一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.22 『42 世界を変えた男』

黒人初の大リーグ選手
ジャッキー・ロビンソンの実話を映画化

 

1947年当時、まだまだ黒人差別が激烈な時代。白人ばかりで構成されていた400人のメジャーリーガーの中に、初めて黒人選手が誕生する。彼、ジャッキー・ロビンソンは、すさまじい差別の中で耐え抜き、徐々に周りの人々、そして世界を変えていく。
実話を基に、彼の茨の道を感動的に描いた秀作だ。
いやあ、何年かぶりで号泣した。こんなに泣いたのはほんとうに久しぶり。

ジャッキー・ロビンソンという人は、もともと差別に対してちゃんと声をあげて抗議していた人なのだが、球団に入る前にオーナーからどんな誹謗中傷を受けても我慢するんだ、と約束させられる。爆発したら全て終わりだと。そして、入団前からチームメイトによる彼の入団拒否、入団してからは観客、マスコミ、審判、相手チーム、またチームメイトと周りは全て敵状態になる。それでも彼は約束通り我慢して、実力を見せたら認めてくれると黙々とプレーに打ち込むのだが、ついに……。

変わっていくチームメイトたち
「自分が良いことをできる機会を与えてくれてありがとう」

まったく酷い。酷すぎる野次や中傷、苛め……。よくぞ我慢できたな、と驚くばかりだ。最初に道を開く人間はかくも神に試されるのだと震えがくる。これに耐えることができたら世界はお前に道を開けてくれるのだ、と
神の声はオーナーの声に重なる。そして少しずつ人々は彼を認めだし、周りの態度が変わっていくエピソードの一つ一つが胸を打つ。

好きなシーンがある。
後半、黒人差別の根強い自分の地元でプレーすることになり、選手のピーウィー・リースは脅しの手紙が来たと心配するが、ジャッキーが今まで数え切れないくらいの中傷や脅迫の手紙をもらっていたと知り、マウンドでジャッキーと肩を組んで観客に仲良しぶりをアピールする。そして「ありがとう。俺がどんな人間か家族に分かってもらえる機会をくれて」と礼を言うのだ。それを観ていた幼いピーウィーの甥は、今まで野次を飛ばしていたのを神妙な顔で止める。
アメリカはこういうところがすごくいいなあと思う。自分が良いことをする機会を与えてくれたことにありがとう、という精神。素晴らしいと思う。

もうひとつ、ジャッキーが相手チームの監督から凄まじい野次を飛ばされて、チームメイトの方が耐え切れなくなって抗議するのだが、そのことについてオーナーが、「同情という言葉は苦しみというギリシャ語が語源だ。同情とは苦しみを分かち合うことなんだ」と言う。
このセリフは心に刺さった。チームメイトはジャッキーの苦しみを分け合おうとしたのだ。

ラストクレジットも号泣!!
ジャッキーの偉業と慈愛に満ちた顔にまた涙!

彼の後には、何人もの黒人選手が続き、大リーグで活躍する。ラストクレジットのチームの選手たちのその後や、実際のジャッキーの年老いた知的で慈愛あふれる風貌などにまた号泣させられる。
誰に何を言われようと耐えて気にせず、ただ自分のやるべきことをやれば、自ずと道は開かれる。ガンッと再確認させられました!

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2013年11月1日(金)大阪ステーションシティシネマ他全国ロードショー
■配給:ワーナー・ブラザース映画
■公式HP:http://wwws.warnerbros.co.jp/42movie/
■上映時間:2時間8分
■キャスト
チャドウィック・ボーズマン、ハリソン・フォード、ニコール・ベハーリー、クリストファー・メローニ他
■スタッフ
監督/脚本:ブライアン・ヘルゲランド

(C) 2013 LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC.
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