呼ばれ病室に案内され、買ったばかりのパジャマに着替え、早速食事制限がかかりすっかり病人の出来上がり。飲みものだけがOK。左手には点滴が打たれました。

お腹を切った事があったり、年齢が少し高い人は手術2日前に入院し点滴を始めます。日頃意識しないで使っている両手ですが、点滴を打たれて上手く使えない不自由さに、日頃のありがたさを感じます。点滴を打っているだけなのに、トイレも不自由、眠る姿勢にも融通が効かない。でも2日目になるとそれさえも慣れています。人間の順応性にも驚かされました。

大部屋には様々な患者さんが入院されています。特に多いのが癌の方。卵巣癌は見つけにくいと言われています。又、子宮筋腫の摘出をしたら癌が見つかったり……。何度も入退院を繰り返している方も。
そのなかで過ごしていると思いがけない気づきが起ったりもします。生かせてもらっていることに感謝したり、癌と共に生きている人の前向きな姿に、くよくよしている気持ちはどこかへ飛んでいきます。

当日麻酔を担当する医師や薬剤師さんが、いくつかの質問もしてきます。
お薬のアレルギーや麻酔のアレルギーなどがないか? 手術をすること自体、たくさんのリスクがあることを次々知らされていきます。
私は喘息があるので、手術する時も手術室に持参することとなります。

入院2日目になると2リットルくらいの下剤を飲むことになります。
味がぼやけたポカリスエットのようなものです。同じ日に手術を受ける同室の方と、どちらが早く飲み終えるか?と前から入院している方々がレースと見立てて楽しんでいました。
日々、何気ないところから楽しみを見つけるって、本当に大切。それって素敵だな、と感じると共に、なかなか飲み続けられないのも苦しい。笑

翌日は手術日、早朝から本格的な下剤を処置され、トイレはラッシュに見回れます。みんな同じ手術への準備がちゃくちゃくと進められていくのでした。

当日は手術の時間までに家族が病棟に来て、手術前の顔合わせ、そして見送ってくれます。手術が終わるとすぐに執刀医の先生に会い、手術の結果が家族に報告されます。

手術室へは自分の足で向かいます。ドキドキですよね。
その時、自分の足で向かうことへの自覚を強く感じました。私たちはすべて自分で選んだ道を歩いているだと。手術を選んだ事は私が選んだこと。誰の責任でもなく、私が選んだこと。だからこそ自分の足で手術室に向かい、自ら手術台に横になることが大事だと。
そしてその傍らには心から信用している医師がいてくれるのが心強いものです。ひとりで手術台の上に乗っていても、委ねることが出来ることは大きな違いがあると思います。信頼感から生まれる治癒力が発揮してくれるのではないでしょうか?

そして2時間程度……無事に手術が終わるのでした。

そしてすぐそばにある処置室で麻酔がきれるのを待ちます。が、ここでも麻酔がきれる時に気分が悪くなる人も多いのです。私もそのひとり、気持ち悪くなって注射を打たれますが、今度は辛い胃痛が襲うのです。又別の注射を打つ処置がとられるのでした。本当に手術って大変なことばかりです。
しばらく休んでいると、隣から赤ちゃんの泣き声が!! 生後3ヶ月で手術を受けた赤ちゃんの元気な鳴き声でした。

私はまだ現実か夢がわからないところで赤ちゃんの声を聞き、とても嬉しかったことを覚えています。まるで新しい私が生まれたような感じでした。
そして3ヶ月の赤ちゃんが頑張って生きている声に励まされ、私も新しい人生を楽しく生きようと決心したのでした。

 

 【コラム】 

 

ルーブル美術館にいる天使ちゃん。
「し~っ静かに観賞してね!」と言っているようなおすましさんの天使。
美術館には目には見えなくても天使がいっぱい♪
美術品のなかにもいっぱい!
そして私たちに芸術を通して感動を与えてくれますね。